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RPA活用のポイント(1):転記(入力)

転記(入力作業)はRPAで最も利用頻度の高いパターンであり、適用される業務範囲も非常に広い。その中でも典型的なケースとは、注文情報の転記、請求書の転記、申請書の転記、システム間の転記の4つです。

①注文情報の転記

転記の典型例の1つは、注文情報を自社の販売システムに入力するケースです。業種業態によっては簡単に自動化できるかもしれませんが、多くの企業ではそれほど単純ではなく、さまざまな工夫が必要になる領域です。

RPAはパソコン上で動くソフトウェアのため、当然、デジタルデータしか扱うことができません。しかし注文情報は必ずしもデータで来るわけではないため、「どのようにデータ化するか」が本ケースのポイントとなります。

大手企業であれば注文をEDIなどで自社の販売システムと直接つないだり、専用のWebシステムに入力させることによって、データを自社システムへ取り込んだりしているでしょう。この場合はすでに自動化されているので、RPAの対象ではありません。問題は、注文を電話、FAX、メールなどで受け取っている場合です。つまりデータ化されていないケースです。

紙の注文書もOCR(光学的文字認識)を使えばデータ化できると単純に考えるかもしれません。しかしOCRにも認識精度の問題や、注文書のレイアウト、サイズ、紙質などによる制約があるため、それほど簡単にはいきません。またOCRの導入費用が別途必要となるため、ある程度の規模がなければ投資対効果が出ません。

ではどうすればよいでしょうか。注文情報をデータ化するには次の3つ方法があります。

◆Excelのフォームに入力してもらう
自社にとって一番良い方法は、自社の注文フォームをExcelで作成し、これを顧客に使ってもらう方法です。顧客に入力してもらった上で、Excelファイルをメールで送ってもらいます。フォーマットが統一されるため、その後のデータ処理がやりやすくなります。

ただし、自社の注文フォームに切り替えてもらうのは、顧客からすれば面倒くさいと感じる可能性があります。いくら交渉しても取り合ってくれない顧客もいるでしょう。その場合は、次の方法を試してみましょう。

◆元のファイルを送ってもらう
自社の注文フォームを使ってもらうことが難しい場合は、顧客が使っているファイルをそのまま送ってもらうよう交渉します。まずFAXを使った注文についてですが、FAXは「手書き」の紙を送るケースと、Excelなどで作成した表を「プリント」して送るケースがあります。最近はFAXといっても、さすがに手書きではなくプリントが多いはずです。先方には元のファイルが存在するので、その元のファイルをメールで送ってもらうようにお願いするのです。またFAXではなく、メールでPDFファイルを添付して送ってくる顧客に対しては、PDF化する前のExcelファイルをそのまま送ってもらうようにお願いします。

◆管理用の中間ファイルを使う
電話、FAX、メールで注文を受ける場合、企業によっては注文情報を直接販売システムに入力するのではなく、いったんExcelの一覧表を作成していることも少なくありません。これは入力モレや入力ミスを防ぐために、事前に一覧表で確認をしたり、入力後に再確認をしたりしたいからです。

このような管理用の中間ファイルを作成している場合は、そのデータを使って販売システムに自動入力することが効率化になります。手入力の作業が削減されるだけでなく、ロボットは入力ミスをしないため、入力の確認作業も不要となります。あとは元のFAXやメールの注文内容が正しくExcelに反映されていることをしっかり確認すれば済むわけです。

②請求書の転記

請求書が取引先から送られてくると、会計ソフトに支払データを入力しなければなりません。通常、請求書は郵送されてくるため、紙の請求書を見て従業員が会計ソフトに入力します。この転記の処理は先ほどの注文の場合と基本的には同じで、外部からの情報を社内システムに入力するパターンです。

少し違うのは、取引先が請求書をExcelで送ってくれることはまずないという点です。注文書のケースではExcelファイルを送ってもらうよう顧客と交渉すべきと述べましたが請求書では異なります。取引先からすれば、請求書は最終確認を終えた文書であるため、改ざん可能性のあるExcelでの送付を受け入れることはまずないからです。

請求書も電子化が進んでおり、PDFの請求書をメールで送付するケースも増えてきていますが、まだまだ紙の請求書を郵送するところが多いのが現実です。ここでは「紙の請求書」を前提に対応方法を2つ説明します。

◆管理用の中間ファイルを使う
これは①の注文情報と同じで、管理用にExcelの支払一覧を作成している場合に、それをRPAで会計システムに自動入力する方法です。実際、このようなExcelの一覧表を作成している企業は多いはずです。支払いに間違いがあってはいけないため、請求書をいきなり会計ソフトに入力するのではなく、いったんExcelの一覧表を作り、そこから事前に確認作業や承認手続きを行っています。このように管理用の中間ファイルを作成しているのであれば、これを利用して入力作業を自動化することができます。

