見出し画像

8月某日の日記/兎馬フィグ

人と映画を観に行く約束をしたものの、まともな時間に予定が合わなかったので久しぶりにレイトショーで観ることになった。

仕事終わりに合流して映画が始まるまでの1時間半程度、歌舞伎町のゴジラの裏のほうにある夜パフェ屋さんに行くことになり、人気店なので先に1人で様子見に向かった。
その間何人かに声を掛けられるのは歌舞伎町では避けられないことだけど「ウリやってないの?」と言われたのは初めてだった。スマホを持ったままこっそり視線をやると、白いワイシャツを着たお腹がスラックスの上に乗っかっていた。あまりにもテンプレ。この前見に行った演劇がトー横キッズを題材にしていて、家出少女が身体を売ってお金を得ていたのを思い出した。目の前のおっさんは人として間違っているけど、私はトー横キッズを養えない。

夜パフェ屋さんにそこそこ列ができていたので、私たちは東口のでっかい猫ちゃんの下にある店でパフェを食べることにし、ラストオーダーぎりぎりに滑り込んだ。
私は弱すぎる人や臆病すぎる人と仲良くなりやすいので、そういう周囲の不安定さに引っ張られて崩れかけると何度か叱られていた。 今日は少々だめな友達の話をしてもあまり叱られなくて、バッサリ言いつつも呆れた感じで笑っていた。いよいよ本当に呆れたのかもしれないし、愛なのかもしれないし、私という奴に慣れたのかもしれない。

映画は輪るピングドラムという私が1番好きなアニメの劇場版で、アニメ版より少しだけ優しかった。ピンドラは、愛は誰かのエゴで面倒くさくて美しいって言ってくれるから好きだ。

映画が終わって午前1時過ぎ、映画館の向かい側の24時間営業の喫茶店で珈琲を飲んだ。3時間ごとに追加のご注文をお願いします、と言われた。3時間も居させてくれるなんてえらく親切だ。向かいあってよく見ると彼女は少し痩せたようだった。不安になってベーグルサンドを勧めて食べさせ、煙草を吸いながらそれを眺めた。あと私は最近ちょっと太ったから。

その後カラオケで時間を潰して外に出るとまだ辺りは薄暗く、私たちはゆっくり駅に向かうことにした。夏は暑すぎるけど、夜の少しぬるくて湿度のある空気は好きだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?