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盛者必衰…とはいえ、背景がありますね

標高1,000m、八ヶ岳南麓の高原に広がるリゾート地。ここは、雄大な自然に囲まれた人気のスポット「八ヶ岳リゾートアウトレット」。澄んだ空気に癒されながら、愛犬と気ままにショッピングを楽しむ1日は何とも楽しいもの。すぐ近くの森にはドッグランや散歩コースが設置され、ショッピング以外の魅力もばっちりです。

inspiration of JAPAN/全日空HP

山梨県北杜市小淵沢町にあるショッピングモール「八ヶ岳リゾートアウトレット」の運営会社は、6月1日で事業を停止していたそうで、近く東京地裁に自己破産の手続きを申し立てるとのこと。負債額は現時点で15億円と見込まれ、土地、建物を貸していた地元市や地元財産区は、賃借料の滞納額約6千万円もの返済を迫っていたようですから、前々から業績は宜しくなかったのでしょう。

風光明媚で観光客が集まって来ても、消費する機会が用意されなければ清掃費用が嵩むばかりで、地元にとってはむしろ迷惑です。そこで、こうしたショッピング施設を用意するという発想に向かうのは理解できなくもないのですが、商店を集めるモールビジネスは、風俗業のキャバクラやスナックと同じで人気のあるホステスならぬテナントを確保することが肝となります。

事業者が口説いて有名どころのテナントを呼び込んできても、期待以上に儲けが出なければ出て行ってしまうのは当然です。その結果、集客力が低下して、残っていた2番人気以下のテナントも移転を考えることになり、起死回生のスタア店舗の誘致に成功するような奇跡が起きなければ、施設廃止は不可避となります。

モールと言えば、イオンモールが全国各地で猛威を振るっておりますが、テナント誘致担当者の奮闘には凄まじさを感じます。良さげなところには声を掛けまくる・・・ナンパ師のごとき精神性がなければ成果は覚束ないことでしょう。駅前商店街を潰したとか何とか、いろいろ批判されるイオンモールですが、夢よ再び!と祈って不動産を抱えている駅前店舗のオーナー各位よりも努力を重ねていることは確かです。

ところで、立憲民主党の岡田氏が街頭演説で「この駅前通りの衰退は自民党の失政」とか訴えたところで、ジャスコ(イオン)のせいだ!というヤジが飛び、その光景がSNSで広がったという話がありました。この話の真偽はアヤシイそうですが、駅前商店街の衰退を断固回避するとしたら、イオンの得意とするロードサイドの農地を転用して店舗展開するあの戦略は実現できないので、岡田氏の政治活動もここまで出来たかどうか、そこからアヤシイことになります。なので、もしも本当に言っていたらアホ過ぎます。

八ヶ岳リゾートアウトレットは、中央自動車道・小淵沢ICに近く、周辺には温浴施設や道の駅があり、スケートセンター利用者への割引サービスも提供していたということで、基本的に観光客狙いの立地とみてよさそうです。2001年開設でここまで営業できたのですから目論見は悪くなかったと思われます。未収金が6千万円になるまで地元市が我慢したのは、良い時期があったからのことでしょう。

ただ、直接の原因が新型コロナ感染症による交流人口の激減であったとしても、回復期に入っても人気テナントから契約申し込みがなかったということは、そもそも新戦略を必要とする時期にあったのだろうと推察します。イオンの場合は、さっさと撤退するという地域振興の業界では悪名の高い行動に出るところですが、地元市が絡んだ施設となればそういう訳にもいかず、立地環境に限界を感じても、企画力で何とかするほかありません。

しかしながら、そういう企画プロデュース能力のある人材は簡単に確保できませんので、下り坂に入った集客施設を回復させるのは難しい話です。何故、その手の人材が希少なのか?我が国の学校教育で、その手の能力が評価され、育成される機会がまったくないことに原因があると思います。

大英帝国(現代)の場合、チャリティー企画能力を幼少のころから養う機会が多いと伺いました。例えば、福祉施設に寄付をしよう!となったら、親に言って小銭を集めてくるのではなく、子供たちが音楽や演劇の練習をして、入場券を売り、会場で募金を集めて、収益を寄付するという流れが一般的なのだとか。ここで企画力を錬成する訳です。工業力は低いわりに経済力が強い大英帝国は、仕組みづくりに長けています。ロイズ保険組合という保険市場システムを握っていることから、他国が生産して売り先を見つけた貨物が需要地に運ばれるまでの損害保険(≒リスク商品)を売り買いすることで、エレガントに金儲けをしています。

企画プロデュース力の錬成こそ、我が国の未来に不可欠の課題です。


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