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 彼のワーキングメモリを解放せよ! 〜『一生使える脳 専門医が教える40代からの新健康常識』を読んで〜

 机の上は、文書の山、そこにも収まり切らないのか、全てのサイドデスクの引き出しまでが開け放たれ、その上にすら書類が置かれる始末。加えて、カップやら、トレーやら、使うのか?使わないのか?よく分からない商品サンプルで埋め尽くされ、デスクマットの下には、貰った名刺が所狭しと乱雑に挟められています。こんな机の持ち主は、往々にして仕事の出来ない人間が多い、なぜならば、ワーキングメモリが、目の前の物で一杯になっており、しっかりと思考出来る環境ではないからです。

 

 ワーキングメモリは、脳内の作戦本部のようなもの。 入ってきた情報を一時的に保存して、脳内の他の情報と組み合わせ、 思考、計算、判断などの知的生産作業を行います。
(長谷川嘉哉著 『一生使える脳 専門医が教える40代からの新健康常識』P.22より引用)

 ワーキングメモリが同時に処理することのできる情報は意外に少なく、せいぜい五つから七つ前後。
(長谷川嘉哉著 『一生使える脳 専門医が教える40代からの新健康常識』P.24より引用)
 
五つから七つのワーキングメモリが飽和状態になると、脳のネットワークがうまく働かなくなり、 作業効率の悪化やミスを招きます。
(長谷川嘉哉著 『一生使える脳 専門医が教える40代からの新健康常識』P.76より引用)

 物があるという事は、そこに存在しているという情報を流していると同義であり、散らかった机上から常に発信を受け続けた彼は、あっという間にワーキングメモリが一杯になります。思考力の低下した脳で、優先順位の高い物ではなく、目の前にある物、もしくは他人が急かしてくるものから手を付けていきます。自分で判断する余裕が、彼にはないのです。そんな場当たり的な対応に追われてしまっては、ビックプロジェクトを完遂させる事は出来ません。大きな成功を掴むためには、事前にロードマップをしっかりと描き、進捗状況を確認し、時には不測事態にも対応しながら、必要があれば軌道修正も加えて、ゴールに向かわなければなりません。自己管理が出来ず、大事を小事の犠牲にするような人間には、とても務まる仕事ではありません。

 では、いったい、どのようにすれば、ワーキングメモリの逼迫を解消出来るのでしょうか?

 もちろん、冒頭で紹介した彼の最初の仕事は、デスク上を整理する事ですが、片付けたところで、そもそもの仕事の進め方、段取りの仕方を変えなければ、元の木阿弥になってしまいます。

 本書では、 「すぐやる、 メモする、書き出す」という3つの方法が紹介されておりますが、それ以外に、私が考える最も重要な対策があります。

 それは、情報を限定する事です。

 どのように処理するか?と、悩むくらいであれば、いっそのこと入ってくる情報自体に制限を掛けて、ワーキングメモリが飽和しないように、減らしてしまえばいいのです。

 マニャーナの法則 「新しい仕事は明日やる」を基本にする仕事術。1日に発生する仕事を集めて類別し、翌日にまとめて処理する。こうすることで1日のバッファー・ゾーンを設けて仕事をする結果となる。マニャーナはスペイン語で「明日」の意味。
(マーク・フォースター著 青木高夫訳 『仕事に追われない仕事術 マニャーナの法則 完全版』P.2より引用)


 今日やる仕事の締切を昨日までとし、突発なものは受付ない、このように、1日のタスクに上限を設けることにより、脳に入ってくる情報をコントロールします。そして、今日受注したもの明日、明日受注したものは明後日行い、それでも溢れるようであれば、優先順位の低い仕事は、断るようにします。NOを言うのは、相手の反応を考えると、とても怖い事ですが、理由を添えた上で「大変申し訳ございませんが、、、」とクッション言葉を用い、それでも粘られるようであれば、「確認します!」と時間を置いてから改めて断る、こういった丁寧な断り方であれば、相手方も受け入れ易いでしょう。

 1日に手掛ける仕事にリミットがある以上、全てを盲目的に受け入れる事は出来ず、どれを受け、どれを断るか、自分で選択する必要が出てきます。それにより、付加価値のある仕事のみをしっかりと選ぶ事が可能になるのです。

 つまり、マニャーナの法則に従い、情報を制限する事によって、ワーキングメモリは解放され、それにより脳のパフォーマンスは上がります。脳力の上がった状態で、付加価値の高い仕事のみに注力出来れば、その効果は絶対で、米国の60%程度しかない日本の労働生産性 (公益財団法人 日本生産性本部 HP 労働生産性の国際比較 参考)の底上げにすら繋がっていくと考えます。

 日本の労働生産性アップのためにも、机上の整理が出来ない彼への教育は非常に重要であり、それは整理整頓から始まり、タスク管理の仕方や仕事の断り方、そして、本当に力を入れるべき付加価値の高い仕事への取り組み方という風に順序立てて行うのが、理想的です。

 ただ、まぁ、実は冒頭の彼は先輩なので、指導する立場に私はないのですが、、、笑

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