あとで読む・第16回・『現代用語の基礎知識 2024』(自由国民社、2024年1月1日)

数年前、久しぶりに『現代用語の基礎知識』を手に取って、あれ?こんなに薄かったっけ?と驚いた。聞くところによると、2020年に大幅なリニューアルがなされ、それまで1000ページ以上あったものが、300ページていどになったという。だいぶ場所をとらなくなったことに安堵し、この時期に店頭に並んでいると、つい買ってしまうようになった。

高校生とか大学生くらいのころ、ちょっと背伸びして1000ページ以上に及ぶ『現代用語の基礎知識』をよく買っていた。高校生になると「現代社会」とか「政治経済」といった授業があったことも関係していたと思う。この本を買うと、それだけで現代用語の基礎知識が身についた気になり、それこそ中身はほとんど読まずに翌年の刊行の時期を迎えた。「積ん読」の元祖である。当時はあの分厚さに痺れたのだろう。

20代以降、この本を手に取る機会はほとんどなくなった。だから1000ページにおよぶ本だったものをどのようにして300ページていどの本に圧縮したのか、その変化の過程はよくわからない。ただ、歴史研究を職業とし始めたころに、この本の中に日本史の用語の説明がけっこうあることに気づき、まるで受験の時に使った『日本史用語集』みたいだなと思った記憶がある。スリム化された後の本に日本史の用語がすっかり消えているのは正解である。その代わり、2023年に使われることの多かった言葉や概念についてそれにふさわしい執筆者の布陣を敷いていて、「適材適所」というのはこういうことをいうのだぞ、政治家諸君!と思わず言いたくなる。おかげでかなり読みやすくなった。いまさら他人に聞けない時事用語を学ぶにも十分なサイズである。

ただ、いつも戸惑うのは、この本を読む時期である。奥付の刊行日は「2024年1月1日」とあるから2024年になってから読むべきなのか?それとも実際に発売された2023年11月のうちから読んでしまった方がよいのか?おそらくいまから読み始め、次の『~基礎知識』が発売されるまで1年間かけて読むのが正解なのかもしれない。

もう一つ気になるのは、「現代用語の基礎知識選・ユーキャン新語・流行語大賞」である。たしか能町みね子さんが、年間大賞はプロ野球界で使われた言葉が多いことを指摘されていて、たしかにここ数年はその傾向がうかがえる。プロ野球ファンではない私にとってはまことに疑問の残る選定である。しかしその傾向からすると、いまの私(11月24日時点)の予想では、大賞は「アレ」か、「ペッパーミル・パフォーマンス」のどちらかではないかと踏んでいる。阪神タイガースの岡田監督、あるいはラーズ・ヌートバー選手が表彰状を受け取る姿が目に浮かぶ。なかなかのフォトジェニックではないか。


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