獣医病理学 まとめ 

細胞死

①壊死;ネクローシスと ②アポトーシス に分けられる。
アポトーシスは組織内で散在的であり、ネクローシスは組織内で一斉に。アポトーシスは短時間で、ネクローシスは長時間で漸次的。アポトーシスで細胞は縮小し、ネクローシスでは膨化。

壊死(ネクローシス)は細胞壊死と組織壊死に分けられる。
組織壊死はさらに ③凝固壊死 coagulation necrosis と ④液化壊死 liquefactive necrosis に分けられる。

① 
蠟様変性 waxy degeneration は壊死の一種。筋細胞質の好酸性化、横紋の消失、筋繊維の断裂をともなう。


アポトーシスでは核の濃縮断片化によりアポトーシス小体(細胞質が硝子化したやつ?)。
カスパーゼによるタンパク分解と、エンドヌクレアーゼによる核酸の分解
タネルTunel法により、アポトーシスで断片化したDNAの切断末端を青く染色できる。
アポトーシスの機能は、i.発生、形態・組織形成。Müller管退縮、指・網膜の形成など。ii.ホメオスタシス、iii.生体防御;毒薬物反応、紫外線、虚血への対応、前癌細胞除去など。

凝固壊死 coagulation necrosisは細胞が水分を失うことで起こる。心臓組織が白く見える←分界 demarcation 煮肉様 他に結核による乾酪壊死→ラングハンス型巨細胞(結核結節)
ゲル化。犬ジステンパーウイルスによって脾臓の濾胞。犬パルボウイルスによって脾臓の濾胞。
凝固壊死は自己融解をともなうことがある。

液化壊死 liquefactive necrosisは加水分解酵素による蛋白質の融解による。
脂肪組織が多くタンパク質に乏しいところに多い。神経とか。
・脳組織の虚血性壊死で壊れた細胞をマクロファージが貪食。マクロファージ内で加水分解?⇒泡沫状マクロファージが集積し脳軟化 encephalomalacia。
好中球の浸潤によって膿瘍・・・強力な蛋白質分解作用があるから。経過が長いと被包化。

壊疽 gangrene

壊死巣に腐生性細菌が二次感染。
脂肪壊死(脂肪細胞の壊死)では中性脂肪がリパーゼによりグリセリンと脂肪酸になる。脂肪酸にリン酸カルシウムが付着して石灰化する。…肥育牛の原因不明脂肪壊死症。

壊死の転帰

①単にマクロファージの貪食を受ける。
瘢痕化 scar formation(器質化) 壊死したところに肉芽組織線維芽細胞毛細血管)が入り込む。線維性組織(線維細胞や膠原線維)により置換→瘢痕組織といわれる。
壊死巣は正常組織から炎症によって!分界 demarcation, 被包化 encapsulationされる。
分界は壊死巣が大きいときに起こる。小さいと貪食を受ける。

死後変化 postmortem changesとして自己融解により逸脱酵素が生じる。


ネクローシスによるDNAの断片化は様々なサイズ→ スメア状に
ミトコンドリアが早期に崩壊するため細胞膜のイオン輸送系が崩れ、細胞内に水が流入して膨化。


カルシウムイオン流入

細胞内濃度はミトコンドリア、小胞体と比べて1/1000

上昇するとホスホリパーゼ、プロテアーゼ活性化で膜障害、エンドヌクレアーゼ活性化で核障害、ATPase活性化→アポトーシス

カスパーゼ経路活性化、ミトコンドリア膜透過性亢進→ATP↓
→アポトーシス

→細胞の縮小と核の断片化

細胞障害の形態的変化

混濁腫脹 (顆粒変性)

cloudy swelling
ミトコンドリアは好酸性顆粒として観察。

水腫変性 (空砲変性)

hydropic degeneration 細胞全体が膨化
vacuolar degeneration 小胞体など細胞小器官に移動し大小の空砲
→細胞膜の浸透圧異常による ポックスウイルスで風船状 プリオンでは神経細胞に

硝子滴変性


エオジン好性(好酸性)hyaline droplet degeneration
好酸性均質無構造を示す物質=ヒアリン
①細胞外タンパク質の流入 糸球体腎炎やアミロイド沈着で原尿中に大量のタンパク質→尿細管上皮に再吸収 硝子滴
②分泌細胞のタンパク質合成亢進
粗面小胞体が免疫グロブリンを蓄える。慢性持続性炎症など。ラッセル小体とも ラッセル小体が連なったもの→ グレープ細胞
③タンパク質の高次元立体構造異常
ALSにおけるブニナ小体

フィブリノイド変性


フィブリン・フィブリノーゲン(血漿タンパク質由来)や膠原繊維の変性、免疫グロブリンの沈着 
多発性動脈炎など

その他

病的角化
(角質変性)
角質層が増える過角化hyperkeratosisや
消えるべき核が残存してしまう錯角化parakeratosis
亜鉛やビタミンAの欠如による。

粘液変性
ムコ蛋白質・・・上皮性粘液
ムコ多糖類・・・間葉性粘液
甲状腺機能低下症に随伴する皮下組織の粘液水腫 myxedema
腺癌で見られる。印環細胞 ⇒糖だからPASで赤紫、アルシアンブルーで青

硝子化(硝子変性)

