【AI と著作権】海賊版サイトからの学習に否定的な企業のパブコメ(ふろくあり)


AIと著作権に関するパブコメのうち海賊版サイトからの学習に否定的な意見を持つ17企業・団体をピックアップした。

6月10日09:00追記
・文化審議会著作権分科会法制度小委員会内で、海賊版サイトに関して述べていたもののうち重要だと思うものをピックアップの上追記
・1団体追加

6月10日12:00追記
前提知識(機械学習パラダイスの論文)を追記

【当NOTEを読む前の前提知識】

以下の論文(2021)のとおり、情報解析においては
欧州指令→違法サイトから収集した著作物の情報解析は許容されない
日本→許容される
との記載があった。

第三に,日本の規定は,適法に取得した著作物等でなくても適用される.この点,欧州指令においては,適法 に入手した著作物等の利用であることが権利制限の条件になっているため,例えば,違法サイトからダウンロー ドして収集した著作物等を情報解析することは許容されない.これに対して,日本法のもとでは,たとえ海賊版サイトなどの違法サイトからダウンロードして収集した著作物等であっても情報解析の目的であれば許容され得るのである.ネット上には違法にアップされたコンテンツも多いことから,これも情報解析ないし機械学習にとって有用な点といえよう.

情報解析と著作権 「機械学習パラダイス」としての日本 
上野達弘 2021 人工知能学会誌


以下、海賊版サイトからの学習に否定的なパブリックコメント(団体)を列挙する。

IFPI(国際レコード産業連盟)

○項目名 5.(1)エ(オ)海賊版等の権利侵害複製物を AI 学習のため複製することについて
○意見
権利者の利益を不当に害しないことを要件とする法第 30 条の4ただし書及び国際条約上のスリーステップテストに照らし、違法なソースからのコンテンツは、AI モデルでの利用が認められるべきではない。また、同条を国際条約と適合するように解釈するならば、コンテンツへの適法アクセス要件も必要であり、そうでないとすれば、従前より海賊版対策を行っている権利者の利益を不当に害することになる。AI 開発者は(権利侵害コンテンツがウェブサイトに含まれていることを知らない限り、)いかなるウェブサイトからも収集できるとの解釈は、既に深刻化している問題を悪化させるとともに、権利侵害コンテンツの存在に意図的に目をつむることを助長するものであり、強く否定されるべきである。 また、25 頁 2 行目以下の記述に関し、AI モデル開発者による著作物の学習利用は、それ自体の直接侵害責任とは別に、AI 生成物に係る侵害責任を生じさせる要素であることを明確にすべきである。

IFPI(国際レコード産業連盟)

一般社団法人学術著作権協会

エ 著作権者の利益を不当に害することとなる場合の具体例について
(オ)海賊版等の権利侵害複製物を AI 学習のために複製することについて
AI のための学習データの収集をインターネット上で行う際に、対象となるデータが権利侵害物であるか否かを当該 AI もしくは開発事業者側で判断することは困難であることは本素案において指摘されている通りです。また、クローラーによる Web サイトへのアクセスを制限する“robots.txt”等の技術的な措置が講じられている場合、多くの事業者が権利者の意思を尊重し、当該サイトからの学習データの収集は行わない対応がなされています。しかしながら、権利者が正規の Web サイトにおいて上述の措置を講じたとしても、海賊版等の権利侵害物を掲載している Web サイトでそのような技術が講じられることはないため、権利者の意思が反映されません。事業者においては、少なくとも権利者等により海賊版等の権利侵害複製物を掲載しているとの情報提供のあった Web サイトについては、学習データ収集の対象から除外するとともに、そのための情報提供窓口を設置することを要望します。

一般社団法人学術著作権協会

一般社団法人日本アニメフィルム文化連盟

5 「(1)学習・開発段階」「エ 著作権者の利益を不当に害することとなる場合の具体例について」「(オ)海賊版等の権利侵害複製物をAI学習のため複製することについて」(本素案23ー25頁)について
本素案では、「特に、ウェブサイトが海賊版等の権利侵害複製物を掲載していることを知りながら、当該ウェブサイトから学習データの収集を行うといった行為は、厳にこれを慎むべきものである。」と記載されていますが、これでは表現が弱いと感じます。当該ウェブサイトが海賊版等の権利侵害複製物を掲載していると知りながらデータ収集を行うことは海賊版を助長する行為であり、明確に権利違反、犯罪に該当すると明記いただきたいと考えます。本素案にも別途記載のあるとおり、我が国の著作権法と海賊版は長い戦いの渦中にあります。それにもかかわらず、敵に塩を送るような表現をこそ厳に慎んでいただきたいと考えます。
なお、例えばEUにおけるDSM指令では、「適法にアクセスする著作物または他の保護対象物」を学習対象として掲げており、海賊版等の権利侵害複製物を学習すること自体を認めていません。長く海賊版との戦いを続け、少しずつでも着実な成果を上げてきた日本において、海賊版等の権利侵害複製物からの学習を看過することはおよそ背理と評価せざるを得ないと考えます。

