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映画の心

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Amazon Prime Videoで見れる文芸映画を中心に映画が訴えていることを映画の評論ではなく、作品論として独自の視点で捉え、思ったこと、感じたことを綴っています。取り上げ…
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2024年3月の記事一覧

『晩菊』(原作:林芙美子 1954年6月22日公開)を観て

この映画は、女性にとってはある意味痛快なお話だと思う。確かに女性に人気があった作家ということは感じれた。男をコケにして、ドライな女心を描いていて、娯楽小説という表現は失礼かも知れないが、当時、気軽に読めて、楽しめるものだったに違いないと思った。 派手な起承転結がないのがこの映画の特徴でもあり、どこから観始めて、何処でやめても良いという日常をあらわしている。登場人物は、おきん(元芸者で今は不動産と金貸しで生計を立てている)、おとみとたまえ(おきんと一緒にやっていた元芸者で、お

『破戒』(原作:島崎藤村 1962年4月6日公開)を観て

映画化3回、テレビドラマ化3回と多く取り上げられている『破戒』、この映画を観るに当たっては、いつもの通り予備知識なし、写真から想像するにやや重い映画だろうと想像し観ることにした。古い原作のものは、古い映画を観たくなるもので、今回も最新のものではなく、2作目の作品を見ることにした。観終わって、この映画について感想を述べて良いものか、と思うぐらいに複雑な心境にさせられる映画であった。 ストーリーに入るとしよう。主役は、小諸の被差別部落出身で小学校の先生をしている男・瀬川丑松(市