"マルチタスク"は幻想である~要領の悪いあなたへ~

「マルチタスクは頭がフリーズする!」
「私って要領悪いのかな…」
「○○さんはあんなに上手にやってるのに…」

マルチタスクが苦手なあなた、これまでの人生で何度も思ったのではないでしょうか。

人生はマルチタスク

会社やバイト先、学校など、世の中はマルチタスクで溢れています。マルチタスクに直面するたびに不安や劣等感を覚えてしまうのではないでしょうか。

言ってしまえば"人生"だってマルチタスクです。

「仕事や勉強、家族に友達、お金や将来のこと、自分の健康」など

私たちはたくさんのことを考えながら生きていかなければなりません。

「マルチタスクが苦手だから私の人生うまくいかないんだ」

なんて考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

人間はマルチタスクなどできない

あなたの周りに、「要領が良くてマルチタスクがもの凄く得意な人」はいますか?複数の作業を難なくこなす、とても羨ましいですよね。

しかし人間の脳というものは、

「本質的には2つ以上のタスクを同時進行できない」

という事実をご存知ですか?

これを聞くと「えっ?そうなの?」と驚かれるかもしれません。実際、世の中にマルチタスクが可能な人がいるわけですもんね。

では彼らはどうなっているのでしょうか。脳の作りが根本から違うのでしょうか。いいえ違います。彼らは、

「マルチタスクを行っているように見せてるだけ」

なのです。具体的には、複数のタスクを切り替えながら同時並行で行っているのです。例えば、「A・B・C」3つのタスクを同時進行する場合、

A→B→C→B→C→A→C→A→B→C….

といった具合です。

彼らは決して、3つの作業を並列的に行っているわけではないのです。
では、それがどうしてマルチタスクに見えるのでしょうか。

彼らは、脳内で「現在のタスク」を切り替える、スイッチングの速度が恐ろしく早いのです。

タスクAを中断して、タスクBを再開。またタスクBを中断してタスクCを再開。タスクCを中断して…

このサイクルが高速で行われるわけです。

IT用語でいう「並列処理」ではなく「並行処理」の方になります。

引用元:【プログラミング入門】並行と並列の違いを理解する

また彼らは、単体タスク自体の処理効率が良いです。

タスクのための「脳のワーキングメモリ」を最低限で行い、タスクを中断するときも「どこまで進めればキリが良いか」「どうすれば再開しやすいか」など、コツを理解しています。

