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K One Year Later 09

第九回、『See you again』


著:来楽零

 あれから一年経って――。

「いってぇ~~~~……」
 五條スクナは、膝の痛みにうめいていた。
 日課になっている紫との剣の稽古のあと、夕方頃になるとこういった痛みが出ることがある。床に這いつくばって膝をさすっていると、バスルームから出てきた紫が笑った。
「あら、スクナちゃん。無様な姿ねぇ」
「ブザマ! ブザマ!」
 部屋に設置してある止まり木の上から、コトサカが紫に同調して嘲笑う。
「うるせー」
 打ち身などの怪我は慣れっこだが、関節の痛みというのはなんだか気持ち悪くて嫌だ。紫は化粧水を含ませたコットンを頬の上にすべらせながら言った。
「成長痛でしょ、それ。成長期にハードな運動をしすぎるとなりやすいのよ。ちゃんとストレッチはした?」
「…………」
「稽古には積極的なのに、どうしてそこをサボるのよ、あなたは。クーリングダウンは大事な体のメンテナンスよ」
 呆れ顔で言われ、スクナはしぶしぶとストレッチを始めた。運動後のクールダウンとしては遅まきすぎるが、ゆっくり体を伸ばすと少し痛みが和らぐ気がした。
「ストレッチ終えたらさっさとシャワー浴びちゃいなさい。今日の食事当番はスクナちゃんよ」
「わかってるよ」
 外で思いきり剣を振ったあとなので、スクナは汗だくの土ぼこりまみれだ。この格好のまま台所に立つのは紫が許さないし、スクナだって気持ちが悪い。
 一通りストレッチを終えてバスルームに向かおうとすると、「スクナちゃん」と紫が呼び止めた。
「なに?」
 振り返ると、紫はスクナの側に立ち、面白そうに笑った。
「やっぱり、背が伸びたわね」
「え。……そう?」
 スクナが見上げる紫は、相変わらず背が高い。けれど言われてみたら、ほんの少しだけ――紫の顔と自分の目の高さが前より近づいているような気がした。
 成長していると言われたら悪い気はしない。スクナは口では「そーかもな」とそっけなく答えながらも、意気揚々とバスルームに向かった。

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