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本当に最高なサイケデリックアルバム30選


 無心にTwitterを眺めていたら偶然、釈然としないような記事を見かけたため、それへの返答として、自分なりに同じようなランキングを付けてみた次第。
 勢いに任せて書いたということもあり、文章が粗雑であったり、ここに取り上げるべき素晴らしきアルバム群を見落として了っているということ、または取り上げるに足らないと客観的に見て思われるようなものも組み込まれている、ということがあるかも知れないが、そこはご寛恕願いたい。また、独善的なランキングではあるが、一応奇を衒うことなく、あまりにマイナーなものなどは排除し、名盤の名に恥じない強度を持つ諸作品をメジャーなもの中心に取り上げたつもりであるから、ある程度の納得は得られるであろうと思う。
 それではこれから紹介される掛け値なしに素晴らしきサイケデリックの世界に頭を打たれて欲しい。

 
30位 Nuggets (Original Artyfacts From The First Psychedelic Era 1965-1968)
米ガレージロックのコンピ。ジャケに反してサイケ感はそこまで強くないがガレージからソフトロックまで幅広く網羅されており、粒ぞろい。何枚か組みのデカいバージョンがあったり、色々シリーズ化しているようだが、不肖ながら詳しくは知らない。


29位 The West Coast Pop Art Experimental Band – Part One
ダウナーサイケと言ったらこれ。甘ったるいボーカルと気だるげな演奏が最高。風邪の日に聴いたら多分死にます。


28位 The Fool - The Fool
天才アート集団がホリーズのグラハムナッシュプロデュースのもとでリリースした唯一作。気の抜けたような、文字通り間抜けっぽくありながらも、ワールドミュージックのような放縦なる想像力が押し寄せて来る。


27位 산울림 – 산울림 새노래 모음

サヌリムは韓国ロックの立役者的存在。ファズギターとチープなオルガンが素晴らしい。ラストの韓国民謡アリランのロックカバーは聴けかずして死ねない。
(彼等は意外にも多作であって、私はまだその初期の活動しか追うことが出来ていない。これからもっと聴いていかねば、と思う次第である。)




26位 Billy Nicholls – Would You Believe
続いてはImmediateからビリーニコルズ。ソフトサイケの大名盤。この切ないボーカルとカラフルなサイケサウンドは一級品。


25位 White Noise – An Electric Storm

 SM、喘ぎ声、子供用玩具、などのコラージュとノイズが嵐のように襲いかかってくる電化サイケデリックの怪盤。


24位 Elmer Gantry's Velvet Opera – Elmer Gantry's Velvet Opera

全盛期のフーでも到底及ばかなかったであろう程の爆裂な勢いでハローレディスアンドジェントルマンと挨拶され、びびって竦んでいると、また間髪入れずにデデデデゲゲデゲと印象的なリフと霧が掛かったようなボーカルにぶん殴られ、そのままドリーミーでラリッてるナンバー、ポップで可愛らしいものと続き、一息も付く暇を与えない。この勢いが凄すぎて蝉の一生のように短命なバンドに終わってしまったのだろうか。恐らく別にそんなことはないだろう。


23位 The Red Crayola – The Parable Of Arable

「お母さん、あっちに変な人が居るよ」と指さされて見た方にコイツらが居たらマジでやばい。そんな雰囲気を纏った明らかに怪しい、本物のフリークス集団によるフリークサイケ。ジャケットを見てわかるとおりの音、ダウナーで喧しい、過剰な極彩ワールド。


22位 Margo Guryan – Take A Picture

ペットサウンズで開眼したジャズピアニストによる愛らしくも儚げで、少し影も感じられるソフトサイケ。恐らく渋谷系の人間もこういうのを聴いて大いに影響を受けたのだろう。さすがはジャズ畑出身とあって、ポップなセンスを裏で支える確実な技術がある。一度聴いてしまえばこれを聴かずに日曜日を始められないというマーゴガーヤン中毒に罹患してしまう人間が続出することも必至。


21位 The Rolling Stones - Their Satanic Majesties Request

巷では毀誉褒貶相半ばするこのアルバムもサイケデリックロックの観点から見れば紛う事なき名盤であり、筆者もこのアルバムの出来映えを疑ったことは一度もない。


20位 The Mothers Of Invention – We're Only In It For The Money

サイケ期ザッパの佳作。ザッパはアンクルミート以降はあんまり興味が無いという人間とは馬が合いそうだ。レコードやCDではジャケットを見開くと場末のゲイバーみたいな写真や円形にコラージュされた男の乳首などが掲げられているが、まあ曲も大体そういう感じで、節奏のない下品なインテリの卑俗なる遊戯がサージントペパーに影響されたコンセプトの型で繰りひろげられる。


