展示瞥見・「吉田初三郎の世界」(府中市美術館、2024年)

朝から天候は雨模様だったが、どうやら午後から止んできたみたいなので、小1の娘を連れて、娘がお気に入りの「府中の森公園 にじいろ広場」に行った。天気のいい休日は小さい子ども連れた家族でごった返すのだが、いちにち雨予報の日だったせいか、遊んでいる子どもはほとんどおらず、遊具も並ばずに利用することができた。
ふと見ると、にじいろ広場に隣接する府中市美術館で「吉田初三郎の世界」展が会期中だった。そうだ、この企画展を観に行きたいと思っていたのだと思い出した。考えてみれば7月7日(日)の会期末まで、見るとしたら今日(6月23日)しかないと思い、遊びに夢中の娘をなんとか美術館に誘うことに成功した。
吉田初三郎(1884~1955)は、私でも知っている鳥瞰図の画家である。おもに大正期から戦前期にかけて活躍した。いちどその作品群を見てみたいと思っていたが、自分の実家がある町で開催されることを知り、タイミングをみはからって見に行こうと思っていたのだ。そしてそのタイミングが今日(6月23日(日))に訪れた。
吉田初三郎は各地の観光ガイドブックにカラーで描いた鳥瞰図を載せている。航空写真などの情報がなかった時代に、これだけの想像力をもって各地の鳥瞰図を描いたのは驚嘆に値する。媒体の多くが観光ガイドだけあって、鳥瞰図には、当時の鉄道の路線図も強調されており、その点もマニアにはたまらないだろうなと推測させる。
さて、問題は小1の娘である。たしかにカラーの鳥瞰図じたいは子どもにとっても目をひくものだが、当然ながら娘の行ったことがない場所を描いているのがほとんどである。これを説明するのが難しい。なんとか飽きさせないで楽しんで見てもらう方法はないものか。
考えた挙げ句、絵の中の富士山を探すというゲームを考えた。吉田初三郎の鳥瞰図には富士山を描いたものが非常に多いことに気づいた。その点は展示場でも「初三郎の鳥瞰図作品には、その多くに富士山が描かれている。実際に富士を目にすることができるエリアから遠く離れた場所を描いた作品においても、その姿はたとえ小さくともどこかに描きこまれている」と解説されている。私は娘とひとつひとつ作品を見ながら、「どこに富士山があるかな?」と問いかけ、娘もそれを探すのに夢中になった。もちろん美術作品の鑑賞の仕方としては邪道だが、それを探すことで結果的に作品と向き合えるのだとしたら、連れてきた甲斐があったというべきである。鳥瞰図の多くに富士山を書き込んでくれたことに感謝している。そして吉田初三郎の鳥瞰図を利用して、一人一枚の限定で無料配布されている「京王沿線すごろく」も、子どもの遊び心をくすぐる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?