連珠で盤に並べてみるべき定石


定石ならべの功罪について

 連珠の定石を実際に盤(※renju noteやgomoku simulator等のデジタル媒体も含む)に並べてみる事には一体何の意味があるのでしょうか?

 連珠の定石、中でも「必勝定石」と呼ばれるものは、正式な大会では使えません。交代うちがあるからです。また、アプリ「五目クエスト」でも中級者になってからは先後スワップで使えなくさせられますし、初級者のうちに必勝定石ばかりを並べていても、初見の局面への対応力が育たなければ、そのうち通用しなくなります。
(※特に、必勝定石に特有の「細くて鋭い攻めを繰り出し続けて勝ちに至るが、その途中でちょっとミスれば即逆転負け」という指し方を基本の姿勢として身に着けてしまうと最悪です。覚えてる局面では暗記ゲーで単純な勝ちきり、知らない局面ではスーパー自爆マン。そんな将来性ゼロの打ち手になってしまう事でしょう)

 それでも、初級の駆け出しのうちは必勝定石の学習には大いに意味があると思っています。必勝定石から対局を進めることで「有利な状況で勝ち切る力」を重点的に養うことができますし、更には「石の組み方の理想形」や「序盤の方針のテンプレート」を学べるという利点があります。
 数ある珠型の中でも特に並べる価値が高いと思う定石を、以下に紹介させていただきます。

並べてみるべき定石3選

1.雲月

 雲月の定石では、相手をまっすぐ押し込んで勝つ指し回しが学べます。手順には、変にひねった所も少なくて、
・引くと有利になる三連を引く
・すぐに勝てないときは、攻撃を重視した場所に「呼び手」を指す 
 といった、王道の攻撃の仕方を学べます。
 また雲月は白2手目が直止めでも斜め止めでも使えるので、初級者にとっては実戦での利用可能性が高いのもポイントですね。
 その分、ずっと実戦でも使えてしまうので、脱初級に差し掛かった段階でも延々と頼ってしまわないように注意が必要です。初段以上の人にも黒持ちで7割以上勝てるようになってしまったら、実戦での使用は控えましょう。以降の成長が止まります。

 定石の手順中、一番難しい手はこの黒11の呼び手でしょうか。知らなきゃ指せない手です。しかし、これをミスしたからといって状況は黒に有利なので、普通に指し進めることができます。

2.名月

 

 名月の必勝定石を並べて得られる、最たるものは「牽制の掛け合いに関する基礎セオリー」です。連珠ではときどき、黒も白も自分にとって攻撃力の高い陣形を組み、相手の攻めは乗り手(※相手の三や四を止めたときに、自分の三や四が生じることで相手の攻めを中断させることを狙う手)によってギリギリで凌ぐ、そんな不安定で物騒な試合模様になることがあります。
 例えば、自分が黒を持ったとして、この形からどこに石を置きたいですか?


 普通の感覚でいうと、↓ここに打ちたくなるのではないでしょうか?

 でもこれは不正解です。白からの猛攻が止まらずに黒が負けます。
 こういうときは、↓こういう風に打つのが正解です。


 相手の攻め形に対して、より強い攻め形を組んで手を返す
 もしも相手が攻めを開始したら、乗り手のカウンターで逆転する
 そうしなければ勝てない。相手の攻めを中途半端に守りにいくことで、かえって負けてしまう。そんな局面が連珠にはときどきあって、その基礎的な呼吸を学ぶのに名月の定石はうってつけです。

 また名月定石は、初級者が中級者以上になった後、自分が逆に「後進の初級者を迎え撃つ」際にも役に立ちます。なんといっても名月には、正しい応手を知らなければ、黒も白も一瞬で負ける(しかもその応手が非直感的な場所となっている)という局面が多く存在します。
 なので自分が相手の初級者に、黒番を取られようが白版を取られようが、知識の差さえあれば安定したイージーウィンが狙えます。

3.疎星(長星)


 最後は疎星です。疎星の定石は必勝ではないので、探すのに多少の苦労はしますが、包囲戦に関するエッセンスを学ぶことができます。
 雲月の定石では、攻撃力の高い直連から真っすぐに相手を押し切る指し方を学び、名月の定石では、互いに独立した攻撃陣を組みながら相手をギリギリの乗り手で牽制しあう戦い方を学び、この疎星では相手をジンワリと包囲しながらジワジワと優位を拡大していく戦い方を身に着けて、これで連珠の戦い方に関する一通りのセンスが漏れなく身につくと考えられます。

 そして疎星の定石は中級者以降になっても堂々と一生使っていけるものです。なんといっても先後互角ですから。初級者が相手でも、上級者が相手でも、こちらからの提示に使ってなんの差しさわりもありません。

最後に

 貴方がもしも初級者で、五目クエストの対局などで上級者相手に雲月の必勝定石を使ったときには、相手はきっと貴方に不快感を感じることでしょう。自分の方が圧倒的に強いのに、未熟な素人相手に必勝手順で理不尽に負かされて、レートを減らされる。それを嫌がるのは非常に当たり前な感性です。
 でも、最初のうちは上級者相手にも気にせず必勝定石をガンガン使ってしまいましょう。「必勝定石を使うことだけでしか身につかない能力」というのは存在しませんが「必勝定石を使うことで重点的に効率よく磨ける能力」というのは存在すると思ってます。
 それに連珠は……というより「五目クエスト」等のアプリは上級者にとって「得体のしれない初級者に必勝定石を使われて負けるリスクがある」ところも含めてのゲームです。あっさりと容易な必勝を並べられて初級者に負けるのであれば、それは上級者側の準備不足と言ってもよく、普通の上級者であれば「一応必勝ではあるけども初級者にとって実戦で並べるのが難しい形」というのをいくつかストックしてあるものです。
 だから必勝定石を使うからといって初級者が簡単に上級者に常勝できるものでもありません。上級者の技量と懐の深さを信じて、最初のうちは、遠慮なく必勝定石を使っても良いでしょう。
 ただし格上相手への黒番での勝率が体感7割を超えてきたら、流石に必勝定石からは卒業しましょう。上の方でも書きましたが。貴方自身の伸びも完全に止まってしまいます。

 ……とまぁ、偉そうに知った風なことを長々と書き立ててきましたが、あくまで私は『将棋クエスト』で遊ぶついでにちょっと『五目クエスト』に触れて興味を持っただけの素人で、ここまでに書いたアレコレは将棋というゲームとの類推だったり、ネットで調べた連珠関係の覚え書きなどを参考に、いろいろな想像力で膨らませて綴ったものです。
 ゆえに実際の上級者からみて的外れな物言いが多数含まれているリスクがあることをご承知ください。


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