忘れられないの

夜中、ふわふわとインスタを徘徊していたら、まだフォローを外せない元彼のライブ映像が、しかも手元が見える画角で流れてきた。付き合っていたときに私だけが見たかったこの景色が…今やインターネット越しでしか見れない。
心底悔しいと全身を駆け巡った。
大好きで大好きだった彼は、いつまでも記憶の中で輝いている。もう現実では輝かない。それは付き合っていた頃の私へのけじめだ。
正直、私はもう彼のことをこれ以上好きにならないために避けている。それはもう指摘されると逃れられないレベルで避けている。

元彼の公演に一人で乗り込む勇気が、もう無くなりつつある。
友人を連れて行こうとして、お誘いをしていた最中に、ふと、彼のかっこよさを知られたくないと、もう付き合ってもないのに勝手に独占欲が湧き上がるのを確認した。

いい加減勘弁してください。

私はもう貴方の何者でもないことを、いい加減自覚するべきだし、元彼女という負け犬のレッテルを貼られている以上はもう彼の周りでうろちょろするのは避けたほうがいい。そんなの分かっている。

最近、彼に嫌われる努力を始めた。もう何がしたいのか分からない。
彼の嫌う煙草に条件付きで手をつけた。
彼のいる喫煙可能なライブ会場でのみの解禁。向こうから拒んでくれれば、私も苦しまずに本当の意味での別れを引き寄せられると、そう盲信している。
そんなことあるはずないのに、ね。
彼が私の尻尾振りをかろうじて受け入れてくれているから、私は彼のことをギリギリのラインで観測して、綺麗なままの思い出で終わらせることができているのかもしれない。
彼に好かれている必要はないけど、嫌われている必要なんて、もっとない。
憧れの存在に可もなく不可もなくの感情を抱いてもらっているのが、1番楽であって、それを持続させるのを目指すのが良いんだろうけど、それを続けるためには私の気持ちが絶え間なくすり減り続けるのを見て見ぬ振りしなければならない。
そこまでして彼のそばに何者でもない状態で立ちたいの?
大好きな存在に、その好意を無碍にされ続けるのは到底容易いことではないよ。

そんなことを言いながらも、付き合いたての頃に、thank you!と書いてもらった彼のバイト先のおしぼりを枕元に置いては、まだ捨てられずにいる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?