&キッチン開業顛末記  6

レシピの研究    

牛スジシチューのオムライス   

行きつけの肉屋高井ミートでは、下茹でした牛スジを売っていた、店主に伺うと2時間くらいゆでるという、それを真空パックで販売していたのだが、なにせ元が和牛だから抜群にうまい、2020年はコロナ禍にあって外食ができなかったから、自宅で毎日のように、いろいろな食材をアレンジしては、親しい友人に食べてもらっていた、数多いレシピのなかで、牛スジシチューはとくにおいしくできた、そしてそれをオムライスのソースにすると合うことも発見した、実際に商品化するにあたり、まずは仕入先を決めねばならない、さて、どこで仕入れたものか、肉屋は基本的には肉を売る、だから副産物のスジは大量には出ないし、肉屋もスジばかり買われても困る、同等の材料を大量に手にいれるには市場しかない、以前、大黒ふ頭にある食肉市場を見学して、肉の流通を勉強したことがあった、肉以外の臓物、いわゆるモツと皮は本来廃棄物だが、処理業者が独自に流通ルートを形成していた、皮は塩漬けにしたものを皮革業者に売り渡し、皮製品の縫製業者が多い浅草に集まった。モツは飲食店が多く、当然流通業者も多い、そこで以前から存在は知っていたモツの木下商店を訪ねてみた、そこで相談してみると、何種類ものスジ肉があることがわかった、高井さんで処理していたスジはどこの部位かは聞いてみたが、実際に常に大量に仕入れられるものを先に決めなければならないから、木下商店ですぐに手に入る3種類から手をつけた、和牛スジ、かしらスジ、そしてイカと呼ばれる白スジ、のちに白スジという別の部位があると知るのだが、これらがいま実際に使っている材料だ、それを使って試作を始めたのが10月頃だった、それから月日がたち、開業するときにふたたび訪れると木下商店の勘七さんはちゃんと覚えていてくれて話が進み、試作のために仕入にいくと卸売価格で提供してくれた。

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