観劇記録 劇団夢幻「humAn」

「さぁ、死を乗り越えませんか。」

人とは？
生とは？
死とは？

人の身体から臓器をくり抜き、からくり人形のような仕組みの骨組みを埋め込む。脳はそのまま。心臓と体温はない。

それでいて生前の記憶があり、会話が出来たとしたなら、それは「人」だろうか、「人のようなもの」だろうか。

8月28日
初日を迎えた劇団夢幻 第11回公演、「humAn」を観た。

"人間の定義って何やねん"

鑑賞を終えてからずっと頭の中をぐるぐる回っている。身体の中が人工的であったなら、それはもう人間じゃない。というなら、人工心臓、人工関節、義肢はどうなる。身体の何%が人工なものにすげ変わったら、人はいつか人間ではなくなるのか。

逆に、全身100%生身。けれど、意識はない。いわゆる、植物状態。話すことも動くこともままならず、ただ、心臓が動き、細胞が分裂しているだけ。ならばどうだ。確かに生きてはいる。生命活動はしている。けれど、それは「人間らしく生きている」と、言えるのだろうか。

生きるとは。
生きているとは。

劇中、「人間になりたい。」と願うオートマタが、生身の人間から心臓をくり抜き、自らに埋め込もうと考える。

しかし、そんなことしても人間なんてなれないと諭される。元は人間だったオートマタ達を、オートマタではなく人として哀れみ、号泣するほたる。誰かの為に泣く。というあのシーンはまさに人間らしさを象徴していて好きだ。

観終わった後、しばらくは「切なさ」が焼きついて離れず、気持ちがズシーンと重くなっていたのだけれど、登場するものの多くが死や消滅をしてしまうという表面的なものしか見てなくね？俺。と気づく。

オートマタで居ることへの疑問と向き合い、自ら答えを出し、それぞれが選択(CHOICE)をした。「選択が出来る。」それが人間らしいとするなら、自己の破壊を選んだオートマタ達は、その瞬間、限りなく人間に近づいたんじゃないか。なんなら、過ちを繰り返してばかりの人間よりもよっぽど人間らしいと感じた。苦悩しながらも、活き活きとしているように見えた。

そう考えると、エンディングに現れた彼女たちは転生を果たした姿のようにも見え、「切なさ」ばかりだった後味が、ほんのり温かいものに変わった。

以下、各キャラクターへの一言感想

紲...現実主義な所に共感。人の心なんてわかんないよね。けれど、考えられるようにならんといかんなと思った。マッドサイエンティストっぽい振舞いが好き。

マホロ...どこ行っちゃったの？ユイと入れ替わってユイの中に入ってた？けれど、何かの理由で動けず話せず？気がついたら、またマホロに戻ってそのまま心や紲と爆発？個人的には一番不幸じゃね？とか思ってる。

ユイ...鋼の錬金術師を彷彿とさせるあのシーン。ゾクッとした。オートマタverのユイをもっかい観たい。

ほたる...優しい子。けれど、一番の被害者。友達に着いてきたら、拉致られ、牢屋に入れられ、心臓取られかけ、爆発で大怪我(笑)頑張れ、ほたる。

瑠璃...殺されそうで、殺されない子。いつ、ヒスイに撃たれるのかとヒヤヒヤさせられた(笑)友達を大切に！

コハク...生前、サンゴとは友達？姉妹？オートマタになる前、「守る力」がなく死を選んだんじゃないかと妄想。あの高さを軽く飛び降りるとは...コハク、恐ろしい子。

サンゴ...かわいい of かわいい。コハクのように飛ぶのかと思ったら、ゆっくり降りてくる子(笑)

ザクロ...最初、「あれ？津村さん居なくね？」と、探していたら、満を持して登場。燃えるような赤。刺すような視線。クールな津村さん、、、クソかっこいいやん。

ヒスイ...ザクロと並んだ時の画になり具合は、今回の見どころのひとつ。二人とも頭身がおかしい。リアルオートマタ(褒めてる)
自らオートマタに志願した理由が泣ける。

メノウ...梅本さんの声が好きなんだなぁ。アコヤとのコンビは、重くなりがちな空気を、ふっと明るくしてくれる一服の清涼剤。登場を待ち望んでた。

アコヤ...量産型同士、メノウと気が合ったんだろうなぁ。衣装もどこかピエロチックで良かった。

莉子...見逃してる部分が多い気がする。そもそも、何で撃たれたんだっけ？何で銃なんか持ってんの？一番、気になる存在。次は、もっと彼女の行動、言動に注目したい。

ダンサー...あの振りは何を表現してたんだろう？ってところがあって、もっと、良く見てみるぞと思ってるんだぜ。

最後に、、、

心...体術でオートマタを圧倒するみつよさんの強さ(笑)それはさておき、人の気持ちなんてわかんないじゃん！と吐き捨てる紲に向かって言った「けれど、考えることは出来る！」という言葉が、今回の舞台で一番深く私の胸に刺さった。痛いほどに。考えてもわかんないことは、考えても仕方ない。そう思っていた。けれど、考えること自体は無駄じゃないのか。と。

初日観劇時点での感想をとりとめなく書き記す。