AoE4世界トッププレイヤーbeastyqtの解説をまとめる(Part2)

はじめに

細かいことは置いといてコンテンツを見たいと思うので早速始める。
本記事は、Part1の続きになっているため、Part1を予め見ていることを前提とする。
Part1を見ていない人はそちらを見てから戻ってきて欲しい。

この動画のSAS側リプレイを解説していく。

beasty側のリプレイはPart1にある。


SASの試合解説

暗黒~領主進化まで 21:00~


騎兵学校で進化しているが、この進化は以下の2点で改善の余地がある。

  • 騎兵学校を建築する場所

  • 騎兵学校を建築する人数


前者について、フランスは城の影響力で騎兵小屋と弓小屋から生産するユニットのコストが安くなる。
これは騎兵学校も例外ではない。
従って、城主進化後に城を置いた時、騎兵学校を含むなるべく多くの小屋が影響範囲内に入るように配置しなければならないが、SASの配置は城を置くときに邪魔になる障害物が多すぎる。

後者について、農民5人での進化は明確に悪いとまでは言えないものの、一般的には4人の方がある程度進化を早くしつつ、領主に向け資源を集める農民も確保しておくという意味でベターである。

このビルドでは進化中に3人で金を掘っているが、経済テクを早期に取って経済を拡大するという点で、4人の方が望ましい。

また、暗黒進化中には粉ひき所を建てて手押し車を研究しておく方がベターである。

領主前半 22:30~

まずハラスポイントを探るために相手の楼門位置を確認しておく。
この動画では楼門は初期中心の後ろで苺、石、金をカバーしており、ポジションとしては非常に良い。

beastyのリプレイと同じく、優秀なプレイヤーの取る選択肢は概ね常に最適解に近く、その前提に従って行動を類推出来る。(今回取り挙げているプレイヤーはセミプロレベルなので特に)
中国に関していえば、楼門が建てられた位置から推察出来ることは多い。
楼門を前において鹿や金を防御しておらず、むしろ後ろの石を守っていることから、この中国は2~TCにいくことが予想される。

前回解説したように、基本的には2~TCに行って内政を拡大するか、あるいは全力で攻めるかのどちらかの選択肢を取る必要がある。(厳密には、神聖ローマで即城主に行くという選択肢等もあるが、ここでは割愛する)

SASはこのリプレイの中で、1TCで攻めつつも少しずつ2TC建築に必要な資源を集めるという方向に向かっているが、今回の試合ではこれが敗着になる。

24:45~ あたりで、最初に生産された騎士により石が掘られていないことを確認した後、初期中心と楼門の間に攻撃しに行っているが、これは双方の射程に入るため大きくダメージを受け、HPを半分まで減らしてしまう。

これは致命的なミスである。
このビルドでは5人の農民を使い、経済を犠牲にして領主進化を急いでいる。このようなケースでは、最初に出た騎士は何らかの成果を勝ち取る必要が必ずあり、そうでなければ領主進化を急いだ意味が全くなくなってしまう。

二体目の騎士も進路の途中で止まっており攻撃が出来ておらず、更に町の人が見えているわけでもないのに中国の町の中心近くに近づいて無用なダメージを受けている。

26:35~
この時点で、SASと対戦相手を比較する。
SASは

  • 手押し含め経済テクを入れておらず

  • 攻撃に全振りし成功しているわけでもなければ

  • 2TCに行っているわけでもない

と、若干迷走気味である。
一方そのころ対戦相手は

  • 宋王朝に入り

  • 楼門と初期中心に守られ農民は安全で

  • 騎士に対抗して槍兵を作成しつつある

(そして更に付け加えると)木農民が多いことから、これから2TCする、という明確な目標を持っている点が対照的である。

27:25~
SASは騎士の生産を続けているが、一方で生産した騎士を攻撃に送るわけではなく、ただ周辺をうろついているだけにしてしまっている。
騎士は一体240と非常に高価なユニットで、この時点で生産している3体に使った720というコストは、町の中心増築に使えたはずである。(中心は木400 + 石350 = 750)
騎士を生産したにもかかわらず攻撃しないのであれば、中心を追加する方が圧倒的に良い。

また、斥候もちょっとよく分からない位置を散歩していて中国が何をやっているかを確認出来ておらず、有効な偵察が出来ていない。

望むべくは相手が石近くに楼門を建てていることから、石近くに兵士を回して2TC建設を妨害することであったが、それは出来ておらず、待機している騎士は槍兵の攻撃を受けている始末である。

領主中後半 迷走の始まり 28:30~

28:30~
先程言っていた迷走しているという話がここから本格的になる。
ここで、例えば鍛冶屋や弓小屋を増設して本格的に攻撃態勢に入るというのであれば、まだ理解は出来る。
しかしながら、彼はここで石を掘り始め、これが重大な敗着になる。
ここでの問題は、彼はこれまで肉や金農民を増やして軍を生産してきたが、ここで町の中心を建て始めるということは、先に作った兵士に対する増援やアップグレードが無くなるということになる。