実はできているマルチタスク

ところで、マルチタスクが苦手なそんなあなたも、実は日常生活で知らず知らずにマルチタスクができています。

休日のお昼過ぎ、あなたは少しお腹が空いてしまいました。なにか食べ物を得るため冷蔵庫へ向かいます。

このときあなたは何をしますか。

そう、歩きます。冷蔵庫へ向かって。

実は「歩行」という動作は、立派なマルチタスクです。

「???????」
「何を言ってるんだ」

って思われるかもしれませんが説明します。

まず「歩行」を行うには何が必要か考えてみましょう。

  • 右足を上げる

  • 前に出るよう左足は曲げる

  • バランスをとるため上半身を少しひねる

  • 足元を確認するために視線を少し下す

  • 小指の先にタンスがないか確認する

  • 右足を下す場所にレゴブロックが落ちてないか確認する

  • 足元の障害物に見て次の歩行ルートを考える

少し考えただけでもたくさん浮かびますし、「右足を上げる」という一つの項目だけ考えても、脚にある数十個の筋肉を"同時に"上手いこと動かさなけらばいけません。

実は「歩行」というのはもの凄く難しい動作だというのが分かります。
ロボットの直立二足歩行が難しい、というのも納得ですよね。

これだけ難しいにもかかわらず、あなたは頭の中では歩くことそっちのけで「今日の夕飯のこと」を考えることができます。

マルチタスクは「慣れ」の問題

こうやって「歩行はマルチタスクである」と説明しても、まだ納得できない人もいらっしゃると思います。

「なにが右足を上げて、左足は曲げてだ!」
「そんなの無意識にやってるわ!」

のような声が聞こえてきそうですが、それが重要です。

私たちは、本来マルチタスクであるはずの「歩行」を「シングルタスク」として捉えているのです。これは、

「私たちは、歩行という動作に"慣れている"」

からです。私たちは、慣れてしまったものをもはやマルチタスクとは認識しません。

初めて自転車に乗った時のことを思い出してみてください。

ハンドルを真っ直ぐ持って、ペダルをこぎながらブレーキを適度にかけて、倒れないようバランスをとって…

いろんなことを気を付けないといけなくて、もの凄く難しかったでしょう。

結論として、あなたが現在「マルチタスクだから苦手」と思っているものは、

「あなたがそれに慣れていないから」

なのです。

結局、「シングルタスク」「マルチタスク」なんてものはなく、私たちが「自分が慣れてないもの、苦手なもの」に「シングル」だの「マルチ」だのラベルを貼り付けていただけなのです。

マルチタスク能力とは?

とは言え、あなたの身近には

「なんか最初からマルチタスクができちゃう人」

っていますよね。
こんな人を見ていると、やっぱり人間には

「マルチタスクをする能力」

があるような気がしてきます。

では、マルチタスク能力がある人とあなたの違いは何なのか?
それは単純に、

「これまでの経験」や「もの覚えの良さ」

です。「これまでの経験」は最初からどれくらい慣れているかになり、「もの覚えの良さ」は慣れるまでの速さに影響します。

結局どうすればいいの?

この記事では「マルチタスクというものは存在しない」と説いてきました。しかし、だからといってあなたが要領が悪い(いわゆるマルチタスクが苦手)という事実は何も変わりませんよね。

「周りのみんなは当たり前にできてるのに…」

そういった人はどうすればいいのか?
私なりに考えてみました。

何が苦手なのかを分析してみる

例えば、「電話しながらメモをできない」というケースを考えます。

  • 話すこと、コミュニケーション自体は問題ないか?

  • 何をメモすべきなのかがわかってるのか(要約スキル)

  • 話す内容のパターンが分かってるか

  • 文字を書くことができるか

基本的に、一つ一つに慣れてないから「電話しながらのメモ」に苦手意識を覚えてしまうのです。一つ一つに慣れてないなら、そもそも同時に行うなんて無理な話なのです。

重要なのは、これら全て「慣れの話」ということです。「マルチタスクが苦手だから、電話しながらのメモができない」じゃないんです。

「慣れてないからできないんだ」

と思うことが大事です。「マルチタスク能力がないんだ」と思い込んでたらいつまで経っても改善しません。

要領が悪いことを認める

「慣れてないから」が原因だとまだいいのですが、中には「もの覚えが悪くていつまで経っても出来るようにならない」という人もいます。

もの覚えが悪い、そんな方におすすめのマインドが2つあります。

1つ目は、「もの覚えが悪いことを逆手にとる」です。もの覚えが悪いと、普通の人が1度や2度で覚えきることを、自分だけ何度も繰り返し行う必要が出てきます。

しかし、物事には「繰り返し行うことでしか見つからない知見」がたくさん隠れています。もの覚えの悪いあなたにしか見つけられない知識や経験は、今後の大きな伸びしろとなり、ばねのようにいきなり他の人を超えられるかもしれません。

2つ目は、「もの覚えの悪い人は社会の役に立っている」です。社会のシステムは、もの覚えの悪い人を考慮して出来るだけシンプルになるよう構築、改善されていきます。「シンプルさ」はもの覚えの良い人にとってもありがたいですし、機械やコンピュータによる「自動化」への貢献にもなります。

おしまい

というわけで、「"マルチタスク"は幻想である~要領の悪いあなたへ~」でした。誰かの役に立てれば幸いです。

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