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"都市伝説"って信じてる?(前編)

私立乃木坂高校、2ーB


賀喜「えっと、次の授業は、、、」

教室の前方、黒板の右上に画鋲で止められた時間割の表を見る。


うぇ、、、次は苦手な古文だ、、、、、


文法とかいまいちピンとこないんだよな〜。


私は少し憂鬱な気分になりながら教科書とノートを机の上に並べていった。


全ての用意を終えた頃、前の席に座っていた親友がこちらの方を振り向いて話しかけてきた。



早川「なぁなぁ、、、かっきー、、、、、」

彼女は親友の早川聖来。


幼稚園の頃から同じ学校に通い続け、2年に1回は同じクラスになるという何かと縁のある友達だ。


なんかいつもより元気がないみたいだけど、、、


そんな彼女が私の方にスマホの画面を見せながら話を続けた。



早川「この都市伝説って知ってる?」



見せてきたのはSNSのとある1ページだ。


見出しには『平成の都市伝説が復活?都内で次々に行方不明者が続出している模様。』とある。



賀喜「なにこれ?」


早川「今な、ここら辺で行方不明になった人が
   いっぱいおるんよ。」



そういえば最近、テレビやネットでそんな報道がされていたな。


今日の朝も、リビングにあるテレビでそんな内容が流れていたのを思い出した。



賀喜「でもそれがどうかしたの?」


早川「それがこの学校にもな、、、」



そう言って聖来は教室の右隅に視線をやる。


そこは先週から欠席を続けている筒井あやめちゃんの席だ。

普段から真面目な女の子で休んだことはあまり無かったのに、最近は学校に来ていない。


そういえば今日も彼女はお休みだ。


私も聖来も、3人で何度も遊んだことがある大事な友達だ。


そういう関係なだけに心配だな、、、



賀喜「もしかしてあやめちゃんが都市伝説で
   居なくなっちゃったとか言うの?」



私はそんな事がある訳ないと半笑いで聖来に言う。


しかし私の態度とは裏腹に、聖来はとっても真剣な顔で私に向かい合う。



早川「ほんまやって!」


賀喜「せっ、、、聖来?」


早川「あやめちゃんが都市伝説の本を持ってたの
   見たし、この前は夜の学校に1人で入って
   行ったのを友達が見たんよ!」



大声で捲し立てる訳ではなく、切迫したようにか細い声で私に訴えかける聖来。


普段は朗らかな雰囲気を醸し出してる聖来からは考えられない声色だ。



賀喜「でっ、、、でもさ。普通に体調が悪くてお休み
   してるだけじゃないの?」



私がそう言うと、聖来はまた新しい表示がされたスマホの画面を私に見せた。


それはLINEのトーク画面、あやめちゃんと聖来の
ものだ。



聖来💬 あやめーん!元気してるー?