一般社団法人日本アニメフィルム文化連盟

一般社団法人日本映像ソフト協会

文化審議会著作権分科会法制度小委員会が取りまとめた「AI と著作権に関する考え方について(素案)」
における「5.各論点について(1)学習・開発段階(オ)海賊版等の権利侵害複製物を AI 学習のため複製することについて」に関して、以下のよう意見を述べます。
今日のデジタル化・ネットワーク化の進展、高機能端末の世界的な普及、そして 5G といった通信技術の運用などの社会環境により、我々の生活は豊かになる一方で、我が国のアニメ、マンガをはじめとするコンテンツの権利侵害と被害は甚大となっている。個人で簡単にコンテンツを複製し、瞬時に国境を越えて配信することが可能となっている。海賊版サイトなどを運営する侵害者等は、これら海賊版を無料で広く視聴させることで、そのアクセス数を稼ぎ、その数に応じて、掲載される広告料によって利益をあげているのが基本的なビジネスモデルである。
このような背景のなか、AI 開発事業者や AI サービス提供事業者が、海賊版を掲載しているウェブサイトから海賊版を学習データとして収集し学習・開発を行うといった行為は、我々権利者としては到底に容認できるものではなく、海外の権利者からも日本が著作権法で何ら規制しないことによって、海賊版に寛容な国であり、海賊版を活用し AI 学習・開発できる格好の国として批判を受けることが想定される。
ついては、海賊版を掲載しているウェブサイトから海賊版を学習データとして収集し学習・開発を行う行為は、少なくとも海賊版であることを知りながら、又はその認識を通常有するべきであった場合には、ただし書きに該当する旨を記載するよう強く求めたい。

また、AI 開発事業者や AI サービス提供事業者においては、海賊版による AI 学習・開発に留意する立場から、権利者団体とその防止に向けた協議を定期的に設けるなど能動的な対応が求められる。
AI 開発事業者や AI サービス提供事業者との間においては、権利者側の意向に配慮した取り組みが実施されることを期待したい。

一般社団法人日本映像ソフト協会

一般社団法人日本音楽出版社協会

(1)学習・開発段階(2)生成・利用段階について
特定のクリエイターが創作した著作物を、その創作的表現の影響を強く受けた生成物を出力させることを目的として学習用データとして利用することは、当該出力が必ずしも創作的な表現部分の再現を伴わないものであるとしても(作風等の模倣に過ぎないと評価されるものであるとしても)享受目的が存在すると考えるべきであり、また、権利者が自ら権利を保有する著作物を学習データとして販売等することも考えられることから、少なくとも「権利者の利益を不当に害することとなる場合」に該当すると考える。そして、こうした学習に対する権利者による自衛を可能とするという観点から、透明性の確保とそれを担保するための義務や救済制度の確立につき検討を行うべきである。また、AI 学習の素材に海賊版等の権利侵害複製物を用いることは、著作権法第 30 条の 4 但書の「権利者の利益を不当に害する」場合に当たる旨を明記すべきである。さらには AI 学習を拒絶する権利者の意思表示が明確である場合や AI 学習のための複製等を防止する技術的な措置が講じられている著作物等を学習データとして用いることも同様に、著作権法第 30 条の4 但書の「権利者の利益を不当に害する」場合に当たる旨を明記すべきである。