◆AI-OCRを利用する
AI-OCRとは、AI技術を活用したOCRのことです。OCRは費用と手間がかかるため、私はあまり薦めていませんが、請求書の量が多い場合はOCRの投資対効果は期待できます。実は請求書はAI-OCRが得意とする文書で、文字認識率が非常に高いのが特徴です。AI-OCRのベンダーの中には、請求書や領収書に特化した製品を提供しているところもあります。

AI-OCRは定型のフォーマットを読み取る形式と、非定型のフォーマットでも読み取れる方式があります。定型フォーマットの方式では、請求書のどの位置に取引先名があり、どこに金額が書かれているか事前に登録しておくため、認識率は非常に高くなります。一方、非定型のフォーマットではAI-OCRがどの位置に取引先名があり、どこに金額が書かれているかAIを使って判断します。フォーマットを事前に登録しておかなくても、AIがさまざまな請求書の形式をすでに学習しているため、高い精度で判断ができます。ただし、OCRには追加費用がかかるため、事前に投資対効果が見込めるかよく調査することがポイントです。

③申請書の転記

申請書とは、たとえば経費精算の申請書のように、担当部署へ何らかの処理を依頼するためのフォーマットのことを指します。業務内容としては、担当者が送られてきた申請内容を確認し、データをシステムに入力する作業となります。申請書には、社内の従業員が申請するものと、社外の顧客などが申請するものに分かれます。ここでは社内、社外の2つに分けてポイントを説明します。

◆社内での申請書
Excelの申請書をベースに、システムへ自動入力するだけであれば比較的簡単です。特定のメールアドレスを決め、従業員はメールにExcelの申請書を添付して送付します。ロボットはメールの受信をキャッチし、Excelファイルを開いて入力処理を行います。もし申請書が紙である場合は、これを機にExcelの申請書に切り替えたほうがよいでしょう。

◆社外からの申請書
社外からの申請書とは、セミナーの申し込みや会員登録などを受け付けるケースです。申請には定型フォーマットを使用することになり、WebやExcelの申請フォームを用意して申請者に入力してもらいます。このように申請書をデータで受け取ることが可能な場合は、社内での申請書と同じようにデータを使って自動化すればよいでしょう。

問題は紙の申請書を使わざるを得ないケースです。たとえば店舗で申請を受け付ける場合、タブレット端末などの設備を整えていない限り、紙の申請書に書いてもらうことになります。そうなるとOCRに頼るしかありません。ただし、申請書は注文書や請求書とは異なり、自社の「定型フォーマット」を使えるため、精度の高い文字認識を実現すことができます。つまり手書きであっても100%に近い認識率を期待できるのです。特にAI-OCRは、AIが大量の手書き情報を学習していますので、高い精度で認識できるはずです。

④システム間の転記

システム間の転記とは、Aシステムの情報をもとにBシステムにデータを入力することです。たとえば勤怠管理システムの勤怠情報を給与管理システムに入力したり、給与管理システムの振込情報を銀行のFB(ファームバンキング)システムに入力したりするケースです。システム同士に互換性がある場合を除き、一般的に人が手作業で入力している業務です。

システム間の転記では、すでにデジタルデータが存在しているため、これまでのような紙の問題はなく、比較的簡単に自動化することができます。後はRPAの処理方法を考えればよいだけです。処理方法は各システムの機能に依存しますが、アプリケーション側の「インポート機能」を使う方法と、普通に登録画面から入力する方法に分かれます。

◆インポート機能を使う
アプリケーションには「インポート機能」を搭載しているものも多くあります。インポート機能とは、CSVファイルを使ってデータを一括で取り込む機能です。アプリケーションごとにインポート用のフォーマットが決まっており、その決められた項目に合わせてデータを用意すれば、登録画面から入力をしなくても一括で登録できます。

たとえば、銀行振込には「全銀フォーマット」という全国銀行協会が定めるCSV形式のフォーマットがあり、FBシステムは一般的に全銀フォーマットを取り込めるインポート機能があります。この場合、RPAはFBシステムの画面から1件ずつ登録するのではなく、全銀フォーマットに合わせたCSVファイルを作成し、インポート機能を利用してFBシステムに一括登録するほうが早いわけです。

同じように、市販のアプリケーションでもインポート機能を搭載してものもあるため、まず機能の有無を確認したほうがよいでしょう。もしインポート機能が使えるのであれば、画面から1件ずつ登録するよりも遥かに処理が早く、RPAの開発やメンテナンスも楽になるはずです。

◆登録画面から入力する
インポート機能がない場合は、普通に登録画面からデータを1つずつ入力するしかありません。この場合のRPAの処理はシンプルで、一方のシステムからデータをダウンロードし、もう一方のシステムの登録画面へ入力するだけです。また複数のシステムのデータを使う場合は、その編集も含めて一連のプロセスを自動化すればよいでしょう。

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