聖来💬 あやめんがおらんと寂しいよー、、、


聖来💬 早めに返信欲しいな、、、


そこには、聖来からたくさんのメッセージが送られていた。


しかし、それに対するあやめちゃんの返信はゼロ。


既読すらも付いていないのは少し、、、


いや、あやめちゃんのマメな性格を考えるとかなりおかしい。


そして聖来はスマホの電源を切り、真っ黒な画面となったスマホをポケットにしまった。


そしてゆっくりと私に問いかける。



早川「なぁ、、、お願いやねんけど、、、、、」


賀喜「、、、なに?」


早川「一緒にあやめんを探さへん?」


その日、夜の23時21分。



賀喜「うぅ、、、なんか怖い、、、、、」



私はいつもは太陽が昇っている時にしか歩かない通学路を1人で歩いていた。


私は今日、あやめちゃんを探すために2度目の登校をしている。


夜の闇に包まれる街の中、ポツポツとある街灯の明かりに少し安心する。


歩くこと数分、私は聖来と約束した場所に着いた。


そして一つの人影が校舎の壁にもたれかかっているのを見つけた。


暗くてよくわからないが十数歩近づいてようやく聖来だと言うことが認識できた。



早川「あっ、かっきー!」

賀喜「しー!声がおっきいよ!」

早川「ごっ、、、ごめん、、、でも心細かったんよ!」



私たちは聖来の所属しているバレエ部の部室の窓、そのあたりで待ち合わせをしていた。


もう学校のどの場所もきちんと戸締りがされているため、普通だったら校内に入ることは出来ないのだけど、、、



早川「よいしょ、、、開いた!」


賀喜「こんなことして良いのかなぁ、、、」



今日の部活終わり、部室の施錠を任された聖来がこの窓だけ鍵を開けっぱなしにしたみたい。


普段だったら顧問からガミガミ怒られるらしいんだけど。


でも、そのおかげで私達は無事に校内に入ることが出来たんですが、、、



賀喜「うぅ、、、」

早川「思ったより雰囲気あるなぁ、、、」



普段はクラスメイトなどの声が響き、賑やかな雰囲気がある学校と同じとは思えない雰囲気がそこにはあった。


風で窓が揺れる音、水道の蛇口から水がポタポタと落ちる音、、、


聞こえる全ての音が不気味に聞こえてきてしまう。


私も聖来もホラー系は全く受け付けない体質だし、夜の学校がめちゃくちゃ怖い、、、


それだと言うのに私たちがここに来たのは理由があります。



賀喜「あやめちゃんって本当にここにいるの、、、?」


早川「間違いあらへん!あやめんが休む前の日に
   学校に入って行ったの話したやろ?」


賀喜「それは聞いたけど、、、」


早川「ならここしかない!」



なんとも説得力に欠けた論理だとは思うけど、、、


私は隣で胸を張る聖来の手をぎゅっと握りなおし、2人で歩き出した。


私立乃木坂高校、B棟1階、女子トイレ前。



賀喜「ここであってるの?」


早川「うん!ネットにはここって書いてあるで!」


賀喜「ほんとかなぁ、、、」



日中に聖来が見せてきたサイトによると、都内某所の学校のトイレでいわゆる『花子さん』が出るらしい。


学校の七不思議には定番の都市伝説であるが、私たちの学校でも存在していたとは思えない、、、


でも何であやめんが『花子さん』なんて、、、



早川「そっ、、、それじゃ入るで、、、、、」



色々と考えている間に、聖来はトイレのノブに手を掛けていた。


私は急いで心の準備を整えて扉が開くのを待つ。


トイレの出入り口の扉は不愉快に軋んだ音を立てながらゆっくりと開いた。


スマホの懐中電灯をつけ、私達はゆっくりと中に入る。


ここの女子トイレは個室が6つ並んでおり、扉の近くに2つの手洗い場が設置されているという簡単な設計だ。


手洗い場の横には『トイレは綺麗に使いましょう。』という張り紙が剥がれかかっている。



聖来「えっと、、、」

賀喜「奥から2番目の個室を3回ノック、、、だよね?」



先ほどネットで確認したばかりの新鮮な知識を思い出す。


2人でゆっくりと、、、ゆっくりと目的の個室へと進んでいく。


そして何分もかけて奥から2番目の個室へ。



早川「それじゃノックするで、、、」



聖来は震える手を何とか動かしながらトイレの扉をノックし始めた。



コンッ、、、コンッ、、、コンッ、、、、、



乾いた扉を叩く音がトイレ中に響いた。


そしてノックをした後に"ある言葉"を言わなきゃいけないと言うのも先ほど学んでいた。



早川「花子さん、、、いらっしゃいますか、、、」



聖来が小さな声でそう呟いた。


すると触りもしていないのにトイレの扉が、、、、、!!