一般社団法人日本音楽出版社協会

一般社団法人日本雑誌協会・一般社団法人日本書籍出版協会・一般社団法人デジタル出版者連盟

(2) 海賊版等の権利侵害複製物を AI 学習のために複製することについて
海賊版などの権利侵害複製物により我が国のコンテンツ産業が受ける被害は甚大であり、例えば、令和5年1年間に漫画の海賊版サイトでタダ読みされた金額は、一般社団法人 ABJ の調べによると約 3818 億円にも達している1。
素案においては、AI 学習者が利用しようとする著作物が権利侵害複製物であるか否かを判断するのは現実的に難しいとした上で、権利侵害複製物であることを知りながら利用する場合には権利制限の範囲を逸脱することとなり、侵害の責任を問われる可能性が高いとしている。この考え方は方向性としては適当であると考える。
しかしながら、利用者の善意悪意を問わず、海賊版の機械学習が認められること自体が、当然ながら生成・利用段階における権利侵害の可能性に直結することは容易に予想される。
令和 5 年の著作権法改正に際しては、「著作者等の権利・利益の保護」の面で損害賠償額の算定方法の見直しが図られたものの、被害者である権利者に係る立証責任や、訴訟費用といった負担が依然大きいまま状況は変わっていない。
被侵害者の実効的な救済に向け、権利者が侵害者の情報を把握することが困難である現状を是正するための方策の検討、ストリーミング型の著作権侵害への対応、海賊版対策に限定した形での損害賠償におけるさらなる「懲罰的な効果」導入の検討等の課題がいまだ残っている。

今後も各種技術の進展が見込まれるが、適正な機械学習の環境実現のため、AI 開発事業者・AI サービス提供者への注意喚起とともに、海賊版などの権利侵害複製物と知りながら学習・開発段階で利用することを防止するために法改正等の必要な措置を講じて、海賊版が機械学習されないようにすることを望む。

一般社団法人日本雑誌協会・一般社団法人日本書籍出版協会・一般社団法人デジタル出版者連盟

一般社団法人日本新聞協会

(オ)海賊版等の権利侵害複製物を AI 学習のため複製することについて
<意見>
生成 AI による海賊版サイトからのデータ収集を防ぐことも、喫緊の課題である。
素案が、「生成・利用段階においては、既存の著作物の著作権侵害が生じた場合、AI 開発事業者又は AIサービス提供事業者も、当該侵害行為の規範的な主体として責任を負う場合があり得る」としたのは、妥当だ。
素案が指摘する通り、「ウェブサイトが海賊版等の権利侵害複製物を掲載していることを知りながら、当該ウェブサイトから学習データの収集を行うといった行為は、厳にこれを慎むべきもの」である。
さらに、素案は、「AI 開発事業者や AI サービス提供事業者が、ウェブサイトが海賊版等の権利侵害複製物を掲載していることを知りながら、当該ウェブサイトから学習データの収集を行ったという事実は、これにより開発された生成 AI により生じる著作権侵害についての規範的な行為主体の認定に当たり、その総合的な考慮の一要素として、当該事業者が関与の程度に照らして、規範的な行為主体として侵害の責任を問われる可能性を高める」と明記した。
生成 AI が海賊版サイトから報道コンテンツを収集することは、報道各社に対する権利侵害に加担するのと同じである。海賊版サイトからの収集をやめない生成 AI の開発事業者やサービス提供事業者の責任は極めて重く、早急に対応を改めるべきだ。

一般社団法人日本新聞協会

一般社団法人日本民間放送連盟

(オ)海賊版等の権利侵害複製物を AI 学習のため複製することについて(P.23)
・ 「インターネット上のデータが海賊版等の権利侵害複製物であるか否かは、究極的には当該複製物に係る著作物の著作権者でなければ判断は難し」いため、「AI学習のため、インターネット上において学習データ
を収集する場合、収集対象のデータに、海賊版等の、著作権を侵害してアップロードされた複製物が含まれている場合もあり得る」としたうえで、AI事業者に対し、「新たな海賊版の増加といった権利侵害を助長する
ものとならないよう十分配慮した上でこれ(注:学習データの収集)を行うことが求められる」、「特に、ウェブサイトが海賊版等の権利侵害複製物を掲載していることを知りながら、当該ウェブサイトから学習データの収集を行うといった行為は、厳にこれを慎むべきものである」としています。しかし、このようなモラルに訴える対応では不十分と考えます。海賊版等の権利侵害複製物を利用した学習は厳に罰すべきであり、さらに踏み込んだ規制を著作権法および著作権法以外の枠組みや技術による対応なども含め検討することを要望いたします。

