水素:トヨタミライショールーム

日本社会を原子番号一番にかけてみませんか?
5/27、芝公園にあるトヨタミライショールームを視察しました。
トヨタのFCEVが実際に展示されており、最初に担当者にFCEVの車体構造についてご説明いただきました。
その後実際に試乗し、芝公園からお台場まで市街地と高速道路を往復運転させていただきました。
ガソリン車よりも圧倒的に低音かつハンドル運転がしやすく、駐車場に止めるときも含め自動運転性能もついております。運転モードのエコ、ノーマル、スピード3種類全て体験しました。

しかしただ楽しんで運転している訳ではありません笑
折角の機会ですので、助手席に乗ってくださった担当者の方と、日本における水素やFCV普及の現状と課題について忌憚なく意見交換しました。
お話ししまして一致した点を需要と供給の大きく2つに分け以下に記載します。(切り口は水素戦略ではなく自動車戦略でも良いのですがまた今度にします)

<需要面>
■FCVへの補助金の拡充
現状はトヨタが先頭を走っているかに見えますが、欧州はEVに関する自地域有利のEVのルール形成を仕掛けており、米国はインフレ抑制法をはじめ事実上の自国自動車企業優遇政策を打ち出しております。
日本において現状の先端技術を実用化し、自動車メーカーや水素関連サプライヤーの事業を軌道に乗せるには(現状市販している会社はトヨタのみでありしかも事業は赤字…)、何よりもFCVやその関連設備・製品が“売れる”ことが欠かせません。
こうした課題意識から、トヨタのFCVの価格は約860万円で、現在は国と東京都で約250万円の補助が出る状況ですので、例えば購入価格の半分の約430万円の助成に拡大することを検討する必要があると考えます。

<供給面>
■水素ステーションの新設拡大
FCV普及拡大の最大の難関は全国の水素ステーションの数が159ヵ所と“少なすぎる”ことです(2022年5月時点、ガソリンスタンドの数は29005ヵ所)。首都圏は59か所ですので、首都圏のFCV普及が最も進んでいるとお聞きしました。つまり、水素ステーションの普及とFCVの普及は比例するのです。
2021年のFCVの販売台数は1997台で、自動車全体約230万台の僅か約0.08%です。これでは自動車メーカーの利益採算が取れないばかりではなく、わが国が得意とする水素領域のイノベーションも遅れかねない危機的状況です。
水素ステーション1か所あたりの整備費用は約4億円です。国が地方自治体と連携し、FCV普及に効果的な立地を探し、新設を更に補助する必要があります。

■水素輸送のイノベーション
水素ステーションが普及しないもう一つの原因は、水素製造施設からステーションまで運ぶ輸送手段とその技術が確立されていないからだというお話をお聞きしました。
その中で、輸送手段としてまず考えられるのが既存のガスインフラを活用し、天然ガスの約10%から20%に水素を混入させる方法ですが、経済モデルとしては不透明であることが指摘されております。次に圧縮水素をガス体輸送することですが、水素のエネルギー体積密度が低いため、この方法では少量しか輸送できません。
最後に担当者の方にご指摘いただいた方法が、“液化水素”による輸送です。−235℃で保管することで、既存の輸送手段が転用でき、かつ長距離輸送が可能になります。しかし現状ではコストが高い輸送方法であるため、ここでも“イノベーション”が重要不可欠です。

■やっぱり蓄電池
“やっぱり”というのは我が国の“経済安全保障”上、蓄電池が益々重要不可欠なのが自明だからです。FCEVの普及にはその車体性能を決めると言っても過言ではない蓄電池のサプライチェーン改革とイノベーションが必要であり、現状はその多くを中国(特にCATL)にサプライチェーンを依存してしまっているという課題意識で一致しました(担当者の方はさすがその道のプロです…)
すなわち現状はEV・FCEVのチョークポイントを中国に握られている危機的状況であるといっても過言ではありません。蓄電池のサプライチェーンをどのように自国もしくは友好国で完結させるのか、“産業構造のデザイン”が必要だと思います。

他にも担当者の方とお話したこともございますが、比較的大きな政策的視点は以上です。芝公園とお台場の往復だけでこんなに話せました。

日本政府は2023年今月5月末に、2040年を見据え新たな「水素戦略」を打ち出します。官民合わせて15兆円を投資し、数値目標としては水素供給量を2040年に1200万トンに拡大します。
米中欧も関心を高めるこの分野で、わが国の優位性をさらに高めるためには、並大抵の戦略と努力では難しいと思います。
引き続き知恵を絞っていただくことをご期待申し上げます。

5月末から通称“骨太”(骨太の方針:今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針)の議論が本格化します。
何卒よろしくお願いいたします。

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