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いつか観た映画・『天間荘の三姉妹』(北村龍平監督、2022年)

当時4歳だった娘と2人で『天間荘の三姉妹』を観に行ったのは、若い友人にのんさん主演の映画『さかなのこ』(2022年)を薦められて、娘と二人で観に行ったことがきっかけである。この映画がきっかけで、娘はのんさんのファンになった。
私はといえば、のんさんのファンであることはもちろんだが、『さかなのこ』が、私が大好きな映画『南極料理人』の沖田修一監督の作品であることで俄然興味を持ち、さらに劇伴音楽がこれまた私の大好きな「パスカルズ」だということで、観ないという選択はあり得なかったわけである。そして期待通りの面白さだった。

で、今回取り上げるのは『さかなのこ』ではなく、『さかなのこ』に引き続きのんさんが主演し、同じ2022年に公開された『天間荘の三姉妹』(北村龍平監督)である。これも娘と2人で観に行ったが、上映時間は2時間30分。『さかなのこ』の2時間19分をさらに上回る上映時間なので、娘の集中力が途切れないか心配であった。実際、2時間ほど経った頃に「パパ、おしっこ!」と言ってきたが、エンドクレジットまで我慢してもらった。
それでもこの映画を選んだのは、『さかなのこ』に主演していたのんさんが出演していることもさることながら、人間関係の設定が、娘が好きな是枝裕和監督の「海街diary」と同じような感じに思えたからである。娘の入り込みやすい映画ではないかとふんだのである。娘がどれくらい内容を理解したかはわからないが、最後まで飽きずに観てはいたことはたしかである。
なんの予備知識も入れずに見始めると、なるほど、そういうことかと、だんだん状況が飲み込めてくる。大人がそう思うくらいだから、ましてや4歳の娘には難解に思えたはずである。観た後で、どんな内容の映画だった?と聞くと、その内容を説明できなかった。そりゃそうだわな。
私の個人的感想を言うと、最初の導入こそ、是枝裕和監督の「海街diary」の設定を思わせるが、内容的には、大林宣彦監督の「あした」「異人たちとの夏」と、構造がほぼ同じである。とくに「あした」を思い起こさずにはいられなかった。

もうひとつ、最後の場面で家族写真を撮るというシーンがあるのだが、そこで家族全員がカメラに向かって見せるハンドサインは、ピースサインではなく、晩年の大林監督が好んだ「I Love You」のハンドサインだった。楳図かずお先生の漫画『まことちゃん』でいうところの「サバラ」のハンドサインね。
ここまでくると、この映画は、大林宣彦監督作品へのオマージュなのではないか、と妄想を膨らませたくなる。もちろん、製作者側はたぶんそんなことを意識していないと思うけれど。

それにしても、このハンドサインにしつこく注目する人間もなかなかいないのではないだろうか。立派なハンドサインウォッチャーだ。


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