一般社団法人日本民間放送連盟

一般社団法人日本レコード協会

○項目名 5.(1)エ(オ)海賊版等の権利侵害複製物を AI 学習のため複製することについて
○意見
海賊版等の権利侵害物を用いた学習・開発を行うべきでないことは論を俟たないところであり、ウェブサイトに掲載されている情報が海賊版等の権利侵害物であることを知っている場合又は知るべきであった相当の理由がある場合(権利侵害物を多数アップロードしている海賊版ウェブサイトからの学習など)は、法第 30 条の 4 ただし書に該当するものとして権利制限の対象外とすべきである。同条ただし書の解釈に当たっては、我が国も加入する著作権・著作隣接権関係条約に定められているスリーステップテストと整合する解釈手法を採用するのが適当であり、海賊版ウェブサイトの運営者に広告収入その他の金銭的利益を生じさせ、権利侵害行為を助長するような事態はあってはならない。また、海賊版等の権利侵害物からの学習を禁止しないとすれば、権利者が AI 開発者等に良質な学習用データセットを提供していくといった取組みの足枷になりかねない。
また、意図的に権利侵害物を用いて機械学習を行った AI 開発事業者や AI サービス提供事業者は、AI生成物に係る著作権等侵害について規範的な行為主体として侵害責任を問われる可能性が高まるとされているが(24 頁 下から 6 行目以下)、個別事案によっては、権利侵害物を学習した AI モデルが法第 112 条第 2 項によって廃棄請求の対象になり得ることにも言及すべきである。

一般社団法人日本レコード協会

AI に関する音楽団体協議会

エ(オ)「海賊版等の権利侵害複製物を AI 学習のために複製することについて」
〇意 見
AI 学習の素材に海賊版等の権利侵害複製物を使うことは禁止するべきです。
素案では、「海賊版等の権利侵害複製物を掲載していることを知りながら、当該ウェブサイトから学習データの収集を行うといった行為は、厳にこれを慎むべき」(24 頁)としていますが、これでは不適法ではないというメッセージを発信することになってしまい、権利者の利益が不当に損なわれる懸念があます。AI 学習の素材に海賊版等の権利侵害複製物を使うことは「権利者の利益を不当に害することとなる」旨を明記すべきです。

AI に関する音楽団体協議会

 オンライン海賊版対策に従事している弁護士の会

海賊版サイトから海賊版をAI学習のために複製することは、少なくとも学習データの収集を行おうとする者がそのことを知っていた場合又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある場合には、著作権者の利益を不当に害するものであって、厳に慎むべきものであるにとどまらず、原則として本ただし書に該当して許容されないものと整理されるべきであると考えます。

オンライン海賊版対策に従事している弁護士の会

株式会社新潮社

今後も各種技術の進展が見込まれるが、適正な機械学習の環境実現のため、AI 開発事業者・AI サービス提供者への注意喚起とともに、海賊版などの権利侵害複製物と知りながら学習・開発段階で利用することを防止するために法改正等の必要な措置を講じて、海賊版が機械学習されないようにすることを望む。
加えて、そもそもデジタル空間における海賊版の蔓延を防止する上でも、著作権に関する教育と啓発がこれまで不足しており、政府による周知活動が今以上に必要と考える。

株式会社新潮社

株式会社日本国際映画著作権協会

私たちは、文化庁が日本におけるオンライン海賊版の状況を定期的に評価し、適切な対策の開発と実行を促進・奨励し、また、生成 AI ツール・システムの学習で利用される著作物の新たな/拡大するライセンス市場と著作権法第 30 条の 4 との関係を具体的に検討することを強く希望いたします(注4)。合法的なアクセスの回避が横行し、著作権法第 30 条の 4 が日本における上記ライセンス市場の活動や発展を阻害していることを文化庁が確認した、またはその証拠を提示された場合、文化庁は、生成 AI システム・ツールの学習に関する海賊版サイトへのアクセス促進を防止するため、TDM にかかる著作権の権利制限に関する世界的な規範に合致するように、著作権法第 30 条の 4 に基づく TDM は適法なアクセスが要件となることを(追加的なガイドライン等により)明確化することを含め、追加的措置をとることを検討すべきと考えます。

株式会社日本国際映画著作権協会

クリエイターとAIの未来を考える会

(オ)に示された海賊版等の権利侵害副生物を AI 学習のために複製を行う場合については、これにより 開発された生成 AI による生成・利用段階で生じる著作権侵害のみだけでなく、権利侵害副生物を AI 学習 に使用すること自体に罰則規定を設ける必要がある。現在使用されている画像生成 AI は、Danbooru 等 の無断転載が横行する Web サイトの画像を意図的に使用しており、権利侵害副生物の学習段階における罰則規定なくして実効性は持たない。

