LIV MOON ’OUR STORIES’を聴いて

寒さが厳しくなり、日本海側、特に新潟に方では記録的な大雪を記録している2022年12月。
日本のシンフォニックメタルバンド、LIV MOONが前作から約6年ぶり、フルアルバムとしては約10年ぶりにニューアルバムを発表した。

そのニューアルバムのデラックスエディションを手に取り、聞き入った感想を簡単に綴ってみたいと思う。


まず控えめに言って最高だという結論を述べておきたい。
それは疑いようがない。
50分に満たないアルバムだが、素晴らしいことこの上ない。

その上で何周も聞き入ってみて、自分なりに思うのは、
これまでのLIV MOONが「優雅な鳥」ならば、
本作は「地を駆け抜ける獣」
それが楽曲、音像、アルバムをトータルで鑑みて感じる感想だ。


良くも悪くも、これまでのLIV MOON楽曲は、
どこか整った枠の中での演舞のような印象を持っていた。
もっとも、作風の中の演者の一人として舞台に表現を投影することの方が、
元宝塚で舞台が主戦場のAKANE LIVとしては自然なのかもしれない。
そもそもLIV MOONはプロジェクトなので、
FIXのバンドサウンドのようなものを追いかけること自体が
間違っているのかもしれない。
ただどこか綺麗にまとまっている印象は持っていた。

まあなんだかんだ言って楽曲は全部聞いてきたしライブにも通っていたので
今回のアルバムを楽しみしていた。
(2019年に10周年ライブに行って久々のLIV MOONに感激し、
帰りに現場でISAOさんに握手してもらったのは良い思い出)


前作「R.E.D」からでも6年をかけ発表された本作。
事前にトレーラーを聞いただけだと、作風的には大分パワーメタル側に寄ったかなと予想していたのだが、意外とそんなことはなく、むしろ狂気とダイナミズムを孕んだシンフォニックメタルにブラッシュアップされた傑作になったと思う。

何より、何か籠の外に出た、
枠の外に出た感じがしたのが嬉しかったというか、
結果LIV MOONを聞いていて一番衝動を突き動かされるアルバムに
なっている。
その一因として、やはりLIV MOONを支えているメンバーを含む新たな作曲者の楽曲が強いのがポイントだろう。

なんと言ってもAddictionの破壊力がすごい。
過去作の中でもダントツのキラーだと思う。
KENTARO氏、わかってるねー!という感じである。
この曲には過去のLIV MOONに足りなかったスリルが
内包されていると感じる。

MASAKI作曲のEl Doradoにしても、
煽動的な重心の低い楽曲で、
これまでのLIV MOONにはないストレートロック調ということで
過去楽曲群の中ではむしろフックになるのではないか。
オーディエンスの拳が振り上がる様子が思い浮かぶ。

原澤秀樹楽曲は、MAHATMA楽曲を聴きまくっている筆者にとっては、秀樹節と感じる構成が随所に見えてニヤニヤするところ。
MAHATMAでもRomanceやWith love in my heartなどのシンフォニックで起伏の多い大作を作っているので、LIV MOONとの親和性は元々高かったとも思う。
ドラムのえげつなさは言うに及ばず。
今作でギターでも参加しているISAO氏からは何年かに1人しか出てこない凄い人と評され、その実力を買われ浜田麻里バンドに参加する超実力派の
異常な手数は本作でも遺憾無く発揮されている。

そして星野沙織作曲のAnemone。
各所インタビューを見る限り、本作の核となる楽曲がこれになるようだが、
静から動へのダイナミズムが堪能できる曲である。
メタルに触れている彼女だからこそ生まれてくる楽曲と言えるのではないか。

こうした新たな息吹に囲まれてか、西脇、KAZSIN楽曲も以前からのテイストを踏襲した作風ながらも、明らかに強い輝きを放っていると感じる。

プロダクションについても触れておきたい。
すなわち、仁耶の貢献はかなり大きいのではないか。
Unlucky Morpehusのギタリストである彼は、
星野沙織、ISAOによるsoLiのサポートを行っていることに加え、
Unlucky MorpheusにおいてヴァイオリンのJillを相方に、
ギターとヴァイオリンの激しいツインリードをステージで披露している。
本作の肝とも言える、メタルとヴァイオリンソロを絶妙に融合させるという観点に立った時、その意図を汲み取る立場として、
彼は適任だったのではなかろうか。
バンド録音をしている曲では楽器の分離が良く、とりわけMASAKIのベースが明らかによく聞こえるのは、仁耶の功績が大きいだろう。

元々がNightwishを聞いたことが端となって始まったプロジェクトであるが、
もはやNightwish的なシンフォニックメタルをここに求めるのは違う。
よく世界のシーンを見回して、古き良き時代のメタルがまだ生き残ってるのが日本だと最近言われてきている。
ただでさえ国内でこの手のシンフォニックメタルをやっているバンドは稀有だ。ぜひ多くの人の耳に届いてほしい。
中々これまで大々的で活発な活動が難しかったLIV MOONだが、
これだけの作品を生み出しているのだから、是非また積極的に活動してもらいたいところである。

いやはや、今作を反映させたライブが俄然見たくなった。


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