AoE4世界トッププレイヤーbeastyqtの解説をまとめる(Part1)
はじめに
Age of Empires 4界隈に、beastyqtという配信者兼プロプレイヤーが居る。
https://www.youtube.com/@BeastyqtSC2
現在世界トップランクのプレイヤーであり、配信者としても現在Age Of Empires4界隈では世界トップと言って良い。
彼はTwitch配信を通して視聴者のリクエストに応じ、Age of Empires 4の様々な点について解説を行っており、そのサマリがYoutubeに定期的にアップロードされている。(彼のYoutube動画は基本的にTwitchの切り抜きである)
これらの解説は示唆に富んだものが多く、時折Redditのスレッドで現れる「この文明/戦術は強すぎてクソ」といった言説を、配信に現れた投稿者の実際のリプレイを見ながら「どこが悪いのか」を指摘しまくってボコボコにする「Is XX OP or does my civ suck? 」というシリーズは非常に人気と評価が高い。
Beastyqtは(当たり前だが)日本語の動画を出しておらず、彼の解説を理解するにはAIによる翻訳を見るか、自分で聞き取るしかない。
彼の英語の発音はかなり聞き取りやすいものの、多くの日本人にとっては難解だと思うので、ここに要点をまとめたものを掲載したいと思う。
最初はビデオに字幕を付けようかと思ったが、(その方が彼が実況で叩く軽口などの雰囲気も伝えられるので)そもそもRTSの解説を字幕を見ながら理解することは可能なのか?という点と、実際に少し付けてみたところ、彼は話の順番がごちゃごちゃであったり、解説の間に「それ今する話?」というような話を付け加えてしまい、字幕を見ながら解説を理解するのが不可能だと感じたので、それは止め、noteとしてまとめることにした。
今回取り扱う動画
記念すべき初回の動画は「Difference Between Conqueror 3 and a Pro Player」である。そこそこ昔(10か月ほど前)だが、非常に良い動画である。
は?新文明のビルド動画出せや!って思うかもしれないけど、個人的にこの動画好きなので。。。
私が認識している範囲でBeastyqtが、1つのリプレイ全体を通して自分の考えていること、何故これをやっているかといった点を俯瞰的に、また深く掘り下げて解説した初の動画であり、当時初心者の私はこれを見て大変な衝撃を受けた。
この動画を選んだ理由だが、本動画では大枠としてフランスを使ってイングランドや中国といったディフェンシブな文明に対してどのような試合運びをするか、という解説をしているが、そもそもの考え方として他の文明を使う際にも応用が可能だと感じたのでこれをチョイスしている。
解説にあたっての注意
まず、本動画ではbeatyqtのプレイと、SASという征服者3のリプレイを比較し、その違いについて解説しており、細かいビルドオーダーについては触れていない点には注意されたい。
次に、動画全体を通して文脈でみた場合、明らかにこういう意図で言っていると判断出来るのだが明確には言及していない場合、僅かに補足として足している部分がある。
また、解説全てをnoteにまとめると膨大な量になるため、細かい点や大きく影響しないであろうと判断した部分についてカットしている点についてはあらかじめ了承してほしい。
想定読者
ゴールド前半 ~ ダイヤ前半あたりを想定読者として設定する。
基本的なビルドは知っていて、ある程度試合の流れは分かっているし最低限のAPMはあるのだが、それ以上の何かが欲しい、というような方を想定している。
もちろん人によって状況は違うので、このランクに居ないから読むべきではない、ということを言っているわけではない。
想定読者が幅広いのは解説されている内容のレベルも幅広いからであって、人によっては当たり前体操な内容も書かれている点はご容赦願いたい。
Beastyqtの試合(良試合)
暗黒~領主に入るまで(相手が2TCするかどうかの確認、対応方針決定) 02:10~
領主に入るかどうかというタイミングで、相手が石を掘っているかどうかを確認する。(2:45~)
これは非常に重要で、石を掘っている、ということは相手が2~TCのビルドに入っていることを指す。
ここで、対戦相手は内政を拡大する方針に入っていることから、取りうる判断は二つに分かれる。
つまり、
1TCで相手が内政拡大を完了する前に倒してしまう
こちらも2~TCにして内政を拡大する
の2つである。
相手がTCを増やして内政を拡大しているのに、こちらは1TCで内政を拡大せず、ダメージを与えられないまま相手が城主に入った場合、基本的には内政差からくる軍量差でこちらは敗北する。
