キャリア教育で感じたこと

「こだわり」、「近さ」

この言葉がキリンで行われた二日間のキャリア教育活動で印象的だった。


Day 1 : 仙台工場見学


初日はキリン仙台工場でビール製造についての知識を学んだ。

私はあまりビールになじみがなかったため、ビールのそもそもの原料から製造方法、工場での大量生産についてなどすべての内容が新鮮でとても興味深かった。


(左)一番搾り麦汁、(右)二番絞り麦汁
試飲してみると一番搾り麦汁はとろみがあり甘みや香りも濃い。


実際に工場を見学すると、様々な場所でキリンのビールに対する「こだわり」を感じた。

醸造段階では途中でタンク内の製品を一部取り出すことができるようになっていた。
ここでは多くの項目を数値化し、定量的に品質をチェックしているという。

しかし、それだけではなかった。

キリンでは定量的な評価に加えて、味見役による味や香りの評価も行っているとのお話であった。
これは工場という大量生産の現場で多くの作業が自動化されたが、最終的にビールを飲むのは人であるから、人による評価が重要という視点に基づいているという。

今回お話をお聞きしたパッケージングやマーケティングにおいても、それぞれが想いを持って一つの製品を作り上げていることがよく分かった。

このようにビールを飲む人の目線で製品生産を行う姿勢に「こだわり」がつまっていた。



Day 2 : 遠野市ホップ農場見学


二日目は仙台を離れ、岩手県遠野市に向かった。

遠野市は日本におけるホップの産地の一つだそうだ。
私はホップについての知識が全くなかったが、なんとなく外国で生産されていそうというイメージがあった。そのため日本にいながら、ホップが実際に生えている状態を見ることができるこの機会はとても貴重なものだと感じた。
実は前日に乾燥ホップやそれをペレット状にしたものは見せていただいたが、実際にどのように生えているのか想像できなかった。

木になるのか、つるになるのか・・・
数はどれくらいできるのだろう・・・
硬さは?

気になることは数多くあった。

・いざ農場へ


鮮やかな緑!

まず驚いたのは農場のホップの背の高さだ。
見上げるほどの背丈に加えて、ホップの瑞々しい鮮やかな緑に圧倒された。

実際にホップの鞠花を手に取らせていただくと想像していた以上に花弁が硬かった。
半分に割ってみるとホップの香り、苦味のもとである黄色いルプリンが顔をのぞかせていた。


ルプリンは品種によって香りが変わるらしい

半分に割って互いにこすりつけると、葉っぱの青いにおいに混じって酸味のある香りが感じられた。とても心地のいい香りだった。

ホップに関して様々なお話を聞く中で、生産者の高齢化や生産にかかる人件費や機械など経費の問題があることを知った。

ホップは一つの株から複数のつるが成長するため、その中から選抜する必要がある。農地10 a あたり170株ほどあるとのことだったのでその作業量は相当なものであることが想像に難くない。その他にも自分の背丈の何倍もある場所に糸を張る作業やホップ全体に農薬を散布する作業など、維持管理が非常に大変であるというお話だった。

昨今、スマート農業としてITやロボティクスの利用が試みられている。つるの選抜や糸を張る作業は機械への代替は難しいかもしれないが、農薬散布はドローンを利用するなどして負担軽減することはかなり実現的であるのではないだろうか。


・ビールの里プロジェクト

農場見学の後、BrewGoodの田村さんのお話を伺った。
そこで遠野市のホップとビールを軸にした町おこしとそこに関わるキリンの存在について知った。

冷害の多い遠野市で栽培に適する作物が模索されていたなかで見つかったのがホップであった。しかしホップの栽培方法は未知の領域であったという。遠野市はキリンと協力しながらホップの栽培を確立させていき、1986年にはキリンに関わるホップ農業協同組合の中で、遠野市が第1位の生産量となった。
しかしながら、徐々にホップ農家が減少していたため遠野市とキリンがタッグを組んでビールを軸とした地域の活性化を図るTKプロジェクトが開始した。


これらの事実を知って、驚きそして遠野市とキリンとの「近さ」を感じた。企業とその契約農家はあくまでビジネス上の関係で、シビアなものであるイメージを持っていた。しかし、遠野市とキリンとの関係は私がイメージしていたビジネスの関係よりも近いものだという印象を受けた。

ただこの関係もキリン側としてはCSV(Creating Shared Value)という考え方に基づいていて単純な善意でないということも個人的に納得ができた。

※CSVとは
社会的ニーズや社会問題の解決に取り組むことで社会的価値の創出と経済的価値の創出を実現し、成長の次なる推進力にしていくこと。


これらの経験を経て、あまり手にしてこなかったビールに対して興味がわいてきた。背景にある仙台工場や遠野のことを思い出すと今までとは少し違った味に感じるのかもしれない。

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