2023年度の総合内科専門医試験の振り返りと今後について
2023年9月、第51回総合内科専門医試験が行われ、12月に結果が発表されました。
●合格された先生方
本当におめでとうございます!!
体力的にも精神的にも、とてもとても大変だったと思います。こんなハードな試験はもう二度と受けたくないですよね。本当に本当にお疲れさまでした!!
とてもありがたいことに、私の記事を読んでくださっていて個別で合格のご連絡をくださった先生もおられました。中には、盛大に合格祝いの打ち上げをされたとのご報告もいただき、私もうれしくなりました。
それだけ価値のある合格です!!
合格された先生方、大変な試験勉強、本当にお疲れさまでした!!!
そして、本当に本当に本当におめでとうございました!!!!
2023年度の総合内科専門医試験ですが、少し振り返ってみたいと思います。
内科学会から合格率が公表されました。今回の合格率は驚異の87.4%でした。
こんなに高い合格率は過去にありません。
データを見てみます。過去10年分の合格率を表にしてみました。
これまで総合内科専門医試験の合格率は60-70%というのが相場でした。実際に、2022年以前の合格率の平均値を計算してみると65.2%でした。最も合格率が低かった2016年度は56.7%です。内科すべてが試験範囲というとんでもない試験な上に、合格率の低さという点においても、最難関と言えるえげつない試験です。
しかし、今回の2023年度は合格率87.4%と信じられないほど高いものでした。私たち受験生にとってはとても素晴らしいことなのですが、これまでとあまりに変わっています。一体、何があったのでしょうか。
総合内科専門医試験の合格基準ラインは得点率60%(不適切問題などの補正後)とされており、絶対評価であると言われています。6割以上で合格、6割未満であれば不合格。この基準が長らく続いてきています。この基準が少し緩和されたのかとも思いましたが、2023年度を受験された先生で、6割未満で合格だったという先生の情報は今のところ見ていないので(自分の得点も合否結果と一緒に送られてきます)、やはり6割という基準は変わらないように思います。
2023年の受験者の平均得点率は69.05%でした。ちなみに2022年の受験者の平均得点率は66.09%です。それ以前は60%前半が多いです。
つまり、今年の受験生の得点率は直近では最も高かったようです。問題が少し解きやすかったのかもしれません。ただ、去年と比べてたった3%(200問で言えば6問)上がった程度で、目に見えない不適切問題の補正もあったりして、このあたりの難易度の細かい感触は実際に受験した先生にしかわからないと思います。過去問復元をあとから見ても、実際の試験会場で受験するのとは違うので、簡単に易化したとは言い切れないようにも思います。
むしろ、難易度だけではなく、受験生全体のレベルが上がったという要因が大きいのではないかと思っています。
ひとつ目は、受験生の背景です。J-OSLERが導入されて、内科専門医制度が大きく変わりました。こちらの先生方は内科専門医試験を受験されるようになりました。J-OSLER開始以前の総合内科専門医試験を受験する先生は、過去に内科認定医試験を合格されており、次に総合内科専門医試験を受験することになります。その際に、措置的受験という病歴要約が免除された状態で1回だけ総合内科専門医試験を受ける資格が与えられています。今回も措置的受験の先生が過半数でした。仮に不合格であってもレポートを提出すれば再度受験はできるのですが、追加のレポート提出の負担は大きいです。そのため、措置的受験に該当する先生方(ほとんどの先生)は「一発合格しなければならない」という感覚を持っておられますので、たった1回の措置的受験ができるタイミングをよく考えておられます。例えば、日常臨床が特に忙しかったり、他の専門医試験と重なる、女性の先生で子育て中で勉強時間が確保できない、というそれぞれの先生のご事情により、今年はやめておいて来年受けようと調整されることがよくあります。私の周りにもそのような先生は多いです。そして、それぞれのご環境が整ったタイミングで、万全を期して、一発合格するために十分な試験勉強時間を確保して、猛勉強されています。
ふたつ目は、試験対策教材の充実です。この数年、総合内科専門医試験の勉強材料が豊富になってきました。本試験専用の問題集、ネット講義、セミナー、ネット上の過去問など、様々な勉強材料が入手できるようになりました。10年くらい前に受験した先輩に聞くと、当時はネット講義はもちろん、クエスチョンバンクもない、ネットやSNS上に過去問もなければ、そもそも試験に関する情報すらほとんどない、という時代だったようです。こんな状況であのレベルの試験の対策をするなんて今思えば不可能ではないかとすら思います。このように本試験の対策教材や様々な情報が入手できるようになったことも関係しているかもしれません(ただ、勉強自体がめちゃくちゃ大変であることに変わりはありません)。
私個人の意見に過ぎませんが、このように受験された先生が十分な対策をされて、非常に優秀だったことが、今回の合格率の高さにつながったのではないかと思います。
では来年はどうなるのでしょうか。
内科学会はいつも何を考えているのかわかりません(失礼ですみません、、)。
全体の受験生のレベルは上がっていると思いますので、次回以降の総合内科専門医試験も高い合格率を維持するかもしれません。また、たまたま今回はこのような結果になっただけで、来年以降は例年通りの合格率に戻るかもしれません。逆に今回合格率が高かったので難化してしまうなんて可能性もないとは言えません。
今の時代、情報収集をして適切な情報を持っておくことはとても大切です。情報は大きな力になります。ただ、根拠のない予想に振り回されてもいけません。実際に、今回これだけ合格率が高くなると予言できていた人はいません。来年がどうなるかは誰にもわからないのです。
受験される先生は、今までと変わらず、ただ粛々と試験勉強を行っていくことが大事です。本当に大変な試験ですので、できるだけ早く準備を開始されることをおすすめします。今回の合格率の高さは受験された先生方が大変勉強されて素晴らしい成績をおさめられた結果だと思います。合格された先生方、本当に本当におめでとうございました!!!
次回は内科専門医試験についても取り扱ってみたいと思います。
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