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内科専門医試験について②(難易度と合格のしやすさ)

今回は内科専門医試験についての続きです。

話したいことが多いので、何回かに分けて書いていきます。
勉強の息抜きにお読みいただければと思います。

突然ですが、内科専門医試験の難易度は「認定内科医試験と総合内科専門医試験の中間のイメージ」とされています。「イメージ」とは、やけにざっくりとした口語的な表現ですが、内科学会の公式HPに実際に記載されています。

日本内科学会HPより

しかし、本試験を受験される先生は、そもそも認定内科医試験も総合内科専門医試験もどちらも受験したことがないわけです。その中間のイメージと言われてもわからないと思います。

私はどちらも受験しました。認定内科医試験はかなり大変でした。総合内科専門医試験は超超絶大変でした。「この中間ということですね、なるほど」。両方受験した先生からすればイメージはできますが、本試験を受験される先生にこんな説明では何も伝わらないと思いますので、この中間とはどういう位置付けなのかについて書いてみたいと思います。

まず、大前提です。この大前提をサラッと流してはいけません。特に試験勉強をまだ開始していない先生はよくよく頭に叩き込んでください。
この3つの試験の大前提は「試験範囲=内科すべて」ということです。文字にすれば簡単ですが、内科すべてということがどれほどハードなことか。本試験は全部で10の専門分野から構成されていますので、例えば自分が●●内科であったとすれば、あとの9分野は専門外です。例え一般的な教科書レベルの問題であっても、他科もすべて試験範囲であるというのがどれだけ大変かは容易に想像がつくかと思います。試験勉強は1ヶ月前からで大丈夫なんて意見もどこかで見ましたが、10の専門科を30日で終わらせる、つまり1分野3日で完結させる計算です。仕事があって夜にしか勉強できないのに、苦手な神経内科(私の場合)を3日で完成、次の3日で血液内科を完成、復習期間もなし、などあり得ません。とてもとても優秀な先生にしか成し得ないことだと思います。長くなるので、勉強法についてはまた別で書きたいと思います。

①試験問題自体の難易度

さて、内科学会のHPに記載のある難易度についてですが、これは「試験問題の難易度」です。つまり「認定内科医試験よりは難しい問題が出ます、ただ総合内科専門医試験よりは難しくない問題が出ます」という意味です。

確かに、認定内科医試験は医師国家試験の延長のようなイメージでした。国試でやったなーと思い出しながら勉強する、他科のほぼ忘れていることを思い出して、覚え直して、問題集を解きながら上乗せして知識を詰め込んでいく、そんな感じでした。これでも十分大変でした。一方で、総合内科専門医試験は各科の専門医試験に出るような非常に難易度の高い問題が並びます。教科書レベルの知識はもはや当たり前すぎて問われることすらありません。その出題範囲の広さと要求される知識量は人間の脳の限界に挑むレベルでした。例え疾患自体は知っていても、「そんな細かいところまで知らんよ、、」というものすごい知識をガンガン問われます。

内科専門医試験はその中間ということです。実際には、総合内科専門医試験に近いです。認定医試験よりは圧倒的に難しいです。他の先生も同じような意見です。私は総合内科専門医試験を受験するときに内科専門医試験の過去問もすべて勉強しました。実際に試験勉強で使用する教材は内科専門医試験と総合内科専門医試験では同じです。総合内科専門医試験は内科専門医試験の問題をさらに一捻り、二捻りしたという感じでした。実際にそれぞれの過去問を見ると、似たような問題が結構あります。Up to dateに近い問題も普通に出ています。総合内科専門医試験に准じているというよりは、お互いにリンクしていて、少し選択肢が選びやすいという感じだと思います。同じ内科学会の試験なので、同じような傾向になるのです。


②合格の難易度

2つ目は「合格の難易度」、つまり合格率です。
ここが総合内科専門医試験との決定的な差だと思っています。

総合内科専門医試験は内科系専門医試験の中で最難関であると言い切っていいと思います。それは試験問題自体の難しさもそうですが、それに加えて合格率が低いということです。これまでの合格率は6-7割です。3-4割は落ちます。内科医が数ヶ月かけて猛勉強してこの数値ですから、本当にハードな試験です。(ちなみに、2023年度だけ例外的に合格率が高かったのですが、これについては前々回の記事をご覧ください。)それと比較して、内科専門医試験は合格率が高めです。ここが大きな差です。結果的に「合格しやすい」となるわけです。

このように、内科専門医試験は、最難関の総合内科専門医試験と比べれば、問題の難易度自体は少しマシ、合格率も高め、という感じになります。

ここで、もう1つ大事なこととして合格基準について書かせてください。

総合内科専門医試験は絶対評価です。得点率60%、これ以上で合格、これ未満で不合格。一方で、内科専門医試験は明確な基準は公表されていませんが、おそらく相対評価です。合格率が90%前後となるように、毎回ボーダーラインを設定しているのだと思います。

この絶対評価と相対評価、どちらがいいのでしょうか。

絶対評価の怖いところは、試験問題に左右されるところです。「今年は例年よりも難しかった」なんてことがあれば、得点率60%が取れずに不合格になる先生が増えます。逆に「今年は例年よりも易しかった」となれば合格率は上がります。このように試験問題自体に影響を受けるのです。
一方で、絶対評価の良いところは、「自分が60%以上の得点を取れたか、という点のみで合否が決まる」ところです。言い方を変えると、他人との競争はありません。総合内科専門医試験の試験直前は皆様必死で勉強しています。あらゆる時間を勉強に費やして猛勉強しているのですが、ここで相対評価になってしまうと、周りは敵になってしまいます。これがないのが絶対評価です。みんなで一緒に60%以上取って合格しようと言えるわけです。

それでは相対評価はどうでしょうか。

相対評価のメリットは、全体の様子を伺いながら勉強できることです。仮に合格率が90%と固定されているとすれば、下位10%に入らなければいいのです。自分の得点率が何割であろうと、自分より下に10%の人がいれば合格できるわけです。つまり、みんなができる問題を落とさないという方法が通用します。決して上位ではないけれど、平均以下くらいで合格が可能ということになります。
一方、相対評価のデメリットは、完全に競争であるということです。自分が60%の得点をとっても、周りが70%の得点率なら落ちます。自分が70%とっても、周りが80%なら落ちます。一緒に勉強する同士は仲間ではあるものの、試験においては敵になってしまいます。友人が勉強すれば、自分が落ちるということです。

内科専門医試験において、今後も合格率90%の相対評価を維持してくれるのであれば、みんなができる問題を落とさないという勉強方法が通用します。しかし、合格率が下がってきたり、受験生全体の意識が変わって猛勉強する人が増えるほど、まさに競争が激化するわけです。

前回の記事で書きましたが、年々合格率が下がっています。相対評価であれば、ボーダーラインは自由に設定できるはずです。90%できっちり区切ることができるはずなのに、なぜ過去3回で合格率が94%→90%→85%と低下しているのでしょうか。これは内科学会の意図的なものです。さらに、受験生のレベルは基本的に上がっていきますので、「ほぼ受かる」という油断はしない方がいいと私は思っています。

少し厳しい言い方になっていますが、私の記事をご覧いただいた先生には確実に「合格という確固たる結果」を手にしていただきたいので、あえてこのように書いています。

まだまだお伝えしたいことがありますので、次回以降に続きます。

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