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愛する彼女が男装したクラスメイトにベタ惚れだったので惚れ直させるタイマンバトル。[後編]

〇〇「はぁ、、、、」


2月7日、水曜日。


遠藤〇〇は教室の席でため息をついていた。

普段からそこそこポジティブで、悩み事なんかからはすぐに切り替えるタイプである。



〇〇「、、、、、、雪か。」



ちらりと窓の外を見ると、無数に降る雪が校庭に降り積もっていた。

それらが〇〇の心を余計に寂しい気持ちにしたのだろう。



ポンポンッ


〇〇「、、、ん?」


増本「どうしたんですか〇〇さん。
   ため息なんてついて、お腹痛いんですか?」


〇〇「いやそうじゃないけど、、、
   ちょっと悩んでることがあってさ。」


増本「なるほど。」


机に伏せていた俺の背中を叩いたのはクラスメイトの増本綺良だ。

奇想天外の大不思議としか形容できない珍しい女子。


普段は同じクラスの幸阪茉里乃が良い感じに制止してくれるんだけど今日は風邪で休み。

だから今日はいつもより勢いが激しめ。



増本「しょうがないですね。
   私がお話し付き合いましょう。」ガララッ



頼んでもいないのに俺の隣の椅子を引き、こっちに向かって熱い視線を送ってくる増本。

日頃は増本に相談事などはしないけど、今は猫の手も、、、

いや綺良の手も借りたい気分なのでちょっと相談してみよう。



〇〇「実はさ、最近の保乃の事なんだけど、、、」


増本「田村さんですか?
   〇〇さんがお付き合いしてる?」


〇〇「いやそれ以外の保乃を知らないでしょ。
   そんで昨日さ、保乃と一緒に帰った時に、、、」


昨日、放課後にて。



俺は彼女の田村保乃と一緒に家へ帰るのがルーティンとなっていた。

そして今日も一緒に歩いているのだが、いつもと少し違うことがあるんです。



〇〇「、、、、、、保乃?」

田村「はぁ、、、///」

教室から2人で一緒にいるのにずっとこんな感じです。

いつもだったら保乃の方から『あのな、保乃な!』みたいな感じでガンガン話しかけてくるのに、今日はずっと上の空、、、、、


〇〇「そっ、、、そういやバレー部の試合すごかったな!昨日の昼休みに動画見せてくれたろ?」

田村「あぁ、、、、、そやろ?」

〇〇「えっ?」


普段の保乃だったらありえないくらいの塩対応。

いつもは『せやろっ!』みたいにバリバリ関西のノリを出してくるっていうのに。


田村「あっ、もうこんなとこか、、、、、
   また明日な、、、///」


気づいたらもう俺たちがいつも別れるY字路に差し掛かっていた。

そうすると保乃は俺の方をちょっとだけ見て自宅の方へ帰って行ってしまった。


〇〇「どういうこと、、、、、」


残された俺は、心に黒いモヤが蔓延していくのを感じながらもう一方の道へ歩いて行った。


〇〇「こんなことがあってさ、、、どう思う?」

増本「なるほどなるほど、、、はい。」

〇〇「、、、、、、え?」

増本「はい?」

〇〇「だから増本はどう思うのって。」


いつの間にか手元にメモ帳のような物を取り出しており、俺の話を書き留めてくれていたようだ。

意外とちゃんと話を聞いてくれてたんだな、、、


大園「綺良ちゃ〜ん、私のメモ帳まだ使ってる?」

すると後ろからクラスメイトの大園玲が俺たちに向かって話しかけてきた。

どうやら増本が使ってるメモ帳は彼女から借りた物らしい。

いつの間に、、、、、


増本「あっ、もう良いですよ。はい。」

大園「、、、、、、このメモは?」

増本「〇〇さんの恋愛相談を書き留めました。
   玲さんの好きにしてください。」

〇〇「おいこら、そこだけちぎって渡せ。」

大園「なになに、、、」

〇〇「読むなーっ!!」


抵抗したものの結局、大園には隅から隅まで読まれ、、、


大園「〇〇くんも乙女だね〜♪
   保乃ちゃんのことが大好きなんだ?」

〇〇「はっず、、、、、、///」

増本「まあそんなに気を落とさないで下さい。
   またお話に付き合うので。」

〇〇「たぶん増本に2回目はないわ、、、」

大園に冷やかされ、増本には謎に同情され、、、

もう二度と増本を信用しない、せめて幸阪がいるときにしよ。

とりあえずバレてしまったもんはしょうがないし、大園にも相談してみるか。



〇〇「そんで大園はなんか心当たりとかないの?
   保乃がここのところ上の空なことにさ。」

大園「心当たりかぁ、、、、、あっ!!」



大園が自分のメモ帳をペラペラとめくって少しすると、何かを思い出したかのように目を大きく見開いた。

さすが大園だ、、、、、



増本「やっぱりそうですよね、私もそう思って」

〇〇「ちょっと増本は黙ってて、チョコあげるから。」

増本「えっ、良いんですか?」

〇〇「はい、、、そんで心当たりってなに?」

大園「、、、〇〇くんって綺良ちゃんの扱い上手いね。
   今度から茉里乃ちゃんの手助けしてあげて?」

増本「ほうでひゅよ。」モグモグ

〇〇「、、、、、、考えとく。」


いつの間にかあげた2粒のチョコを頬張っている増本。

これは幸阪も手を焼くわ、、、、、、じゃねぇよ。

そんなことより保乃の事を聞かないと!


