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指定難病を患った話9.【ついに診断】

今回はいよいよ心療内科からの勧めで
総合病院に行くお話し。

時は2022年10月4日。
これまでやってこなかった
脳のMRIと神経伝導検査をしてもらい
改めて心の病として向き合うため、
総合病院に向かいました。

毎回ですが診察までの
待ち時間はドキドキです。

診察室に入ると中年の気さくな先生が
出迎えてくれました。

後から知ったのですが、
この先生は某大学病院や
海外でも経験のある副院長さん。

これまでの大学病院と同じように
経過や症状を説明し、
身体の至る所をハンマーのようなもので
叩いたり、力比べしたりしました。

すると

「この状態を心の病と
決めつけるのは早すぎます」と一言。

それから

「身体を叩いた時に出るはずの反応がないので末梢神経がやられている可能性があります」「これまでも針筋電図などを行なってもらっていたようですが、神経の電動速度を測ったり、脳のMRIをとったり、あらゆる可能性をすべて否定してはじめて心の病が否定されます」

とても信頼できる先生!
と嬉しかったです。

そして先生の口からこんな言葉が。

「四肢麻痺で代表的なものとしてはギランバレー症候群という病気がありますが、通常は1〜2ヶ月で進行が止まるものなのでそれ以上進行しているとなるとCIDPという病気が考えられます」「心の病気であれば治ると言ってあげられるけど神経の病気の場合は断言してあげることができません」「まずは検査をしてみましょう」と。

実は病院に行く前から自分の症状に
当てはまる病気を調べに調べて
CIDP (慢性炎症性脱髄性多発神経炎)
という病気なのではないかと
あたりをつけていました。

それでも先生の口から病名がでると
やっぱりそうなのかと
不安が一層増しました。

その日から数日後、
神経伝導速度検査と呼ばれる、
抹消神経の伝達スピードに問題がないか
調べる検査と念のため脳のMRIをとりました。

神経伝導速度検査は腕や足に電極をつけ
接骨院の電気治療のような機械で
電気を流すものでした。

電気を流した部位が勝手に動くので
健常であっても心地よいものとは
言い難いものです。

検査をしてくれた看護師さんから
「両腕が異様に冷たいですがいつもですか?」
と不安の一言が。

「いつもではないです」と伝えると
大きな発泡スチロールに入ったお湯を
検査室まで持ってきて腕を温めはじめました。

不安に思い、
「どうしたんですか?」と聞くと、
「冷たいと伝導速度が遅くなるんです」と。

検査室は私と看護師の密閉空間。
もしかして色々教えてくれるのでは?

恐らく看護師さんは
ただ検査の予約が入って対応しているだけ。

病気の事は何かわかっても
医者ではないので
患者に伝えられないはず。

でも異常があるかないかくらいは
いつもこの検査をやっているならわかるはず。

勝手な想像ですが、密閉空間に
色々答えられないし
聞かれたくない看護師と
色々知りたいし
聞きたい患者の心理戦が
はじまっていました。

黙ってられない私は
「伝導速度速遅いですか?」と直球質問

看護師から
「うーん、少しそうですね〜」と
ハッキリしないものの
何か異常がありそうな回答

また私から
「異常ありそうですか?」と直球質問

看護師から
「少し反応が遅いかもしれませんがこの結果をみてドクターがどう判断するかですね〜」
と教科書通りの回答でした。

うまくかわされた…
でもやっぱりちょっと悪いのか…

次に脳のMRIです。

極度の閉所恐怖症でパニック障害持ちの
自分にとってMRIは究極の恐怖でした。

ただでさえ病気のことで不安なのに
そこにMRIの不安がのっかり、
実はこの時まだ他にも不安なことが
いくつかあり、
人生のどん底ってこんな状態なのかなって
気分になったことを覚えています。

頓服を15分前に飲んで挑み、
無事に終了。

結果は10/18と1週間以上先でした。
この期間は本当に
生きた心地がしませんでした。

ネットでCIDPを調べまくって
Twitterをはじめて
患者さんからの話を聞いたり
とにかく常に病気のことで
頭がいっぱいでした。

調べるとこんな病気でした。
•10万分の1の確率で発症
•38人中33人は治療で改善
•そのうち10名は5〜10年後も再発がない
•完全完治は4%未満
•7〜8割は治療での寛解と再発の繰り返し
•人によって再発頻度はまちまち
•治療は主に3種類
•どの治療法も効かない場合もある
•呼吸機能に影響があることはほぼない
•直接の死因となりうる可能性はない
•稀に治療による合併症を引き起こす

などなど。

この令和の時代、
なんでもネットに情報が
ある分助かりましたが、
不要な心配も生まれます。

そんなこんなで1週間が過ぎ、
いよいよ診断結果の日となりました。

東京の実家から父親もかけつけ、
妻と3人で病院へ。

妻のお父さんもわざわざ
仕事のあいまをぬって
病院にかけつけてくれました。

診察室に呼ばれる数十分の待ち時間が
地獄のように長く感じました。 

運命の2択でした。
どちらに転んでも楽な道のりではありません。

•心の病=転換性障害=完治50%=治療法なし
•神経難病=CIDP=完治4%=治療法あり

心の病であっても環境調整や
カウンセリングなど
これまでやってきた治療を続けるだけで
劇的に変わる薬があるわけじゃありません。

なのですぐに治ることが
見込めない辛さがあります。

妻にも半年以上もの間、
介護や病院の送り迎えで
想像を絶する負担をかけており
この状況がこのまま続けば
メンタルが崩壊しても
おかしくない状況でした。

かといって難病であれば
完治する見込みがほとんどないので、
一生負担をかけることになりますし、
メンタル疾患以上にどうなるか
先が読めない状況になります。

そんな気持ちで診察室に行きました。

そして先生から

「CIDP (慢性炎症性脱髄性多発神経炎)で
ほぼ間違いありません。」

なぜか心は少し落ち着いていました。
なんとなくそうだろうと
考えていたからかもしれません。

ついに身体の病気が見つかった瞬間でした。

症状に気付いて7ヶ月半、
7つの病院を渡り歩いてようやく
たどり着いた結果でした。

いつもは大丈夫だろうと
少し興味なさそうに聞いている妻を
横目でみたら体を乗り出して
不安そうな顔で先生の話を聞いていました。

いつもは病室で質問をとことんして
自分を納得させる私ですが、
「どのような治療法があるんですか?」
「ALSや他の病気の可能性は?」
「また歩けるようになるんですか?」
「この病気で死に…」

先生はなんでも答えてくれました。
でもわかってしまうことが怖くて、
質問すること、理解することを諦めました。

今は病気がわかったことで
前に進めることを喜ぶべきであって、
不安を払拭する時じゃないと
とっさに思いました。

病室から出ると父親が
少し離れたところにある机で
保健所に電話してるのが見えました。

もう70歳を越えている両親より先に
介護が必要になってしまった罪悪感。

結婚してこれから親孝行を
重ねていくはずだったのに。

子供の頃を思い返すと
衰えてみえた父親が必死に難病申請の
電話をしている姿をみて、
涙が出てきました。

とんでもない状況になってしまった。
そんな絶望的な気持ちでした。



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