この段階で既に中国は宋王朝の効果で農民のリードが発生しており、一方で石は3人しか振っておらず町の中心の建築も遅れてしまうため、試合が進むにつれリードが拡大していく展開になる。

要するに彼は攻撃するのか内政を拡大するのかがどっちつかずなのである。
攻撃で成果を上げられないのなら最初から内政を拡大する。内政を拡大しないのであれば攻撃して成果を上げるかのどちらかにコミットすべきであって、攻撃で成果を上げられていないのに内政にちょこっと欲を出すというのは、今回のように振り切った相手に対しては不利になる。

30:00 ~
ここでSASは前方から攻撃を行い町の人を一人殺す。これは良い。
しかし攻撃したあとまた兵士を遊ばせており、兵士を出した意味を無くしてしまっている。後方の騎士もずっと待機したままだ。

30:50 ~
ここで再度攻撃を開始しているが、せっかく諸葛が前に出てきているのに騎士が突撃を行わず撤退しており、攻撃のチャンスを逃している。
更に言えば、前方で攻撃しているときは後方が待機し、後方が攻撃に向かっているときは前方が待機しているため、敵は一方だけに集中しておけばよく、防衛を簡単にさせている点が問題である。

31:50 ~
ここでSASは自陣の苺を採集しているが、状況を考えればこれは悪手であり、本来は相手陣の猪や鹿を取った方が一般にベターだ。何故か?
以下の理由からである。

  • マップコントロールを完全に取れている

  • このマッチアップでは、中国は自陣に籠る傾向がある

  • 中国の斥候を殺しており、相手が視界を取れていないことが予想されるため、相手陣の資源を採集していることに気付かれにくい

  • 苺はそもそも資源採集効率が全資源中最低であり、更に彼は鹿と猪にしか効果がない生存術を既に取っている。

32:50 ~
SASは金300超と無用な資源が貯まっている。経済テクも入れておらず、経済的なリードが少しずつ拡大していく。
そして上で説明した苺を取っているという点と被るが、彼はここで食糧テクを取ってしまう。
彼の苺農民はたった5人しか居ない。イノシシは8人である。先程述べたように、この状況下では鹿や猪が取り放題なので、ここで貴重な金を払って5人の苺採集速度を加速させる食糧テクを取るのは極めて非効率である。彼は生存術を既に取っているのだ。

34:55 ~
猪農民の近くに塔を建てているが、そもそも相手はマップコントロールを取れておらず、作っているのも槍と諸葛で歩兵なため、攻撃される可能性は低い。
不要である可能性が高い。

36:20 ~
ここは個人的に結構重要だと思うのだが、SASが後方に騎士を送り攻撃を試みているタイミングで、大量の槍兵が守りに行っているのが見える。
つまり、今前方に相手の兵士は居ないか、居ても限りなく少ないはずである。
ここで前方と後方両面から攻撃を行えば、高い確率で成果を得ることが出来るだろう。
或いは、対戦相手は斥候が居ないので後方の騎士を槍兵の視界外に移動させ、前方を攻撃すれば槍兵は騎士が攻撃してこないと判断して後方の守りを放棄し、前方を守りに行く可能性がある。
そのタイミングまで待って、改めてがら空きになった後方を攻撃するという選択肢も良い。

これはbeastyは別に説明していないのだが、ここで重要なのは相手の状況を考えることである。
相手を攻撃すれば、防衛のために兵士を動かす。両面から攻撃していることで、"こっちに兵士が居るからこっちは攻撃できるな"という判断が出来る。
今回の場合はこちらに斥候が居るが相手は居ないため、実際に攻撃をしなくても視界差を利用して一方的に情報を取ることが出来る。
フランスを使う上で、このへんはかなり強い考え方だと思うので是非参考にして欲しい。もちろん、試合慣れと相応のAPMが必要なので、初心者がこれを実践するのはほぼ不可能だと思う。

40:15~
ここで、beastyが前回の試合の終盤で相手陣を抑えるように張っていた柵をSASも張っている。
これは完全な失策である。
彼は2TCを超えて更に3TCを追加しようとしているが、時は既に遅く、農民数は大きく負けており、また兵量差も五分ないしは負けている。

このような状況下で相手を抑え込もうとする柵は何の意味もない。敵はシンプルに柵を破壊し攻撃してくるだけだ。
柵は決して安くなく、無意味な柵に資源を割くことで、元々あったリードを自分で更に大きくしているだけだ。

この試合でいえば、彼は2TCあるいは3TCに向かい、領主で全力攻撃するのが良かった。
以前言ったようにこのマッチアップではフランスがマップコントロールを取れる可能性が高い。そのためSASの野良資源へのアクセスは豊富である一方、対戦相手の野良資源へのアクセスは限定的である。
仮に戦いで劇的な勝利をおさめずイーブンに終わったとしても、相手の野良資源の方が先に尽きて畑移行を迫られる(=軍生産が止まる)ため、勝利出来る。

