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みんなでカラオケ

著:宮沢龍生
リクエスト:もしも白銀のクランのみんなが菊理たちとカラオケに行ったら

 雪染菊理をカラオケに誘って快諾を得た時、三科草太は心の中で特大のガッツポーズを一つした。朝の情報番組で牡羊座の運勢は、特に恋愛運は最高だと言っていた。
〝好きな子には押しの一手だよ〟
 信じて良かった朝の情報番組。ラッキーカラーが青だと言っていたので青いシャツを着てきた甲斐があった。告白をして盛大に玉砕して以来、口さがない友人からは自爆ストーカーだの、学園島のドンキホーテだの、0.1パーセント以下の可能性に賭ける男、だの散々言われていたが、結果はこんなものだ。
 二人っきりでカラオケに行く、ということはすなわち交際宣言にも等しいだろう。
 待ち合わせ場所に三十分前に到着し、高校在学中の清く甘酸っぱいデートから交際後の真剣なおつきあいを経て、最終的に幸せな新婚生活を送る夢想をしたところでそれはふいに粉々に砕け散った。
「ワガハイ、カラオケ初めてー」
「僕もだよ」
「昔、一言様と兄弟子と行ったことがあるな」
 ククリの親友、ネコ。学園島の教師、シロ。ドイツ先生の愛称で呼ばれている。それに学食などで働いたりしているクロ。
 ククリとよく行動を共にする三人組がククリと共に現れたのだ。愕然としている三科の前に、
「お待たせ、三科くん!」
 白いもこもこのニットセーターとグレーのミニスカートにスニーカーという格好のククリが現れた。
 悔しいけど。
 可愛い、と思ってしまった。
「あれ? 三科くん、どうかした?」
 小首を傾げて聞いてくる。これはなんなのだろうか?
 婉曲な拒絶の表明なのだろうか。
 すぐに否、と思った。きっとククリは素で〝カラオケ行かない?〟という三科の誘いに〝みんなで〟とワードを一つ勝手に付け加えたのだ。それがいかにもククリらしかった。
 金城鉄壁を絵に描いたようなガードの堅さ。
 そんなところもまた好みだぜ!
 三科は気持ちを切り替え、笑顔で親指を立てた。
「今日は楽しもうよ、雪染さん!」
 ククリが笑顔で頷いてくれたのが嬉しかった。

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