〇〇「そんで、大園の心当たりってなに?」

大園「ちょっと前に女子グループで遊んだときにね、、、」


数日前、、、


山﨑天、大園玲、増本綺良、幸阪茉里乃、森田ひかる、そして保乃で遊んだ時の話らしい。

山﨑の家に6人で集まったとき、山﨑&増本が事の発端になったようで、、、


山﨑「みんなでコスプレ大会しよっ!」

増本「はい!天さんに賛成です!」

4人「「「、、、、、、、、、、、、」」」


田村「、、、、、、なんでコスプレなん?」

森田「2人ともコスプレとか興味ないでしょ?」

大園「あと綺良ちゃんはなんで賛成してるの?」

幸阪「私に関してはキャラじゃないし、、、」


最初はみんなから不評の嵐だった様子。

4人からの不満を一通り受け付けた後、山﨑は顔の前に人差し指を立ててわざとらしく『チッチッチ』と声を出した。



山﨑「今年の文化祭覚えてます?感染症対策で規模をちっちゃくしたじゃん?」

増本「ほとんど校長先生のお話でしたね、記憶にあるのは。」



確かに今年の文化祭は感染症が第何波とかで規模が縮小化したような、、、

そういえば保乃がちょっと寂しそうにしてたな。



山﨑「だからうちらでコスプレ大会しよ!
   衣装はドンキにいろんなの売ってるだろうし!」

増本「私は賛成ですっ!はいっ!」

幸阪「綺良ちゃんそればっかじゃん、、、」

田村「まぁ、、、確かにつまらん文化祭やったな、、、、、」


初めに乗り気になったのはまさかの彼女。

それから森田と大園が乗せられ、最後の砦だった幸阪を崩したそう。


山﨑「それじゃあドンキにレッツゴーっ!」


〇〇「、、、、、、今のところはなんともなくない?」

大園「いやいや、こっからなんだよね〜。」

増本「確かにあれはやばいですね、、、
   チョコもう一個ほしいです、アーモンドの。」

〇〇「はいはい、、、、、そんで?」


6人は山﨑を先頭にドンキへ向かい、山﨑、森田、大園、増本が好きな服を買った模様。

保乃と幸阪は考え直したところ見る専に転向したらしいです。

そしてもう一度、山﨑の家に帰って着替えていたら、、、、、


田村「どんなコスプレするんやろ?」

幸阪「メイドとかじゃないん?典型的なの。」

田村「ちょっと辛辣やな。笑」


山﨑の部屋で2人が待つこと15分、どうやら4人の着替えが終わったみたいです。

ファッションショーみたいに1人ずつ登場してくるっぽい。


増本「それじゃあ私から行きますね、、、、、じゃんっ!」

増本が選んだのは幸阪が言った通りに王道のメイド服。

普段からやってることが大不思議なだけで顔は可愛い増本に、保乃も幸阪も思わず歓声を上げたらしい。


幸阪「おぉ、、、!」

田村「綺良ちゃん!めっちゃ可愛いやんっ!」

増本「でへへ、、、///」


そして次に大園がカフェ店員の男装を。

山﨑がスケーターの男装をそれぞれ身につけてご登場したんだって。

そして最後の最後に俺が頭を悩ませる原因となったアイツが出てきたんです、、、


森田「なんで私が最後に、、、、、」

大園「ひかるちゃんが1番似合ってたから!」

山﨑「そうそうっ!
   私たちよりもずーっとかっこいいから!」


森田「もぉ、、、、、」


そしてゆっくりと部屋のドアが開き、男装した森田が入ってくる。

次の瞬間、保乃の心が天変地異のごとく揺れ動いたらしい、、、


森田「こんなんでいいのかな、、、///」

幸阪「ひかるちゃんすごいな、、、」

大園「ねっ!かっこいいでしょ!」

山﨑「年下のかわいい後輩くんって感じだよね〜♪」


田村「、、、、、、かっこいい、、、///」


大園「と、こんな感じ。
   あれから保乃ちゃんデレデレでさ〜。」

増本「でしたね。
   なにを聞いても『えへへ、、、///』みたいな」