クリエイターとAIの未来を考える会

公益社団法人日本芸能実演家団体協議会実演家著作隣接権センター

(オ)海賊版等の権利侵害複製物をAI学習のため複製することについて
素案23頁以下では、海賊版等の権利侵害複製物を学習データとして収集する際には、権利侵害を助長するものとならないよう十分な配慮を求め、海賊版であることを知りながら、学習データとして収集することは、厳にこれを慎むべきであるとするにとどまり、法30条の4の適用対象外となるか否かについての考え方は示されていない。海賊版等の権利侵害複製物が生成AIの学習のために用いられ、大量かつ安易に生成物が生成され、インターネットなど通じて流通すれば、正規の著作物の流通を阻害することは明らかである。
したがって、海賊版等の権利侵害複製物をAI学習のために複製することに、法30条の4の権利制限規定を適用すべきではない。

公益社団法人日本芸能実演家団体協議会実演家著作隣接権センター

ソフトバンク株式会社

2.海賊版等の権利侵害複製物を AI 学習のため複製することについて(本素案 P.23)
「新たな海賊版の増加といった権利侵害を助長するものとならないよう十分配慮」する考え方に大いに賛同する。
一方、権利者の視点から見た場合、このような記載がどこまで海賊版対策への法的実効力を有するかは疑問である。また、「海賊版等」には SNS でのユーザ投稿等を含む広い概念と解釈できることから、著作権法 30 条の4との関係でその射程が不明瞭である。
更なる実効的かつ強力な海賊版対策への取り組みに向けて、本素案への記載を急ぐことは避け、令和2年改訂のインターネット上の海賊版対策の強化(リーチサイト対策、コンテンツのダウンロード違法化)検討と同様に、適切な関係者を巻き込んだ法的論理に基づくハードローによる対応を希望する。

ソフトバンク株式会社

日本音楽家ユニオン

・「6.最後に」(P37)において「諸外国の著作権制度との調和、他の知的財産法における議論の動向なども見据えつつ」とある。既にEUでは 2019 年に採択されたデジタル単一市場における著作権指令(DSM指令)において、海賊版からの学習を制限する先進的な規定をしている。
・権利制限規定のあり方について、再検討を望みたい。

日本音楽家ユニオン


最後に(6月10日追記)

文化審議会著作権分科会法制度小委員会内で、海賊版サイトに関して述べていたもののうち重要だと思うものをピックアップする。

島並良 神戸大学大学院法学研究科 教授(第五回著作権分科会法制度小委員会内での発言)

それから、続いて第2の点ですけれども、福井委員から御指摘のあった海賊版の問題です。私も心情としては、海賊版に対する規制が、その被害の大きさを考えると今後も政策としては必要であるということはよく分かるんですが、海賊版であることの認識を持っていることをもって、それだけでただし書の文言に当てはまるというのは、現行法の規定からして素直に読み取れるのかなという懸念があります。
と申しますのは、ただし書には、御案内のとおり、著作物の種類、用途、それから当該利用の態様に照らしてという、いわば判断要素に関する限定文言がございまして、この中に利用者の意図を読み込めるのかについては、さらに検討すべきかと思います。
それからもう一つは、30条の4のただし書以外にも同様のただし書の規定が昨今増えておりまして、そちらへのハレーション、波及効果も気になるところですので、同条だけについて、海賊版だということを知って利用したら、即、これらのただし書に該当すると解釈するのは、実は難しいのではないかと思われます。もしそのような結論を望むのであれば、一歩踏み込んで、図利加害目的での利用は駄目ですよという明確な法改正を経る必要が出てくるのかなと考えております。

文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第5回)

令和5年12月20日

今村 哲也  明治大学情報コミュニケーション学部教授(第四回著作権分科会法制度小委員会内での発言)

【今村主査代理】すいません、今の点なんですけれども、確かに、違法なソースから利用したという場合に、例えば35条にしても、ただし書に該当するかしないかみたいな議論があって、それはなかなか難しい議論なので、結論はなかなか出にくい部分がありますし、ほかにも同様のことば問題となる規定がいろいろあると思うんです。けれども、とりわけ機械学習という場面で海賊版サイトのような権利侵害サイトから利用するという場合に、AI開発業者と海賊版サイトの運営者が互いに全然関係ないというケースも多いとは思われますが、両者が結託しているとか、経済的なつながりがあるとか、そういったケースもあり得るとは思うんですね。そういった場合について、ひょっとするとただし書で対応できる場合はあるのかもしれない。ただし書自体は、様々な事例をケース・バイ・ケースで考えていくということになると思いますので、一律に海賊版サイトからの学習はこの範疇外だとするのではなくて、学習されている著作物が実際にどういうふうに利用されているかという利用の態様とか、そういうことも踏まえて、ただし書の中で判断できる余地もあるのではないかなと思います。

文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第4回)
令和5年11月20日

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