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Avicii

9月8日は、スウェーデン出身の音楽アーティスト Avicii(アヴィーチー)のお誕生日です。
本名は Tim Bergling ティム・バーグリングさん。ちなみに、Avicii とは無間地獄をあらわすサンスクリット語の「avīci」にちなむそうです。

2018年に28歳で亡くなり、もし生きていたら31歳。

母が毎晩聴いているFMの「ジェットストリーム」でAviciiの「Wake Me Up」が流れているのを聴いて、はっとしました。立ち尽くして、聴き入って、あざやかに思い出が蘇ってきました。


EDM(エレクトロダンスミュージック)とは何ぞやというレベルのわたしに、友だちがAviciiのことを教えてくれて、わたしもよく聴くようになりました。2017年の夏、ほんとうによく聴いていました。

いちばん名高い曲がこの「Wake Me Up」です。

So wake me up when it’s all over
だから 起こして欲しい 全てが終わったら

When I’m wiser and I’m older
僕がもっと賢くなって もっと歳をとったら

All this time I was finding myself
ずっと自分を探していたんだ

And I didn’t know I was lost
迷子になっているとも知らずに

この歌詞は Avicii ではなく、別の方が書いた歌詞だそうですが、とても内省的で迷ってる。YouTubeで公開されているライブ映像をみると、この曲を聴きながらみんなで踊っているのです。もしかしたら、こんな切ない歌詞に響く心を外に外に解き放つために身体で表現するのかもしれないです。この歌の魅力はなにより聴いているだけで自然と身体がはずむようなテンポのよい明るさと、甘くやるせない哀愁と、心地よい繰り返しです。とても美しい曲だと思います。

Coverもたくさんあります。

みんなこの曲がすきなんだなあ、としみじみ感じたのがこの映像。



もうひとつ好きな曲、「The Days」。
最初の20秒くらいまで一体何を見させられるんだ!?と思うかもしれないですけど、ぜひ最後までみてほしいです。
なぜかというと、綺麗だから。

These are the days we’ve been waiting for
(この日々をずっと待ち望んできた)
On days like these who could ask for more?
(これ以上の素晴らしい日々を誰が望むのだろうか)
Keep them coming ‘cause we’re not done yet
(このままみんなを連れて行こう、まだやるべきことがあるから)These are the days we won’t regret
(この日々を僕らは悔やむことはない)
These are the days we won’t forget
(この日々を僕らは忘れることはない)
These are the days we’ve been waiting for
(この日々を僕らはずっと待っていたんだ)
Rattle the cage and slam that door
(檻を揺さぶり、扉を強く打つ)
And the world is calling us but not just yet
(世界が僕らを呼んでいる)
These are the days we won’t regret
(この日々を僕らは悔やむことはない)
These are the days we won’t forget
(この日々を僕らは忘れることはないんだ)

父と子のかけがえのない思い出を描いた「The Nights」と、同じアルバムに収録されているのがこの「The Days」です。歌詞の背景についてはいろんなことが言われています。それは知っておいてもいいかもしれないけれど、知らなくてもいいのかもしれないと思います。自分自身のプライヴェートを知らないひとに何かを表現として伝えようとするとき、おそらく具体的なエピソードや詳細な背景ではなく、もっとだれの心にも響く普遍的なメッセージを伝えたいと思うはずだからです。

深手を負ってばらばらになるほどの心の痛み(Heart ache)を抱えながらも、これ以上すばらしい毎日などない、この日々を悔やむことはないし、決して忘れることはない、と繰り返しうたう、祈りのような歌です。
このMVの映像も、歌詞を壁に全てペイントするとAvicii(自分自身、のように感じます)のシルエットが浮かび上がり、その周りに好きな色をぶちまけて彩り豊かな世界に変えていく。世界はどんなにも自分で美しいものに変えられるというメッセージにも感じられるのです。
とても好きなのです。

Aviciiのこの曲が好き、あの曲もいいんだよ、と友だちにいろいろと教えてもらいました。音楽を知ることは、世界が広がることです。友だちが好きな曲を自分も好きになれて、世界を共有できてとても楽しかった。楽しく話し合っていた日々をなつかしく思い出します。

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2018年4月20日、突然の知らせでした。


もともと健康上の不安があるとのことで、もう来日しないし音楽活動もやめてしまうかもしれないと友だちは心配していました。
そこに届いたのがこの知らせでした。

アヴィーチー名義で活動していたスウェーデン人DJ兼プロデューサーのティム・バーグリングの死因は自殺だった。バーグリングの家族は彼の死に関する声明文を出し、その中で「彼は真意、人生、幸せについて非常に思い悩んでいて、平穏を求めていました」と述べた。

バーグリングの家族が新たに出した声明文には、アヴィーチーは自分の仕事に対して葛藤とためらいがあったと記されている。「ティムはビジネスマシンとなっている自分に違和感を感じていました。彼はファンを大切にする思いやりを持ちつつもスポットライトは避けたいという繊細な心を持っていました。ティム、あなたは永遠に愛され続け、あなたの死は惜しまれることでしょう。そして、あなたの人となり、あなたの音楽は永遠に生き続けます」と。

それっきり、友だちとAviciiの話をすることはなくなりました。
わたしも聴けなくなっていました。

でも今年2020年、世界で Avicii Week が行われるそうです。

2年経っても、全く忘れられていなくて、むしろますます大事にされていて、みんなに愛されていてよかった、と思いました。

彼が自ら命を絶ったことを、忌み嫌うべきこととしてはとらえず、なぜそんなことになってしまったんだろうと考え、もう二度と同じように苦しんで自ら命を絶つひとを作るまいとする意志が、社会全体で共有されているのを感じます。
このような取り組みをみると、ほっとするのです。
過ぎてしまったことは取り返しが付かないし、彼の命は戻ることはない。

These are the days we’ve been waiting for
(この日々をずっと待ち望んできた)
These are the days we won’t regret
(この日々を僕らは悔やむことはない)

These are the days we won’t forget
(この日々を僕らは忘れることはない)

この歌詞と同じように、残されたひとたちもまた、いまのこの日々を悔やむのではなく、忘れることもなく、彼の生と死と向き合って、できることをしようとしていると感じます。

Avicii は忘れられることはない
これからも絆は継続していく
彼の作品は愛され続けていく

そのメッセージを受け取ることで、心が救われるひとは多いと思います。
逆に言うと、残されたひとが、亡くなったひとのためにするべきこと、できることはたくさんあるのかもしれません。

あらためて、 Avicii という存在は偉大だと思います。
出会えてよかった。
これからもたくさんのひとが Avicii と出会えますように。


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