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読書エッセイ① 童話『いやいやえん』は、成長しないのが魅力かも

家族共通の本箱をのぞいてみたのは、何年ぶりだろうか。居間の隅にある本箱を、いつも見るとは無しに見ていたが、何年も開けることはなかった。

パンパンに詰まっていた本も、いつの間にか、母が整理したようで、今はストレスなく取り出せるくらいの量になっている。

その中から手にとったのは、中川李枝子さんの『いやいやえん』。ちゅーりっぷ保育園に通う4歳のしげるくんの日常が、ファンタジーの要素を織り交ぜて描かれている。

保育園の約束事をすぐに忘れてしまう。しかられると人のせいにする。元気いっぱい、わがままいっぱいのしげるくんは、自分のわがままのせいで、ちょっとしたピンチを招いては、周囲の人に助けてもらう。

この本は、子どもが、大人の都合よく成長しないところが魅力かもしれない。7つある話の中で、しげるくんメーンの話では、いつも、しげるくんは忘れっぽくて、わがままだ。

ただ最後の話「いやいやえん」は、少し違う。好きなことだけすればよい保育園「いやいやえん」で1日過ごしたしげるくん。帰り際に「明日もおいで」と言われると、「いや、もう、こない」「ちゅーりっぷ保育園のほうがおもしろい」と答える。何かを感じたのかもしれないが、しげるくんは、やっぱり明日もわがままだろう。

家の『いやいやえん』は、1974年7月の第33刷。日に焼けて、染みだらけ。汚れた手でめくってついたと思われる汚れも多数ある。こんな状態の本でも、残しておいてくれた母には感謝だ。

今の時代に合わない表現もあるけれど、相通じるテーマも多い。久しぶりに読んで、イヤイヤ期の子どもには敵わないと改めて思い、保育園児に振り回される「おおかみ」には悲哀を感じた。すっかり大人目線になっている。

この本を、子どもの私はどんな気持ちで読んだのだろう? 覚えていないが、しげるくんのわがままに、イラッとしたのは間違いないな、と思った。

お読みいただき、ありがとうございました🍀

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