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二人の若造

著:来楽零
リクエスト:2期後の伊佐那社と宗像礼司

 全人類が一時的に異能を得た事件――皆が『一月の異能騒ぎ』と呼ぶ事件以来、人々にとって異能の存在はひどく身近なものになった。
 もはやそれは都市伝説の中のものでもなんでもない。《非時院》と《セプター4》、それと繋がる政府と警察が内々に処理できるものではなくなり、現在は異能関連の情報の共有と法律の整備が急務となっていた。
「今月の異能関連事件のレポートありがとう。やっぱり、直後の混乱が一段落してからの事件発生件数は横ばいだね。暴発事故が減ってきた代わりに、異能持続保持者の意図的な犯罪行為が散発するのが常態になってしまった感じかぁ」
「〝石盤〟が破壊されても当面は異能がすべて消えるわけではない以上、この状況は予想されていたものです。その中で秩序を維持するのが我々の役目。あの混乱を乗り越えた人々の平穏は守りますよ」
「頼もしいね。僕の役目としては、みんながなるべく不安を感じずに済む法整備や情報発信のお手伝い、ってとこなんだけど……いやぁ、なかなかスムーズにはいかないねえ」
 頭を掻きながら笑う青年の顔を眺め、宗像は答える。
「政府のお偉方にとっては、あなたは突然降って湧いた『故國常路大覚の威光を背負った謎の若造』ですからね。当然不審がられますし反感も買うでしょう」
「経験者は語る、って感じだね」
 困ったように眉を下げる青年は、二十代前半の白人の姿をしている。
 アドルフ・K・ヴァイスマン。またの名を、伊佐那社。
 戦中のドイツで、若き國常路大覚と共に〝石盤〟の研究をしていた彼にとって、現在現役の政治家として働いている人間たちなど軒並み年下になるであろう。

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K Fan ClanおよびK Fan Clan Nextの小説等コンテンツを再掲したものです。

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