19位 The Move – Move
作家の本質はそのデビュー作にこそ色濃く反映されるとか何とか、それはともかく、これムーブのデビューアルバムを聴いてロイウッドの才能を疑い得る人間は一人もいないだろう。卓越したポップセンスと空手のように攻撃的なロックンロールがサイケデリックに包摂される形で見事に両立している。


18位 Nazz – Nazz

トッドラングレン/サイケと来てこのナッズ期の仕事を挙げられない人間は愚鈍である。本当はもっとガレージロック的なことをやりたいのに、ポップソングも上からの命令で仕方なくやっている、見たいなその葛藤が全部このアルバムには詰っており、後に大ヒットとなるハローイッツミーの原曲も聴くことが出来る。トッドラングレンはあまりに多くのアルバムを出しており、全部聴くのは面倒なので、とりあえずナッズ期の三枚を聴いておけばよいでしょう。


17位 Grapefruit – Around Grapefruit

ビートルズのアップルレコードからデビューし、商業的には見事に失敗した彼等であるが、その才能疑うなかれ。アップで楽しいナンバーに泣かせるバラード。セカンドアルバムも初期ディープパープルのようなちゃちいハードサイケで中々良いのだ。


16位 Kaleidoscope  – Tangerine Dream

英国仕込みのユーモアとペーソスが存分に感じられる、名前の通り万華鏡のような音楽世界。脱力系のコーラスであるが、しかし、どこか芯が通っているというか、全体的な完成度が抜群。特にアルバムの終幕を飾る8分にも及ぶThe Sky Childrenは一聴の価値ありまくり。アメリカに同名バンドがあり、かのSpotify様やアップルミュージック様諸氏も勘違いしておられるようだが、混同することないように。


15位 Blossom Toes – We Are Ever So Clean

英国B級サイケで何か一枚挙げるなら間違いなくコレである。ほんとうに非の打ち所がなく、サイケデリックロックに求められるべきもの、全て入っている。これを聴いておけば間違いないと胸を張って保証できる。ちなみにこのバンドはエリックロメールのサントラを担当したりもしているので、映画ファンも聴くべし。


14位 Os Mutantes – Os Mutantes

ブラジルサイケの質の高さには目を見張るものがあるが、その中でもやはり特出して取り上げられるべきはコレだろう。ブラジルのサージントペパーとでも言おうか、しかし、その実験精神は本家にも引けを取らない。トロピカルサイケ恐るべし。


13位 The Soft Machine – The Soft Machine

カンタベリーロック、ジャズロック界の重鎮ソフツもデビュー時はバンド名を拝借したバロウズの精神を受け継ぐ、サイケデリックの申し子であった。ワイルドフラワーズ時代からの盟友ケヴィンエアーズ、マイクラトリッジ、ロバートワイアットという全く異なったベクトルに才能を開花させてゆく三人はデビュー時からやはりその風格を余すことなく示している。その独創性たるや。


12位 The Zombies – Odessey And Oracle

ゼクシィのCMや映画TITANでの起用から昨今益々その再評価が進んでいる(?)ゾンビーズ。このアルバムを挙げないことにはサイケランキングは成立しない。マニアも多い本作、こう云ってしまえば元も子もないが、まあとりあえず聴くべし。



11位 The Deviants – Ptooff!

天才という言葉が汎用され吐き気をも要すような様相を呈している昨今、しかし、敢えて言わせて貰うならミックファレンは天才である。クスリを使っての創作はズルであるとか何とかほざく輩はこのアルバムを鼓膜がはち切れるまで聴き込めばよろしい。
サイケデリックロックはそのブーム以降も脈々と続いてゆくわけだが、しかし、これほどのアルバムが生まれ出るためには大いに時代的な背景が必要だった訳だ。あなたがこのアルバムを一通り聴き終えてひと息ついた時、ポロッと一言、こんな時代に生まれたかった、と我知らずに呟いてしまだろうことは想像に難くない。


10位 Small Faces – Ogdens' Nut Gone Flake

フーと双璧をなすモッズバンドの花形としてデビューした彼等はサイケブームのまっただ中、最も巧くその潮流に乗り、商業的にもまずまずの実績を得、またそのオリジナリティ、音楽的才能を遺憾なく発揮することの適ったバンドだということが出来よう。インストナンバーに始り、激情的なものや馬鹿馬鹿しいものまでがコンセプティブに展開されるその様は必聴。


9位 The Byrds – Younger Than Yesterday

さて、トップテンにまで来て、ビッグネームもちらほら見受けられるようになってきたわけだが、次は満を持しての登場バーズ。本作は紛う事なきバーズの最高傑作と言えよう。So You Want To Be A Rock 'N' Roll Starを筆頭に、Renaissance Fairやサイケロックのスタンダードナンバーとも言えるWhy等、可憐なコーラスと泣かせるロジャーマッギンのボーカルにサイケな浮遊感、どこをとっても素晴らしいのだ。


8位 Manfred Mann – Mighty Garvey!

