作って踊って、ウイルスとともに生きる

 僕はウイルスとともに生きている。2004年、左目網膜上に炎症を起こした。即日入院も原因不明のまま2週間。症状は日々進行して、目の中央、視野的にほぼ手の平大を失明。原因が突き止められたのは眼球に針を刺して硝子体を採取、その病理検査の結果が判明してからだった。子供のころにかかった風疹のウイルスが突然活性化、それが運悪く網膜状だったため、ウイルスの増殖と共に炎症を起こし、網膜壊死につながった。そこから抗ウイルス薬を投与されたが、時すでに遅しで中央視力は戻らなかった。ほぼ1カ月入院後、自宅療養となったが、今度は右眼が見えなくなる。なんとウイルスが今度は右眼視神経で活性化。その結果、右眼の中央から左視野が一部欠損という、雑誌編集に携わる者としては致命的な、それも不可逆な障害を負うことになってしまった。
 僕の眼で活性化したウイルスは、ほとんど万人がもっているものだとのこと。普通の免疫があれいば他人への感染はもちろん、体内での活性化はまずない。あえて言えば、当時の生活の乱れが活性化の原因だろう。一度活性化したこのウイルス、薬で叩いてもその残党は三叉神経節の中に潜り込んで、宿主の免疫が弱るときをじっとまっている。医師に聞くも「完治はない」とのことで、事実、これまで2回ほど、再発を経験。ではどうしたらよいのか。結論からいえば「ウイルスとともに生きる」である。バイタルを健全に保ち、三叉神経に潜むウイルスを眠ったままにしておくこと。これが全て。バイタルを上げるには、よく食べ、よく寝ることが肝要。以来、それを心がけているおかげで、すでに5年以上、活性化を抑えている。さらに強力な新型コロナウイルスに対しても、治療薬もワクチンもない今、これが最良の戦術ではないか。
 当たり前のことだが、いつも通りに起きて、活動をし、ご飯を食べて、お風呂にはいって寝る。それでいい。もちろん、そうして定食的生活パターンにも、山椒は小粒でもピリリと辛い的なスパイスも必要だろう。僕の場合は、料理とダンスがスパイだ。
 コロナ自粛の中、テレワークをしつつも、生活のリズムの乱れを嘆く友人・知人の多い中、料理のできる僕はなんと幸せなことか。献立を決め、材料を仕入れ、調理して振る舞うことが、まさに生活のリズムを保ち、ほどよくピリッとしたスパイスとして機能した。ダンスもしかり。前夜、オンラインで習ったステップを翌朝リズムに乗せて踏み続けることが、頭と身体のハーモニーを作りだしてくれた。
 そのおかげで、このコロナ禍の中、普段どおり、いや普段以上に規則正しい生活を維持している。これが、バイタルを正常に保つ最良の方法。これが、ウイルスに対抗する最高の薬であると信じて、今日もまた「うちで作ろう」そして「うちで踊ろう」。


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