開かなかった。


それに何か特別なことが起こる訳でもなく、ただただ時間が過ぎて行った。



早川「、、、、、、何も起こらんな。」

賀喜「やっぱ都市伝説なんて無いんだよ、、、」



私達はどこか安心した気持ちで扉の前から離れ、出入り口の方へ向かった。



早川「ここじゃないならあやめんは何処に、、、」

賀喜「やっぱ体調が悪いんだよ。
   今度あやめちゃんのお家にお見舞い行こ?」

早川「せやな〜。」



そんなことを話しながらまた出入り口の扉を開く。



キィィ、、、



先ほどのようにまた、不愉快な音を立てながら、、、、、



賀喜「、、、、、、え?」



私はまだトイレの扉に手をかけていない。


しかし、確かに扉の開いた音はした。



早川「かっ、、、かっきー!!」



力いっぱいの声で私を呼び、何かを促すように力強く肩を揺さぶる聖来。



賀喜「ちょっ、、、痛いって!一体何な、、、の、、、」



聖来が視線を向けている方に私も視線を向けた。


それと同時に私の眼に信じられない光景が飛び込んできた。


開いた。


数分前に聖来がノックをした扉がゆっくりと開いているのだ。


どうして、、、!


ひとりでに開く扉では無いのに!!


私達は恐怖で足がすくみ、目の前の光景から目が離せなくなっていた。


そして扉が開き切ったのと同時に小さな"何か"が個室からゆっくりと這い出て来た。


人型ではあるが決して人間では無い。


鳥のように細い腕と足、顔と思われる箇所には黒目しかない目が私たちを睨んでいる。


一瞬でこの世のモノではない何かだと判断した。



「あっ、、、あ゛あぁ、、、、、、」



賀喜、早川「「きゃーーっ!!」」 



叫び声を上げるのと同時に私は出入り口のドアを勢いよく開けて走り出した。



今のは何だったの!?

何でこの学校にあんなモノが?!



そんなことを考える暇もなく、とにかく足を動かすことだけを考えた。


廊下には私たちが走る音ともう一つ、別の音が響いている。


あいつの足音だ。



早川「やばいって!アイツもついて来とるっ!!」



私は一瞬だけ後ろを振り向いた。


アイツは手を床についた4足歩行で私たちの後を追いかけて来ている。


どこが関節なのかも分からないほどに幾つも折れた腕と足で。


そして掠れた声と一緒に。



賀喜「はぁ、、、はぁ、、、!」

早川「あかんっ、、、もう走れへん、、、、、」



走り出して何分が経っただろうか。


全力疾走を続けている私達には限界が近づいていた。


しかしアイツは変わらない速度で私達を追いかけてくる。


もう終わりかもしれない。


アイツに捕まったら多分だけど死ぬだろう。


「死」と言う存在が私のすぐ後ろに近づいてることが分かる。


もう、、、、、ダメだ、、、、、、、、



??「2人ともこっち!!」


賀喜、早川「「えっ、、、?」」



聞き慣れた声と見慣れた存在が突き当たりの家庭科室にあった。



賀喜「今のって、、、!」

早川「うんっ、、、!」



私たちは最後の力を振り絞って、その教室へと走る。


アイツもすぐ後ろにいる。



賀喜「はぁっ、、、はぁっ、、、、、!!」

早川「もう少しっ、、、!」



あと10m、、、5m、、、2m、、、、、、!



「あ゛あ゛っ、、、、、!!」



バタンッ



賀喜、早川「「はぁ、、、はぁ、、、!!」」



何とか間に合ったようだ、、、


扉の外ではアイツがバタバタと扉を叩いてる音がする。


私達が息を整えていると、さっきの声の主が目の前に現れた。



??「2人とも大丈夫?」



早川「何とか大丈夫やけど、、、」

賀喜「でもなんで、、、あやめちゃんがここに、、、」



筒井「まぁ、いろいろ訳があってね〜。」

私たちが探していた筒井あやめがそこにいた。


(後編に続く)

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