表現の違いだけじゃなく本質が違った

 テニスにおけるスマッシュについて、昔と今では教え方が違っていた。テニススクールでスマッシュの練習をしていたときのことだ。新しく着任したコーチから聞こえてくる言葉に耳を疑った。サッカーボールを胸でトラップするようにボールを捉える。どういうことだ?右利きならば、左手を斜め前にかざしてボールを掴むタイミングに合わせて打つんじゃないのか?少なくとも以前はそう教わっていた。コーチに理由を聞こうと思ったが、そのときは、単に表現方法が違うだけで、打点が変わったわけではないだろうと思っていた。

 翌週、スマッシュの練習のとき、2通りの方法で打ってみた。違う。打点が明らかに違う。これは表現方法の違いだけでは説明がつかない。胸でトラップするタイミングの方が強くて速いボールが打てるのだ。これは面白いことに気づいた。レッスン終了後、コーチに感じたことをそのまま聞いてみると、予想した通り、表現方法の違いではなく、打点が異なっていた。
 
 なぜ胸でトラップするように打つと強いボールが打てるのか。それはラケットのスイングスピードが最も加速したときにボールが当たると最速のスピードボールが打てるからだ。ラケットを振り始めるとき、スイングスピードはまだ序の口だ。そこから序二段、三段目、幕下、、、と続いてスピードが乗ってきて、最速の関脇、大関へと昇進してゆくのだ。つまり丁度大関のタイミングが胸でトラップするように打つ打点ということだ。

 しかし驚いたのは、この先のコーチの言葉だった。「振り遅れが一番速い」一瞬頭の中がはてなマークになった。つまり、ストロークの打点を考えると身体の前で打つのだが、そのタイミングでは最速のショットは打てない。身体の前で打つということは、スピードとコントロールのトレードオフをするということ。つまり、ボールを強く打つことと、ボールを狙った場所に正確に当てることの間でバランスを取るということだ。

 さて、我々の日常生活でも遅れることのメリットはある。昔、日テレの高校生クイズに出たときのことだ。東京ドームではなく、後楽園球場での出来事だ。僕ら悪がきチームは、観客席で順調にマルバツクイズをクリアし、野球場の中に入り問題を解くことになった。そこでの問題は難しく答がわからなかったので、何問か続けて群衆の波に乗った。途中、群衆の波から反対の答を選んだグループは客席から喝采を浴びたが、敗残者となり散っていった。どんどん人数が狭まる中、僕たちは最終的に勝ち残り関東代表となった。その後の結果はさておき、福留さん、今何してるんだろう。何だか締まりのない結末になりそうだ。それじゃあ、ズームアウト。



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