#61 閉塞成冬の日記(12/7~12/11)

12/9

閉塞成冬 (そらさむくふゆとなる)。寒さが虚しさに変わってしまったのか、最寄り駅に出たのに足が止まって、どうしても出社ができなくなってしまった。きょうはボーナスの支給式で、気に入っているワンピースも着ているのに。

しばらくうろうろした後、LOFTの文房具売り場に行って、ゆっくりとノートとペンを選んだ。薄く透けるような紙や、物として美しいステーショナリーもあったけれど、うずまく感情のアウトプットを導いてくれそうなわら半紙っぽい質感のノートとシャーペンを選んだ。

駅近くの栄えた通りからすこし外れたところにある小さな古い喫茶店に入った。店内は、暖色系の光とちょうどいい音量のジャズと煙に満たされている。紅茶を飲みながら、さっき買ったばかりのノートに夢中で言葉を書き付けた。ちょっとふざけた表紙なんだけど、開くとラフな手触りに漫画のコマのような特殊なレイアウトがうっすらと2色刷りされているノートで、その形状をフックにしてどんどん手が動くいいノートだった。

結局14ページほど書き付けて、ずいぶん心がすっきりした。頭で考えたわけではなくて、心のままにとった行動だったけれど、今の自分にとって最も必要な行為を選択・実行できたのだとお店を後にしながら思えて、心に「OK」マークが出せてHPがひと目盛り回復した。

レンタサイクルに乗って好きな本屋さんに行った。同い年くらいの女性がひとりではじめたちいさな新古書店。毎月通っていたら顔を覚えてもらえないかななどと目論んでいる。今日もBGMをきっかけに音楽について少しお話ができた。稲垣足穂の幻想文学の古書と伊藤紺の歌集を購入。この日は心がかなり弱っていたので、シンプルに心の栄養になるものを選んでいると思う。

花次郎に寄った。激安花屋さん。きゅっとつぼんだチューリップを3本買った。私はチューリップが好きだ。

RYURYUに寄った。1977年創業のスパゲティ専門店で、神戸を中心とした関西ローカルの素敵なお店だ。パスタじゃなくてスパゲティ屋さんなのがいい。当時のアベックのデートランチに使われたのだろうな。神戸生活で気に入っているお店のひとつで、気軽なランチに神戸初心者の知り合いをたびたび連れこんでいる。ここの名物メニュー「牛すじのカルボナーラ」を食べにきた。ちょうどいいローカル感と、B級感と、そしておいしさ!

帰って、味のりの入っていた透明の空容器に買ってきたチューリップ活けたとき、その自由さで、最後の目盛りも回復したのを感じた。

12/11

世界一好きなバンドのライブを見に行った。

かれらが関西で開催するライブには、ここ8年間は可能な限り足を運んでいる。音を聴いているうちに、瞑想しているかのように頭の中が羊水に満たされて思わぬところにしまってあった些末な考えがぷか~っと浮かび上がってきたりする。このライブでしか得られない浮遊感と解脱感。

帰宅して、夜も遅いのに大きな鍋に野菜をごろごろたっぷりぶちこんでクリームシチューを作った。

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