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しおり #日常の道具たち

 最近読書量が増えた。紙の本を読む場合はしおりを使うことが多い。しおりはレシートでも付箋でも何でもいいのだが、読書を中断するときに限って手頃なものがないことが多々あるので、読み始めの本を手にした段階でしおりを本の目次付近にセットしておくことにしている。

 数年前まで書店で売られていた文庫本には、その出版社のしおりなり、読者アンケートのはがきなどがはさんであったような気がしたが、最近手に取る文庫本にはそれらがないことが多い。読み始める前にしおりになるものをセットしておかないとなんだか不安だ。自分のしおりをセットして読み始めてしばらくして別のページからひょっこり出版社のしおりが出てきたりすると、「お前、こんなところにいたのか」と昔の友達に偶然出会ったようでうれしくなってしまう。

 自分でセットするしおりは、現在は文庫本用とハードカバー用の大きめサイズのものと二種類。

 文庫本用は出版社のしおりを使い回している。以前は母から神戸土産でもらった、風見鶏の館を透かし彫りした金属のしおりを使っていたのだが、いつの間にかなくなっていた。読み終わって安心してしおりをそのまま本に挟んだままになっていると思ったのだが、探してもない。やはり外出先で落としたのか。お気に入りだったのに。後に同じものを神戸の風見鶏の館で買い求めたが、売っていなかった。なくしたのがショックで、それ以来なくなっても心を痛めないよう本屋のレジでもらえる類いの出版社のしおりを使うようにしている。

 ハードカバー用のしおりは、三重県に住む友達が送ってくれた伊勢型紙のしおりである。ハードカバーは持ち運びには重いため、自宅でしか読まないと決めている。そうなると紛失の機会がまずないので、ここぞとばかりに立派なものを使いたい。当該の伊勢型紙のしおりは柿渋色の紙に千鳥と青海波が細かく掘り抜かれた手の込んだ品物。見ただけで破れやすいのがわかるので、ずっと付属の封筒にしまってそれごとしおりにして使っている。ハードカバーの本には元々しおりの代わりの紐がついていることが多いが、私の場合はしおりで最初から最後まで通す。紐が挟まったページにつきあたっても、そこをさらに読み進めてしおりを挟む。

 人からもらったしおりを使うと、目に入れるたびにその人のことを思い出す。場所もとらないし、プレゼントとしては最適ではないか。ということで台湾の故宮国立博物院に行った折には、友達に展示物を印刷したしおりを土産に購入。今度会ったら渡そうと思っていたが、「最近電子書籍にはまっている」話を聞いてしまった。しおりを渡していいものか。小心者の私は、会うその日まで迷うことになったのだった。


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