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I to U (後編)

今まで行った2人のデート場所。

大学の校内。

いろいろなところを探したけれど天はいない。

なぜ急に連絡がつかなくなったのか、、、

残念なことに見当もつかない。

理佐に事情を話しても天の居場所は知らないと言う。

天のことを考えれば考えるほど、募るのは会いたいと言う気持ちだけ。

あの日、、、付き合った日。

天のことを寂しがりやと言ったが、本当は僕の方だったんだな、、、
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2023.07.19

天と連絡がつかなくなってから2週間とちょっと。

まだ夏本番ではないと言うのにジリジリとした暑さだ。今日、僕は休みを取った。

天がいなくなってから僕は大学を休みがちになっていった。

ずいぶん弱い人間だな、、、僕は、、、

山崎天という人間が1人いなくなってしまっただけでこんなにも心が廃っていくなんて。

天と出会う前の僕。

あの無機質だった僕なら絶対あり得なかった事。

大学を休んだ日にはあてもなくあたりをぶらついている。

ばったり天に会わないかな。

そんなことを考えながら。
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休みの午後昼下がり。

駅の道をまっすぐ駆け上がり交差点に着いた。

人並みをかき分けてなんとか歩く。

その時、、、

〇〇「、、、この曲、、」

僕と天がお気に入りの曲。

天がスマホのメロディーコールに設定していたあの曲。

僕はその曲が聞こえた方向に向けて足を速めた。

その方向に君がいるような気がして。
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2023.07.01

私はこの日、あてもなくただ街を出歩いていた。

浮かれていた。あと一日で1ヶ月記念。

たかが1ヶ月記念。
しかし私には重要な意味があった。

初恋だった。

私は〇〇馬鹿にするようにイジっていたけれど
実は私も初恋であった。

〇〇は私がハンカチを拾ったあの日を
初めて会ったと思っている。

しかし、それは違う。
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2023.04.01

高校の入学式の日。
私は恥ずかしいことに迷っていた。

無駄にだだっ広い。そして人も多いこの高校。

私は腹立たしさを覚えつつもなんとか入学式の会場へ辿り着こうとしていた。

ふと時計を見る。入学式まであと10分だ!!

、、、終わった。絶対間に合わないじゃん....

そう落胆していると誰かに肩を叩かれた。

〇〇「きみ、新入生でしょ?」

天「え、あ、はい!だけど迷っちゃって、、、」

〇〇「だよね。この高校は広いから笑。
   こっちおいで。」

そう言って彼は逸れないよう、私に服の裾を掴ませ入学式会場へ連れて行ってくれた。

〇〇「はい着いた。それじゃ気をつけてね。」

天「あ、ありがとうございました!!」

深くお辞儀をする。

頭を上げると彼はもういない。

これが私たちの本当の始まり。
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それから私は彼を学校で見つけると思わず目で追ってしまっていた。

そのためか気づいたことがある。

彼は優しい。とても。

委員会も放置している学校の花壇には彼が水を。

誰かの放置したゴミは黙って彼が持ち帰る。

そんな目立たない地味な優しさ。

だけど本当に彼は自然にその行動を取っている。

これが自然に出来ると言うことは本当に優しい人なんだ。

それが私が彼に惹かれていた理由。

今まで私に近寄ってきた人はみんな私の顔をだけを見ていた。内面など二の次だ。

しかし彼は違った。

私の内面も愛してくれた。

そんな彼を私も愛していた。

だから怖かったんだ。
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2023.07.01

私は〇〇と理佐さんが2人で歩いてる様子を見てしまった。とても楽しそうに。

別に〇〇と理佐さんのことを信用してないわけではない。

『2人が付き合っている』

そんな考えは浮かばなかった。

だけど2人が並んで歩く姿が、、、

〇〇の隣を歩くのは私ではなく理佐さんなのではないか。

〇〇は子どもっぽい私よりも理佐さんのような大人な女性が好きなのかな。

そんな考えが離れない。

少しでも大人っぽく見られようと敬語だけは使おうと心がけていた。

あぁ。その考えがもう子どもか、、、

心の中で私は私を嘲笑する。

考えれば考えるほど私が嫌になっていく。

怖い。〇〇に会うことが。
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2023.07.19

私はまた街を歩いていた。

暑い太陽の下をただただ歩く。

〇〇に会うことはまだ怖い。

だけど会いたい。

そんな二律背反な感情が頭を駆け巡る。

そんな時、私の聞き慣れた曲が携帯から流れる。

あぁ、電話か。

そういえば〇〇もこの曲好きだったな、、、、

そんなことを考えて電話に出ようとした瞬間。

〇〇「はぁ、、、はぁ、、、見つけた、、」

この曲よりも聞き慣れた彼の声がする。

私は急いで振り向く。

天「、、、〇〇、、」

ずっと会いたかった人。

そして会いたくなかった人。

私は〇〇に抱きつく。

今度は私から。

周りにどれだけ人がいようと関係ない。

天「ごめん、、、ごめんね〇〇、、、」

涙が止まらない。

本当なら私には謝る権利もない。

私の勝手が引き起こしたことだから。

なのに〇〇は私を優しく抱きしめてくれる。

天「ほんとうにっ、、、ごめんっ、、なさいっ、、、」

涙で言葉がつっかえる。

〇〇「、、、天。」

天「、、、ぐすっ、、なに?」

〇〇「愛してるよ。」

天「、、、私も〇〇のことぉ、、、愛してるぅ!」

〇〇「ふふっ。もう泣かないの。」

〇〇は私の涙をハンカチで拭う。

私が拾ったあのハンカチで。
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天「本当にごめんなさい、、、」

〇〇の家への帰り道。

私はもう一度謝る。

〇〇「もういいよ。
   僕もちゃんと話せば良かったことだし。」

やっぱり彼は優しい。優しすぎる。

私は〇〇と繋いでいた手をほどき、走り出す。

〇〇「天?」

〇〇より5mくらい前で立ち止まる。

天「〇〇!愛してるよ!」

無性に言いたくなった。

私と〇〇の心を繋ぎ止めてくれている言葉。

そんなただの言葉を。

I to U   the end.

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