一応コンセプトアルバムの態を成している無印マンフレッドマンのラストアルバム。正味筆者が大いに贔屓しているということもあるが、彼等はあまりにも過小評価されていると思わないではいられない。メロトロンに溺れたくなったらコレとスプリングの唯一作を聴くべし。彼等の魅力を余すところなく理解するには本当はシングル集などを挙げた方が良いのかも知れないが、しかし、こういう場にベスト盤を持ってくるのは愚かなのでしない。


7位 The United States Of America – The United States Of America

自分たちのことをジャパンだと名乗るイギリスのバンドやハーフジャパニーズだと名乗るアメリカのバンドなどの存在を鑑みるに、このバンドはアメリカを自称するアメリカ人のバンドであり何とも潔が良い。ジョンケージの弟子が流行のサイケロックやってみた、的なアルバム。しかし、その出来映えはやってみたで留まることなく、歴史に残る名盤の域に揚々と達しているのである。脳に纏わり付くようなノイズ音に怪しげな女性ボーカル、そして不真面目なコラージュにストリングスを存分に活かしたビートルズ的なバイブスもある。冗談抜きに私はこのアルバムを千回以上聴いているし、全体を通して、一寸違わず鼻歌で完全再現出来る自信もある。電子サイケにも先にあげたホワイトノイズやブルースハーク、シルバーアップルズなど色々居るが、やっぱりこれなのだ。後にも先にもコレに似たアルバムは存在しない、正しく唯一無二。


6位 The Beatles – Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band

中坊の頃、地元の工業大学の視聴覚室に侵入し、これを聴いてしまったあの日から私の青春はただサージェントペパーのようなアルバムを求めてひたすらインターネットの波の中で音楽をディグるだけの、禁欲的とも言えるそれに決定付けられてしまったのだ。言ってしまえばこのランキングに取り上げられているモノも概してサージントペパーチックなものだろう。


5位 Syd Barrett – The Madcap Laughs

説明不要のロック界一大カリスマ・シドバレットのソロ作品。骨身削ってギリギリの状態で製作された本作を通底しているのは意外にもポップさであって、シドの底知れぬ才能がうかがえよう。


4位 Pink Floyd – The Piper At The Gates Of Dawn

ピンクフロイドの傑作は何か、と尋ねて、夜明けの口笛吹きだと答える人間だけが入ることの許される天国があっても不思議ではない。ブンブチッチーキャイキャイなどの裂帛のボーカルを聴きながら、リスナーは阿片窟の中毒者のように全身を虚脱させ、この素晴らしきサイケデリック世界に忘我で没入すべきである。


3位 Pretty Things – S.F. Sorrow

ロックオペラらしいが英語が不得手な自分にはどういうお話なのか、皆目見当も付かないが、しかし、それでもこのアルバムの持つ説得力が損なわれるということは毛頭ない。Twinkの加入やサイケデリックブームに伴い、それまでの刺々しいガレージサウンドは身を潜め(しかし、機を得てはそれがひょいと顔を出すのがまた良い)ナイーブで気だるげなセンスが全体に横溢している。これこそ1968年のサイケデリック!

2位 Tomorrow - Tomorrow

後にイエスに参加することとなるスティーブハウが所属していたことでも知られるトゥモロウのこの唯一作は正しくサイケデリックの名盤の名に恥じることのない傑作。目まぐるしいまでの編集とそれに負けない程のポップセンスがギリギリの所で橋渡しをしているかのようである。


1位 Twink  – Think Pink

1位はやはり、Twinkのソロ。このアルバムの魅力を語ろうとすると枚挙に暇がなくなるが、まずは何と言ってもその暗さであろう。暗黒の精神世界に手招くようなそのジャケットに違うことなくチベット密教のマントラのようなうめき声ともお経ともつかないようなボーカルにヘロヘロのドラム、そしてノイジーなギターが構成する音楽は見てはいけないものを見てしまったときのような鮮烈な印象を与えずにはおかない。しかし、聴き終わって見るとまた、このアルバムが恋しくなり、そして我等はこのアルバムに飲み込まれ、理性を失うまで、ラララララララーと歌うしかなくなるのである。ちなみにこのアルバムを私は布教用にレコード合わせて五枚も持っているが、友達がいないので一枚も配布することなく、実家の棚にそのまましまっている。しかも今ではストリーミングで聴けちゃうしね。
p.s.後にこのTwinkとシドバレット、ミックファレンなどによってスーパーグループ「スターズ」が結成されており、その音源もYouTubeで聴くことが可能だ。



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