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心ひとつ

今日からしばらくは
感情の波がやってくる

去年とはちがう

一昨年ともちがう

父のステージ4の
食道がんが分かった日から
わたしの世界は
一瞬真っ白になって
そのあとは
ぼやけて霧が濃くなった

ぐらつく足元を
なんとかくっつけて
いつものように仕事にいき
保育園にいき
ご飯作って
うんぬんかんぬん。

怯える心ひとつ増えて
当たり前にいたひとが
いつ消えるともわからない

一秒がもどかしく
父のもとにむかうときは
鉄仮面つけて
泣かずに当たり前そうに
いくつもりの日にかわる

だけど
痛いのも
傷たいのも
つらいのも
悔しいのも

全て父のもの

なにかを差し出したから
痛みがゼロになるわけもない
完全に分かってもあげられない
なんにもできない

父は昔から
痛いことには耐え、
こっそり鎮痛剤のむタイプ
見た目はごっついのに

本当は怖がりで
優しくて
こんなでっかい恐怖に
耐えうる力なんて
きっと誰だってないけれど

だけど心配はよそに
父は安らかな最期だった

こんな結末だと
知っていたなら
1年7ヶ月もっと
笑ってそばにいたのに

去年の今ごろ
かすれた声で話す父と
その日が近いと悟った

「誕生日くるかのー」

くるでしょ(最期の)

6日後に誕生日を祝って

プレゼントを渡したとき
嗅ぎたくなかった
匂いをかいだ

死期が近いとき
独特に放たれる匂い
この匂いをかいだら
長くて二週間、早くて今日
(※あくまで、私の経験測です)

9日後父は朝早くに
普通におきて
母に声をかけたとき
その時をむかえた

なんでだか
前日に20時を回って
みんなで顔をみにいき
笑顔で「またの~」と
三兄弟にデレデレの
姿をみてたから

わたしには
ずっと、またねなんだ

父はずっと言っていた

自分でたくさん時間をとらせた
だから最期がきたら
そのあとは、どうか
みんな忘れて日常に戻ってと。

無理難題だと聞いていた
できないと分かっていたけど
分かったよと答えていた

そこから1年がもうすぐ経つ

日常になんて戻れなかったよ
戻ろうとして
もがくたびに溺れて
ぐらつく足元を
くっつけている力もなかった

わたしが壊れた
去年の10月に

みたくない自分を
たくさんみた

偽りながら
作り笑いで
うまくやってきたなんて
思い込みで
周りの人が
許してくれてたから

そんなあんなこんな自分
最初はボコボコに
していたのだけれど

昔から言われてきた
謎の父がいう言葉が
頭をかすめる

「自分を許してやれ」

中学生くらいから
ずっと言われていた
何を許してやるのか
ずっとわからなかった

きっとその頃には
父からみたら
自分自身を一番否定する私が
みえていたのだろうか

もう聞けないけど

人より劣るから
調子にのりやすいから
人の三倍頑張る気持ちで
ようやく人の半分だと
思ってきた

三倍頑張っていたかは
自分だけの中のことで
端からみたら
そんなものわからない

そう思うことで
ちょっと現実から
目を背けるように
逃げ道を作っていただけ

そんな逃げ道いらないよな

本当に頑張れよって
もうみんな許すから

年内に面接を受け続け
働きたいより
やりたいと思える環境を
探して内定し年明けをした

1ヶ月前から
今、新たな環境に
身をおいている

今までとは真逆

マニュアル、マニュアル
緊急、急変、
失敗したら大惨事
1分間隔でバイタルをみるから

看護をうける人優先
ううん、
看護なんて概念は
もしかしたらない

1日を同じ屋根の下暮らす
そんな人たちのスペースに
毎日お邪魔しますって感じ

目に見える
始まりと終わりはなく
流れる時の隙間に
なんとなくいる位に近く

1ヶ月毎朝どちらかといえば
憂鬱気味だった
すぐにでも辞めたくなった

住み慣れたほうの
空気にふれようか
いや、もう決めただろう

更地から始めることに
負けそうになるのは
自信がないのと
時間が積みかさなってないから

積みかさねてみて
はじめて視界が広がる

いま、1ヶ月しただけ

単純かもしれない
好きな色のスクラブがきれる
コーラルピンクが好きだ
好きな色、好きな装備
テンションをあげる

そして
ひとつやめたことがある

1日を振り返りすぎない

私は頭よりからだに
たたきこんでしまえ
考えるより体が動けと

だから
帰ってきてから1日を
振り返り同じミスはしない
ガチガチに固めて

今は勤務中に誰かと
全体的にどうだったかを
振り返り、帰ってきたら考えない

明日はあしたの
何かがあるから

毎日ミスをしないより
毎日確認しながらいれば
それできっといい

父との別れから
1年経過するいま
わたしは少しは
許してやれてるだろうか

去年は泣けなかったけれど
今日は泣いたっていいだろう

あなたを想って
ようやく本当に
泣ける日がきたのだ

娘らしく
子供のように
溢れた涙はとめなくていい

想って泣くのはいいよな

誕生日プレゼントは
こんな今のわたし
ようやく少しは安心したかな

もう一個言われていた

「忘れたふりして頭の端にちゃんとおいておけばよくて、真ん中におかなくていい」

忘れたふりというか
当たり前に頭のなかに
日常のどこそこに
覚えているから
大丈夫

とはいえ
さすがにまだ
頭の真ん中に今はくるから
ここに想いを綴っておきたい

来月には
もう少し穏やかに
その日を偲び
またあした

またね