イングランドは文明ボーナスで城塞網や中心の矢が2倍になる防御に優れた文明であり、同じように中国も楼門の存在で防御に優れているため、いずれも領主の時代で落としきるのは一般に困難である。
したがって、相手が石を掘っていることを確認したタイミングで、ハラス向けに騎士を一人作成するだけの金を掘ったのちすぐに中心を増やす体制に移行している。
石を掘ったことを確認したのちも斥候は継続し、相手が軍を生産しているかどうかを確認する。
このマッチアップでは相手は軍を一切生産せず中心を追加しようとしているので、beastyも軍生産を一旦完全にカットし、騎士一人のみをハラス目的で生産して中心の追加に全力を投下している。(04:20~)
フランスVSイングランドというマッチアップでは、中心を同数保持している場合、内政的にはフランスが勝っている。フランスは町の人の生産が早いからだ。
領主最序盤(町の中心建築へのハラスメント) 4:50~
ある程度優れたプレイヤーになると、最適解を選ぶので行動を推測出来る。
これを利用して町の中心を建築しようとしている町の人を攻撃する。
イングランドの場合、町の中心の建築予定地は多くの場合鹿か金の近くになる。(というか大体の文明はそう)
幹アラビアではそれぞれの陣の側に鹿の群れが2群れ湧き、1群れは初期中心の近くに湧く。
偵察により金の近くに町の中心は建築していないことが分かり、4:50~の段階で相手の鹿の群れは確認出来ていないことから、相手初期中心の後ろ側に鹿の群れがあることが推測出来る。
従って、そのあたりに町の中心を建築することが分かる。なのでここに騎士を送る。
本動画では町の中心を建築している町の人を発見し、建築を中断させて更に町の人を一人殺している(06:45~)が、この段階で相手には以下のダメージを与えている。
町の人一人
石堀農民がTC建築予定地まで歩く時間(で採集出来たであろう資源)
町の中心によって守られ、安全に確保出来たであろう資源(鹿、苺、金)
この段階でbeastyは町の人を捕捉しており、相手に軍隊は居ないので騎士によるハラスを防ぐことが出来ない。
従って、町の中心を次善策である金の横に建築することも出来ず、初期中心の射程内で建築可能な、価値の薄いTCを作るしか出来ない。そしてそれすら騎士によって脅かされ、大量の暇農民を作り出して間接的に資源を失っていることにも注目されたい。(07:45~)
なお、本動画ではbeastyは3TCに向かっているが、これは通常可能なことではない点に注意してほしい。
この動画で3TCに向かっている理由は以下に挙げるこの試合特有の理由からである。決して安易に3TCに行ってはいけない。
敵が軍隊を生産していない
町の中心建築妨害が大成功をおさめ、相手に大きなダメージを与えている
相手が肉野良資源を取れず畑移行を始めているため、軍生産が更に遅れることが予想される
TC追加後、領主 10:00~
TCの追加し内政を拡大している間も、騎士によるハラスを継続し、暇農民を作り出して相手の経済を遅らせる。
細かい点だが相手が騎士の行方を知るために斥候を自陣に配置し、こちらの偵察を行えないように出来ていることもこのハラスメントの利点である。
相手のTCが建築されたので、次に確認する点は相手がどれぐらい金を掘っているかどうか、また軍をどのくらい生産しているか、である。(10:15~)
中心を追加したタイミングではbeastyは軍を生産していないが、ハラスしている騎士の視界から相手が軍の生産を始め、反撃し始めていることが分かったので、こちらも軍の生産を始める。槍弓なので、こちらは騎士弓。(10:30~)
反撃が来る方向について言及しているが、これは正直面倒なので割愛する。(11:05~)
簡単に言うと相手の軍が最後に居た位置を確認し、その位置から攻撃可能な範囲を類推することで相手の軍の位置を特定している。
相手の反撃は新規生産軍で対応することとし、相手の金掘りを確認する。
これはつまり、相手が2TCした後軍を大量に生産して領主で攻撃に出てくるか、城主に向かっているかを確認している。
大量の農民で金を掘っていることが確認出来るので、相手は半ば強引に城主に向かっていることが分かる。(11:35~)
相手が城主に向かっている(=軍生産を抑えている)ことが分かるため、こちらも兵生産をカットし、城主に向かう。
城主進化競争をしている間、騎士弓によるハラスメントを行う。
このハラスメントで重要なのは、常にユニットが躍動していることである。
beastyは