〇〇「そういうことか、、、」


俺はまた一つ、クラス中に響くくらいの重いため息を吐き捨てた。

とりあえず理由が男じゃなくて、、、、、いや男みたいなもんだけど本物じゃないだけよかったな。


大園「安心してる?」

〇〇「まぁね、、、」

増本「あっ、でもあれ見てくださいよ。」

大園、〇〇「「え?」」


増本が指差した方向を見つめると、何やら一方的なラブラブカップルのオーラを滲み出してる2人が教室に入ってきたところだった。


田村「なぁひーちゃんっ♪」

森田「ねぇ、今日どうしたの?」

田村「何が〜♪」

森田「いつにも増してアホっぽい、、、いやなんでもない」

田村「えへへ〜っ♪」

〇〇「な゛っっ、、、!!」


大園「あらら、、、」

増本「あれから時間も経ってるのに飽きませんね?」

大園「まるで付き合い始めの2人を見てるみたい笑」

増本「あっ、確かに!どこへ行くにも田村さんが
   『〇〇〜っ!』とイチャイチャ、、、」


2人が何やら話している時、俺は焦りに焦っていた。

やばい、、、このままじゃまずい、、、、、、

何かしないとマジで森田に保乃を盗られる気がする、、、


〇〇「、、、、、、大園っ!」

大園「えっ?」

増本「私は?」

〇〇「保乃の気持ちを森田から俺に向けたい、、、
   何かいい案とかないかな?」


俺は藁にもすがる思いで大園に頭を下げた。

残念なことに俺に妙案なんかは思い浮かばないし、頭のいい大園なら何かいい考えが、、、、、


大園「いい案かぁ、、、そんな急に言われても、、、」


〇〇「だよな、、、」


やっぱり自分1人で何とかするしかないか。

でもどうやったら保乃を取り戻せるんだろうな、、、

そんな憔悴しきった俺に助け舟を出したのはまさかの、、、


増本「ふっふっふ、、、私にいい考えがありますよ。」

〇〇「、、、マジ?」

大園「ぜんっぜん信用してないじゃん笑」

増本「まぁチョコのお礼としてそこは許します。
   では早速、私の考えた案を発表します!」バシッ

大園「あっ、私のメモ帳、、、」


増本がまた大園のメモ帳を強引に掴み、アニメとかで見る天才漫画家みたいな勢いで文字を並べていく。

そして2〜3秒してすぐに顔を上げて俺たちに向かい合う。


増本「私の考えた作戦、、、それはっ!!」ビリリッ


メモ帳のリングから書いたばかりのページを破り、俺たちに向けた!

そこに書いてあったのは、、、!!


〇〇「、、、、、、読めねぇ、、、」

大園「綺良ちゃん、、、
   もうちょっと丁寧に書いてよ、、、」


増本「はぁ、、、しょうがないですね。
   では私の口から直接〇〇さんにお伝えします」


なんだか寂しげに破いたメモ帳を4つ折りにして俺に差し出してくる。

いや別に要らないし。


増本「〇〇さんが奪われた田村さんの心を取り戻す
   方法はただ一つ、森田さんとのタイマンです。」

〇〇、大園「「タイマン?」」


増本「はい、タイマンです。」

〇〇「いやそれってどういう」


先生「おーい授業始まるからそろそろ席着け〜。」


『これから!』ってタイミングで次の授業をする国語の教師が教室に入ってきた。

いや何でこういうタイミングで来るんだよ、、、!


大園「やばっ!次の準備してなかった!」

増本「あっ、提出する課題やってなかった。」


〇〇「えっ!ちょっ!」


すると2人とも座っていた椅子を元の場所に戻して自分の席に戻って行った。

まだ1番重要なところ聞けてないのに、、、


先生「それじゃあ日直、号令かけて〜。」


俺は悶々とした気分のまま起立、礼、着席の流れに乗った。

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