&キッチン開業顛末記 7

小さな店からみえた市場経済

開業から半年、なかなか売り上げがのびない、商品開発はもちろん、店のレイアウトや装飾、チラシの配布、SNSの活用、これまでの人脈の焼き直しなど自分ができる具体策はとってきたが、ここに至り、あることが打開のきっかけになった、それは隣の飲食店との「競争」である。

うちはテイクアウト専門、となりはイートインでスタイルが違うし、メニューも重ならないということでマーケット出店が許された。ところがコロナ禍で飲食店の休業要請が続くと隣はテイクアウトに力を入れるようになった、これは仕方のない、同じマーケットの一員として共存する意思は強かったので、自分の店にも影響は大きいが、困難に向かっていくオーナーさんに対して、ともに危機を切り抜ける仲間として応援する気持ちでいた。

しかし相手はそうではなかったらしい、9月に入り休業が明けると、ときにメニューが重なるようになる、うちと競るような価格設定など露骨に競争心をむき出しにしてきた。こちらは始めたばかりで売上の全くない日もある、うちの店にとってこの程度でも大きな打撃になる、商品力で負けるのなら仕方ないが、あまりに仁義を欠いたやり方には少し凹んだし、不快な思いだったが、かといって文句を言うのは筋が違う、これは当然の競争原理、受け入れよう、だが凹んでいる場合ではないと気付いた、自分も商品力を高め、販売に工夫をしようと考え実行、ああ、これが市場経済なのだ、これこそが正しい競争だ、この「競争心」が転換のきっかけになったのだ。

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