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内科専門医試験について①(これまでの合格率とこれから)

今回は内科専門医試験についてです。
話したい内容が多いので、何回かに分けて書いていきます。

まずはざっくりと内科専門医試験について書きます。

第4回内科専門医試験は2024年5月26日(日)に横浜と神戸の2地域で実施が予定されています。

本試験を受験される先生のほとんどは、J-OSLERという非常に大変なプログラムを無事に修了された先生です。J-OSLERについては、この記事をお読みの先生はご自身で経験されておられるはずですので、そのシステムの大変さ、面倒くささ、などはよくよくご存知だと思います。

今年内科専門医試験を受験される先生方は、すでにJ-OSLERが当たり前になった世代の先生だと思いますが、これは2018年の新専門医制度導入から開始されました。それまでは、J-OSLERというものはなく、まずは書類やレポートを提出して認定内科医試験を受験し、その数年後に総合内科専門医試験を受験するというのが通例でした。以前もレポート提出は必要でしたが、J-OSLERほど煩雑で大量ではありませんでした。また、ネットを経由したやり取りというものもなく、印刷して紙で提出するものでした。数年前に、内科専門医制度が大きく変わったのです。

第1回内科専門医試験は2021年に実施されました。それまで行われていた認定内科医試験はそのタイミングで廃止になりました。内科専門医試験は、これまでに3回行われ、2024年で4回目という、内科学会の歴史のある資格試験の中では、まだ比較的新しい試験です。

当時を少し振り返ってみます。
すでにコロナパンデミックは過去のものとなりましたが、はじめて内科専門医試験が実施された2021年と言えばコロナ真っ最中でした。コロナ第●波みたいな報道を連日ニュースでご覧になられていたことと思います。定期的に感染者数や死亡者数が爆発的に増えたり、落ち着いたりを繰り返していた時期です。

そんな中、第1回の内科専門医試験は2021年7月に予定されていました。受験生の間では、「もしかしたら試験が中止になるのでは」なんて噂も広がったりして、試験勉強に集中できないということもありました。ただ、内科専門医試験は感染者数が爆発するタイミングとは運よくずれていて、第1回から現在まで中止になることなく予定通り実施されています。

一方で、総合内科専門医試験は9月に行われていましたが、不運にもちょうど9月は感染者数が爆発的に増える時期と重なっていました。緊急事態宣言が出される中で内科医を一斉に集めて試験を行うことが道徳的に許容されるのかと、受験生(もちろん全員が内科医)から内科学会に抗議が送られることもあるほどでした。実際にコロナ診療を行っているのが内科医である受験生であったことや、世間では旅行や移動も制限されていたり、例えマスクをしていても一つの会場に大勢が集まり、3限まで試験があるため食事も摂るなど、感染対策という点でも懸念があったからです。その結果として、総合内科専門医試験は2020年と2021年の2年連続で試験が中止されるという異例の事態に陥りました。

今思うと驚きや懐かしさもありますが、コロナ禍は他の専門医試験も中止になるなど大きな影響を残していたのです。

さて、これまでの内科専門医試験の合格率を見てみます。

第1回 内科専門医試験(2021年度)    94.45%
第2回 内科専門医試験(2022年度)   90.02%
第3回 内科専門医試験(2023年度)   85.28%

いかがでしょうか。じわじわと合格率が低下してきています。

今思えば、第1回の94%は驚きの数値です。94%であれば、それなりに勉強していれば「ほぼ受かる」と言っても過言ではありません。しかし、直近の85%となれば、「ほぼ受かる」とまでは言えません。
当初、内科学会は内科専門医試験の合格率は90%程度を想定しているとしていましたので、今のところ合格率が大きく低下していく可能性は低そうですが、まだ歴史の浅い試験ですので、流動的に変化していく可能性はあります。内科学会は毎度毎度、何を言い出すかわかりません(失礼ですみません、、)。大人の事情でいろいろと改訂されていくような曖昧さや不安定さがあります。後出しジャンケンもあり得るのです。

ちなみに、全く比較できるものではありませんが、2023年の総合内科専門医試験の合格率は87.4%と過去最高であり、内科専門医試験の合格率よりも高いという結果でした。まさかの逆転現象が起きています。もちろん、これはあくまで「2023年度限定の」「結果論」でしかありません。総合内科専門医試験の合格率については1つ前の記事に書いておりますので、参考程度にご覧いただければと思います。

決して先生の不安を煽るつもりはありませんが、内科専門医試験は「まあ大丈夫」とまでは言えない時代に突入していく可能性はあります。合格率94%なんて時代はさすがにもう来ないのではないでしょうか。

そして、内科専門医試験の「合格のしやすさ」は今後変化していくと思っています。これは、合格基準が明確にされていないことと、おそらく相対評価の試験であるという点です。試験における相対評価というのは危険な側面があるのです。

これについては、また次回に続きを書きたいと思います。

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