椅子の近い遠い問題
前回椅子の高さの話をしたが、それに関連して、鍵盤からの水平距離のことも考えてみたいと思う。
ジャズピアニストはクラシックピアニストに比べてまあまあ鍵盤に近い位置に座ってる人が多いように思う。最近だと、かの鬼才ピアニストVijay Iyerなどは結構近いなあ、と感じる。で、たまに体を後ろにぐっと反らすようにして、なんか弾きにくそうなかんじに弾いている。弾きにくくないのか、直接尋ねてみたい気もするが、まあ鬼才のやることなんで、常人には到底理解できない考えがあるのかもしれない。とはいえ彼の場合、椅子の高さはけっこう高めだから大丈夫なのかな、とも思う。それでいったらホロヴィッツなんかは低いし近いしあんなのどう考えても窮屈だと思うのだけど、そこも常人にはわからないものがあるのだろう。
水平方向において鍵盤に近いか遠いか、ではいろんな要素が変わってくるが、タッチのときに上腕の重さを使えるかどうか、というのがまあまあ大きなポイントなのでは、と思う。あるポイントより近くなると肘が肩の真下に来て上腕の重さは指先にかからなくなる。遠のけば上腕部が肩より前に差し出される形になるので、その重さが指先にかかってくる。それと遠い方が肘を自分の体の前に持ってくることができるので、広いレンジで弾くときはこちらの方が有利になる。
そうみるとやはりある程度離れた方がメリットが多そうだけど、近い方が細かいニュアンスが出しやすいような気がすることもあるし、ジャズの八分音符のノリは近い方が弾きやすいような気もしなくもない。まあこれも慣れだったり他のテクニックとの兼ね合いだったりするので、一概には言えないと思うけど。
で、思いつきでいうと、結局人それぞれ肩から指先までの長さというのは決まっているので、その長さを無理なく有効に使えるような位置を探す(鍵盤の位置は決まっているのだから、つまりは肩の位置ということになるか)ことが理想のポジションの決め手になるのかな、という気がした。
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