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クーポン券と景品(景表法)

調べていて散々混乱してしまったので、後の自分のための備忘録として残します。


基本的には、上記公取の見解のとおりです。
クーポン券を発行するとき、メーカーが実施するキャンペーンだったとしても、小売店舗において、商品の提供について景品類の該当性を検討しなければなりません。

そのうえで、結論としては以下の3通り。
①商品Aの無料引換券としてクーポン券を発行するとき、小売店舗が総付景品として商品Aを提供することになる(基本的には200円以下で検討)。
②商品Aの割引券としてクーポン券を発行するとき、小売店舗においても景品類規制の適用がない(=実施可能)。
③商品Aの見本・試供引換券としてクーポン券を発行するとき、最小取引単位のもので、商品自体に試供品である旨が表示していれば、小売店舗において、景品類規制の適用がない(=実施可能)。


混乱したポイント


メーカーがクーポン券を雑誌に掲載し、コンビニ店(小売店)にてクーポン券と自社商品との引き換えキャンペーンを検討していた事案でした。

そして混乱してしまったのは次の点でした。
・メーカーがクーポン券を発行するときに景品類の検討を行うことで十分なのでは?特に雑誌を販売する場合、クーポン券は雑誌の購買を誘引するものとして雑誌の販売取引との間で景品類規制を検討するため、小売店舗で改めて景品類の規制について検討しなくてもよいのでは?

メーカーと小売店舗との関係について


公取は、あっさり次のように認めています。

本件は,サントリーがクーポン券を持参したA店への来店者を対象に,経済上の利益である飲料Bを提供する企画であることから,サントリーとA店が共同してA店へ顧客を誘引するための手段として行う企画であると認められる

https://www.jftc.go.jp/soudan/jizen/soudan/h15/ji030506.html

メーカーの直売店でない限り、事業を行う上ですべて共同して行う企画と認定されると思います。

加えて、クーポン券と交換で商品を提供することについては、次の通り。

本件飲料Bの提供については,「景品類等の指定の告示の運用基準について」(昭和52年4月1日事務局長通達第7号)4(2)ウ「小売業者又はサービス業者が,自己の店舗への入店者に対し経済上の利益を提供する場合(他の事業者が行う経済上の利益の提供の企画であっても,自己が当該他の事業者に対して協賛,後援等の特定の協力関係にあって共同して経済上の利益を提供していると認められる場合)」に該当することから,取引を条件としない場合であっても,A店の取引に附随するものである。

https://www.jftc.go.jp/soudan/jizen/soudan/h15/ji030506.html

なお、「景品類等の指定の告示の運用基準について」では以下の通り規定されています。

4「取引に附随して」について
(2) 取引を条件としない場合であっても、経済上の利益の提供が、次のように取引の相手方を主たる対象として行われるときは、「取引に附随」する提供に当たる(取引に附随しない提供方法を併用していても同様である。)。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_20.pdf

まとめると、クーポン券については、小売店舗での引き換えのタイミングで景品類規制について検討すればよいことになります。

混乱ポイントの検討


ただ、これだけでは何となく釈然としません。
それは、クーポン券自体が雑誌に対する景品類になるのでは?という疑問が残っているためです。

もう少し深く突っ込めば、引換券としてのクーポン券はそれ自体で商品そのものと同価値なのだから、クーポン券をユーザーに付与したタイミングでクーポン券について景品類としての評価をうけ、さらに店頭でも商品について景品類の検討を行うのであれば、二重に景品類としての評価を受けることになるのではないか…??と考えてしまっていました。

残念ながら、クーポン券や割引券については、その発行の有無について景品類該当性とは無関係と考えられます。あくまでのその先の「交換できる景品」「割引」等について財産的価値のあるものとして景表法は取り扱い、割引「券」、クーポン「券」自体については、独立した財産的価値あるものとして取り扱わないようです。(「製造も広告担当も知っておきたい 景品表示法対応ガイドブック」p140に詳しく記載されています。)

こうした考え方を前提にしていたため、上記の相談でも雑誌の購入について何ら触れられていなかったのだろうと思われます。

消費者はクーポン欲しさに雑誌等を購入する場合もあるので、店頭での交換を中心に検討することには多少違和感を感じます。ただ、結局は交換のために店頭へ消費者を誘引することになるため、キャンペーンを全体としてみれば理解しやすいかなと思いました。

各結論について


先ほどのまとめのとおり、クーポン券については、小売店舗での引き換えのタイミングで景品類規制について検討すればよいことになります。
すなわち、
①引換券なら、来店取引に対する総付景品の提供として整理
②割引券なら、「値引き」として景品類の適用除外
③「見本品」としての要件を満たせば、同じく景品類の適用除外
と考えることができます。

まとめることでようやく自分の中で整理ができましたが、もし誤り等あればご指摘いただけるとありがたいです。


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