最初に騎士でハラスして相手の槍が来る -> 騎士は上に逃げる -> 騎士に槍が釣られているので金を守る軍が減っている -> そこに追加の軍を送ってハラス -> 上に行った騎士を戻して合流させる(13:10~)
というようなことを行っている。
これは正直難しい。十分なAPMとマルチタスクが出来ないと出来ないので、あなたのランクによるがここまでやる必要は通常ない。
城主(12:50~)
この段階でbeastyは以下のことをプランとして建てている
軍編成は騎士弓(騎士 + 射手 + アーバレトリエ)
城を作成してこれらの軍生産コストを下げる
継続的に攻撃して相手の農民を倒す
これと並行して、マップコントロールが取れているので聖遺物を確保したり、相手側の陣地にある苺や鹿を取ることで更に経済リードを広げる。
なお相手陣の資源を取る際は状況に注意が必要である。
この試合では相手がイングランドで畑を既に設置しているので鹿を取る意味が薄く、鹿の側には既に壁を張っておりそこから攻撃する意味が薄いことから、鹿を取っても攻撃されないであろうこと、また生存術を取得しており鹿を取るメリットが大きいことから採集している。(14:55~)
ここでは軍隊を生産して相手を攻撃しながら、聖地を取って聖地勝利も狙うことで、相手に軍事的な勝利のみならず聖地勝利のプレッシャーも与えている。
15:50~あたりで相手陣地の金を取っているが、正直これはbeastyだから状況を的確に判断して出来ることであり、個人的には推奨しない。
簡単に言えばこれを取っている理由は以下のとおりである。
継続したハラスにより相手は自陣に籠っていること、また僻地の金を掘っていることは察知されにくいため攻撃される可能性は低い
農民リードが既にかなりあるので、正直死んでも大した影響はない
仮に攻撃してきたとしても軍事的に勝っているので相手陣に入って殺すだけ
シンプルに言うと「ハイレベルなプレイヤーであり、既にほぼ勝っているから」であって、これをやるリスクをしっかりと理解して適切にケア出来ない人がやるのはお勧めしない。
ヘタすると僻地の金を掘っている金農民を攻撃されていることに気付かず、全員殺されてリードが無くなり逆転負けの可能性すらある。大人しく自陣に近い金を安全に掘っておくのが無難である。
試合決着に向けて
もう既にリードはあるのだが、ハラスは継続する。(16:30~)
フランスの基本的な所作として騎士によるハラスメントを継続的に行い、相手の経済を停滞させるということはほぼ必須なので、ハラスは継続する。
16:55~ で、相手陣地を囲うように柵を張っているが、これは非常に特殊な状況であることに注意が必要である。
これは
マップコントロールを取れている
軍事的に勝っている
ことから、仮に相手軍が入ってきたとしても、相手陣の軍量が減ったことを察知して全軍で本陣に突っ込んで相手を殺せるというリードがあるからこそ出来ることであって、状況判断が出来ないのであれば通常こういうことはするべきではない。(比較した動画でSASが同じことをしているが失敗している)
このタイミングで、beastyのプランとして相手を殺しきって決着をつけるというプランまでは組んでいない。(17:25~)
この段階では殺すことは考えておらず継続的な攻撃を目標にしている。
相手陣近くの森、金鉱が切れそうなので、次に近い金鉱と森林の周囲をハラスのターゲットとして設定している。
18:10~ 付近で試合が決まる事件が発生する。
僻地の金を掘っている農民を殺そうと10人の騎士が攻撃してくるのである。
10人の騎士はArmy Valとしては2400であり、槍や弓なら30人分の兵力になる。かなりデカい。
これだけの兵士が自陣を離れていることを察知したため、先ほど述べたようにがら空きになった相手本陣を攻撃する。
そもそも王家の血統も入っており、シンプルに軍事的に勝っているので、相手本陣の兵士を皆殺しにし、騎士によって相手内政を徹底的に破壊する。
こちらは援軍が途切れないように兵士を生産して継続的に前線に送り続け、相手の内政を徹底的に、継続的に破壊することで最早挽回出来ないレベルにまで相手を至らしめ、試合は決着する。
最後に
見出しを見ればわかると思うがもともとbeastyとSASの試合両方をまとめる予定だった。
しかしあまりにも長すぎた(動画は51:34ある)ので一旦beastyの試合のみをまとめて終わることにする。
投稿者は現時点でダイヤをうろついているぐらいの実力なので、何か指摘があればコメントを歓迎する。
次回投稿について
気まぐれでやっているので次の連載はいつになるかは未定である。
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