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帰り道の色、お家の色。



数日前。
お家の色が変わった。
蛍光灯を変えたわけじゃない。
見事な昼光色だ。
眩しすぎるくらいだからスグに光の加減をする。
それが、何だか暖色のように見えたのはツレが居たからか?
わたしの眼がいよいよなのか。

仕事からの帰り道。
バスを降りてからの最後の登り坂。
いつもは重い足取り。そりゃそうだ。
仕事で疲れているんだから。
だが、いつもと何かが違う。
なんだか知らんが早く帰らなくては、と足がはやる。
登り坂を越えてすぐ、わたしの住まいが見えるが、わたしの部屋の明かりが灯っている。
暖色。
蛍光灯は昼光色だぞ?
カーテンの影響か?
扉を開ければ、暖かい空気。
部屋の中は暖色。
ツレの温度。暖色。

ーーあったけぇなぁ。

マシンガンのように話すツレ。
どうやら怪奇現象云々にあって怖かったとか、なんちゃらかんちゃら。

その声がーー。
その姿がーー。
その色がーー。

今はもう無い。
帰り道の登り坂。
足取りは重くて、なかなか辿り着かない有様で。
見上げれば暗い部屋。
そりゃそうだ。誰も居ないのに明かりなどつけてはおかない。
部屋は昼光色。
眩しくて明かりを下げる。

あえて仕舞わなかったツレが干した洗濯物。
わたしとは違う干し方の洗濯物。
ツレが居たという名残。
やっと取り込んだ。

冷蔵庫にはツレが数日間に渡って作ってくれたご飯の名残。
残った食材。
作ってくれたドレッシング。
今日はそれで晩御飯にしよう。

溜まった生ゴミは家庭の証。
それすらも何だか愛おしい。

ーー夫婦してたよな?

答えてくれる人は遙か彼方。

わたしは、ほんの少しのツレの名残探しては、あの時間を思い出して力無く笑う。

ーー参ったな。これほどまでに……か。

ツレが置いていった入浴剤を入れて、お風呂に入ろう。

ツレの名残を抱きしめて。

サポートなんてしていただいた日には 小躍り𝑫𝒂𝒏𝒄𝒊𝒏𝒈です。