「銀河の果ての落とし穴」

「銀河の果ての落とし穴」
エトガル・ケレット

イスラエル気鋭の語り名手、
ケレットの最新短編集です。
星新一がイスラエルで世にも奇妙な物語の脚本を描いた、そんな感じです。
カフカや綾辻行人や村上春樹のような雰囲気もあり、斬新なのに懐かしく、毒があるのに癒される、映像が浮かぶのに文章として既に美しい。
シュールと称されてはいますが、構成が緻密できちんとオチているものが多いです。

イスラエル🇮🇱という舞台というか文化が強烈に効いているものばかりで、ホロコーストや宗教、戦争、科学、ビジネス、そう言ったものの距離が日本よりもずっと密にあるのが新鮮でした。

耐え難い現実に対するツッコミ、
それをひらりと別次元へとずらすボケ。
なぜを繰り返しすぎて疲弊する、
現代社会の喪失感に、ユーモアを。
“ユーモアとは面白さを目掛けて出てくるものではなく、車のエアバッグのように緊急事態に出てくるものです。”


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