城主以降 43:05~

43:05 ~
SASは城主進化で王立研究所を選択しているが、この状況下では一般に誤りである。
王立研究所は城主で全力を出し相手を倒すようなケースで有効であるためだ。
この状況下ではそもそも軍量で大きく劣っており(相手80に対しこちらは39)、王家の血統などの研究を入れたとしてもそもそも戦いに勝利できない。
更に言えば、彼は経済が細すぎて王立研究所のテクを入れる金すらなく、ハリボテと化してしまっている。

この状況下では既に大きな差がついているが、仮にここから何かするとしたら、組合所を建て、試合を遅延させ、なんとか最終的に組合所の資源で挽回することぐらいしかないだろう。
聖遺物を確保するのも良い手だが、この状況下ではそれすら厳しい。

43:48 ~
このあたりから内政が拡大した中国による反撃が開始され、問題が顕在化していく。

そもそも中国はこの段階で既に倍の軍隊を有しており、SASはこれを打開できない。
中国経済は完全に畑に移行したわけではないが、まぁまぁの畑移行に成功しており、肉資源の心配は薄い。
一方でSASは畑移行を全く行っておらず、肉を野良資源に頼っている。
既に軍が負けている状態でこの差は致命的で、野良の肉資源が尽きた瞬間、フランスは終わりである。(まぁもう既に終わっているのだが)

ここから更に悪いことに、中国の軍隊が強大になり攻めに回りつつあることでフランスはマップコントロールを徐々に失いつつあり、頼みの綱である野良資源へのアクセスすら失いつつある。

ことここに至ってしまうと、最早出来ることはほぼない。
中国の軍隊は強大であり、城主なので質も良く、中心にダイブして内政を破壊出来るし実際にそうしている。SASの軍は壊滅し、中国軍が内政を妨害し続けているため、最早挽回は完全に不可能となった。事実上の試合終了であり、beastyによるリプレイの解説はここで終わる。

45:35 ~
何故最終的にここまで差が出来たのか?
本動画で説明してきた内容は、一つ一つは小さなことかもしれないが、それらが積み重なり、ここまでの巨大な差になった。
この試合では例えば最初に前方の騎士と後方の騎士でうまくハラス出来ていれば、あの状況なら6-8人程度農民を殺せていた可能性があり、農民6-8人をあのタイミングで殺すというのはほぼggである。
一方で、beastyの試合では実際にはそこまで農民を殺してはおらず、暇農民を生み出していただけである。
しかし、多くの暇農民を繰り返し生み出すということは、それが採集していたはずの資源を奪うという意味で、一つ一つは小さいながらも最終的には大きな差となった。
例えば農民6-8人を殺せていれば、更に大きな差となっていただろう。

終わりの補足

46:20あたりからは、何かを学習する際に心がけるべき内容として一般化出来る内容であり、AoE4に限った話ではないため割愛する。

ここからは完全に私の意見というか補足である。beastyは関係がないので、不要な人は読み飛ばしてほしい。

この動画を見て学ぶにあたり、2点、注意してほしいことがある。

  1. 解説されているこれが良い、悪い、はあくまでセオリーであり、常にそれが正解なわけではないということ

  2. 動画で「経済的なリードがある」と言っているが、これは最終的な優位を意味しないということ

1について。これはあらゆる解説動画に言えることである。セオリーとしてこれが良い、これが悪い、というのは当然存在する。しかし、あなたの相手は人間であり、予測不可能なことをしてくる可能性がもちろんある。時にはセオリー通りにいかないこともある。
また、ここで解説されている良い点、悪い点というはセミプロの試合に対しての指摘であることに注意してほしい。
例えばイノシシに塔を建てる資源を節約して軍生産に突っ込むよりも、素直に塔を建てた方がベターなケースはもちろんある。
相手を抑え込むように柵を作ることも、試合慣れしていない相手であればそれで縮こまってしまう可能性もある。
全てはケースバイケースである。

2について。採集し、積みあがった資源はあくまで机上のリードであって、その資源を使い、軍を生産して相手を攻撃する、城を重要位置に建設するなど、盤面上の実際の優位に転換しないと全く意味がないということである。
例えばあなたが相手の肉農民を8人殺し、5分が経過して戦いになったとしよう。
相手は資源を全て使い切って軍隊を生産しているが、あなたは肉資源を2000余らせているとする。
ラフな計算として、農民は1分あたりにおよそ40の資源を採集すると仮定する。すなわち、経済的なリードは40 * 8 * 5 = 1600となるが、相手は資源を使い切っているのに対し、あなたは2000余らせているので、2000 - 1600 = 400も相手の軍が多いことになる。

結果的に、あなたは農民を8人も殺し、圧倒的優位を確保してなお、それでも敗北する。

資源を余らせることが一般に良くないとされているのはまさしくここにある。

次回について

リクエストがあれば受け付けますが、次回はこれをやろうと思っています。

これはフランスのガイドであるが、単なるガイドではなく、多くの人がぼんやりと判断している(であろう)ことについて、明確な理由と共にノーを突きつけている。
単なるガイドではない非常に学びが多い動画であるとして評価が高い。

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