主要成分は膠原繊維

硝子体・・・肝細胞の細胞質内

アミノ酸・蛋白質代謝異常

アミノ酸代謝異常


分岐鎖アミノ酸およびαケト酸が蓄積しケトアシドーシス→ フェニルケトン尿症 チロシン血症 メープルシロップ尿症


異常蛋白質の沈着症


立体構造が変化し不溶性の凝集物を形成
→アルツハイマーのTau蛋白質 パーキンソン病のレビー小体

アミロイド・・・特定の蛋白質に由来しない。前駆蛋白質から誘導された一群の病態繊維。細繊維 免疫グロブリンL鎖原発性 多発性骨髄腫)とか血清アミロイド続発性 感染症の持続とか)、疾患アミロイド(プリオン)とか
沈着部位はディッセ腔など間質すなわち細胞外
線維性蛋白質不溶性10nm 
エオジン淡染 Congoレッドで橙赤 偏光(複屈折性)でエメラルドグリーン
白脾髄を中心にサゴ脾 赤脾髄を中心にハム脾
分子レベルでは代謝障害だが臓器破裂へ←猫の肝臓。猫の腎臓で間質(毛細血管?)に。髄質も皮質も滞って腎不全。サルの膵臓で糖尿病
アルツハイマー、結核、関節リュウマチ、プリオン病とかでアミロイドが沈着する。老犬でβアミロイド蛋白質が沈着

糖代謝異常

PASで赤染→ジアスターゼ消化試験後、PAS陰性
インスリノーマで低血糖(←インスリンが増えすぎる?)

Ⅰ型糖尿病 自己免疫疾患→膵島β細胞
Ⅱ型糖尿病 インスリン抵抗性 
脂肪酸からエネルギーを調達する経路が働き、副産物としてケトン体。→ケトアシドーシス
糖原蓄積病で肝細胞は腫大 

ムコ多糖症
→顔面骨の形成異常など
ムコ多糖は繊維芽細胞、平滑筋細胞、骨細胞、軟骨細胞などで産生。ウロン酸とアミノ糖の繰り返しからなる長鎖の多糖。


脂肪代謝異常

脂肪変性
飢餓時に貯蔵脂肪から脂質の動員→肝細胞の脂肪変性
中性脂肪の蓄積 凍結切片を使用
Sudan Black B, Sudan III, Oil Red O
脂肪変性ではVery Low Density Lipoproteinの放出障害が起こる。
粥状動脈硬化症
→脂質・コレステロールが沈着し泡沫状細胞が線維芽細胞増殖因子を産生

脂質蓄積症
リソソームの脂質代謝酵素の遺伝的欠損が原因となることが多い。←アシュケナージに多いTay-Sachs病とか。

尿酸代謝異常(痛風)

プリンの代謝における最終産物→ 尿酸:難溶性
哺乳類は可溶性の尿素を排出するが人は尿酸オキシダーゼを消失したため尿酸。虫・鳥類でも痛風。
針状結晶
尿酸(異物)に対してマクロファージが痛風結節を作っている


顆粒変性は細胞質内液の流入
空砲変性は細胞質外液の流入 による

色素代謝障害

ヘモグロビンが網内系細胞に破壊されると、鉄は遊離してフェリチンおよびヘモジデリンの形で網内系細胞、肝細胞に蓄えられる。ポルフィリンはビリルビンとして肝臓から排泄。

細胞膜内の不飽和脂肪酸の過酸化→リポフスチン
→細胞膜成分のフリーラジカルによる傷害の指標としての意義がある。
リポフスチンはオートファギー
セロイドはヘテロファギー による。

上皮小体とビタミンDによって血中カルシウム濃度↑ 
腎臓からの再吸収がある。慢性腎不全によって低カルシウム血症が持続しても二次的に上皮小体の過形成がおこり血中カルシウム濃度は上がる。

銅は酵素の活性の発現のために必須。
セルロプラスミンは銅と結合していて、この複合体が鉄を酸化する。Fe2+→Fe3+
銅が欠乏すると血中セルロプラスミン濃度が下がり鉄移動が阻害。
銅の欠乏で幼獣で神経症状。enzootic ataxia

胚細胞や幹細胞ではテロメアーゼが発現していてテロメアの長さを回復するが、体細胞では発現していない。加齢で最終的に細胞分裂が停止。

細胞死

ネクローシス DAMPs damage-associated molecular pattersがToll like receptorにより認知。→自然免疫系を活性。

細胞の適応と分化異常

萎縮atrophyの反対は二つあり
容量が大きくなる肥大 hypertrophy 
数が大きくなる過形成 hyperplasia 

単純萎縮(小さくなる)を担うのはオートファギーのほかユビキチン・プロテオソーム系。数的萎縮はアポトーシスによる。
萎縮は適応現象のひとつ。萎縮により形成不全が起こるのはhypoplasia

その他

化生
腺上皮が扁平上皮に変わるなど、ほかの系統の組織になること。乳腺癌、肺腺癌など癌化でよくある。

プラスミン
プラスミノーゲンになって血栓を融解

胚の発生、炎症細胞の炎症局所への移動、がん細胞の浸潤などはプロテアーゼが細胞外マトリックスを分解することで可能に。

マクロファージは組織マクロファージと滲出マクロファージに分けられ、後者はさらにM1とM2に。M2から産生されるTGF-βが筋線維芽細胞の形成に関わる。難治性の皮膚疾患、ケロイドや皮膚硬化症などに関わる。

循環器

うっ滞した静脈血には還元ヘモグロビンが多いため暗赤色に。→チアノーゼ。静脈が詰まった状態。congestion, venous hyperemia
肝硬変→側副路ができ食道静脈瘤などできる。

逆に血が入らない→虚血 ischemia

内皮細胞の表面にはヘパリン様因子が存在し陰性荷電で内皮細胞は血小板と結合せず血小板凝集を阻止。

塞栓症 embolism
猫の心筋症では左心房に生じた血栓が外腸骨動脈分岐部にまたがって見られ、急性後躯麻痺の原因に。
腫瘍細胞や骨髄片が塞栓になることが→腫瘍塞栓症 tumor embolism 転移 metastasis

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