教職バカ一代  16(終)

教育とイノベーション

 ICT活用教育の進歩が著しい昨今だが、教員なった当初は、印刷は鉄筆でガリ版も残っていた、また漢字タイプライターも使っていた、が、間もなくワープロが普及する、印刷はリソグラフが登場し、転写すれば何度でも同じ原稿を使うことができた。電話はあったが、FAXはなかった。宿直制度が廃止され、機械警備が入っていた。
 自分は先輩が買ったワープロを借りていたが、そのうち自分で買ったものの、当時はメーカーの互換性がまったくないし、保存はフロッピーディスク、一度使い始めると他社乗換は難しかったから、機能の違う2社のモデルを買った。思えば仕事に使うために2台も買うなんてバカらしい。ワープロも偏差値計算はできたから、活用していた。
 上の宮に転勤したとき、ウィンドウズ3.1から95へと発展した。ここぞとばかり自分も大枚はたいてPC購入、メモリが8キロバイトとかいう時代、中古のパーツショップでメモリ増設したり、CPU交換したり、あやまって大事なコマンドを消去して最初からOSをインストールしなおして全部リセットなんて失敗もしていた。ネットも電話回線だから、ダウンロードは死ぬほど時間とお金がかかった。スーパー上海とかマインスイーパとかソリティアにはまって夜遅くまでやっていたっけ。
 視聴覚機器の全盛時代。カセットからCD、ビデオテープからDVD、各校に視聴覚室が整備され、授業でビデオを使うことが増えた。ただ、ビデオ視聴は使い方を間違えると効果がないどころか時間の無駄になる。テレビを集中して視聴できる時間はマックス20分間である。視覚と聴覚だけで頭には入らない。入ってもすぐ消えてしまう。だから、ワークシートがいる。それも事前に内容を知ったうえで視聴しなければ入らない。まんが日本史という40年前の教材がある。これを視聴させるときは、まず内容を要約してプリントに配布する。視聴の中で見つけ出すことのできる設問をいくつか用意しておく。まんがなので、登場するキャラのイラストもいれておく。まんがは得意だからね。しかも教科書とリンクさせるためには、教科書の内容も含める必要がある。ただ流して何が伝わりましたか、それは時間の無駄でしょ。
 PCとネットが普及しても、チョークと黒板、印刷した資料はなくなっていない。かえって紙の量が増えたりするって、どんだけ学校が時代についていけてないかわかる。学校がついていけないのは教員がついていけないだけである。いまだにその道を得意とする教員に仕事を押し付ける風潮があるが、まずベテラン中堅が率先すべきだ。昨年度横浜市が採用したロイロノートの研修にどうして学校全体の仕組を知らない若い職員にいかせるのか。ロイロノートは学校全体の教育活動をどう進化させるかという研修なのだから、学校の仕組を知っているものがどう活用するかを考えなければ意味がない。できるできないではなく、やるかやらないかなのだ。ICTは目的ではなくツールであることを忘れてはならない。ツールの活用なら生徒のほうが上手だ。もともと高いスキルを持っているのだから、それを活用するための手立てだと思えばいい。あとは学校教育全般での活用を考える。これはベテラン中堅職員の役目でしょ。

おわり

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