One night in the dark
著:壁井ユカコ
リクエスト:伏見猿比古と八田美咲の停電の夜in伏見邸
『大型で非常に強い台風が今夜遅くから未明にかけて関東地方に上陸する見込みです。帰宅時間帯の鉄道ダイヤが乱れるおそれがあります。不要不急の外出は控えるよう気象庁は注意を呼びかけています……』
強まる風雨の中を根性で自転車を漕いで伏見の家にたどり着いた八田は強風に半ば背中を突き飛ばされて玄関に転がり込んだ。
「ふいー、ひでぇ目に遭ったぜ」
ぼやきながらも声の調子ははずんでしまう。男子中学生を現在進行形で生きる者として台風にテンションがあがらないほうがおかしいというものである。
顎まできっちり締めてきても雨が入り込んできた雨ガッパのフードを脱ぎ、頭から尻へと犬が身体を振るみたいにぶるぶると雨粒を飛ばした。
伏見の家は「家」というか八田に言わせれば「お屋敷」だ。吹き抜けの玄関ホールは舞踏会かなんかがやれそうな広さで、ご令嬢がしゃなりしゃなりとドレスの裾を引いておりてきそうな幅の広い階段が突きあたりにある。
「猿比古……」
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2,268字
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K Fan ClanおよびK Fan Clan Nextの小説等コンテンツを再掲したものです。
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