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双子座のキーホルダー

44年前の小学校4年生の話

僕の家は中山競馬場の近くにあり
競馬関係者のお父さんを持つ人が
クラスに4~5人いた
仲の良かった友達もその中の1人

その友達の家に遊びに行くと
住居の横に馬小屋が一体となってる作りに
馬と一緒の生活に羨ましさがあった

ただ午後4時ちょっと前にサイレンが鳴る
これは家の前で馬の調教があるため
子供達は危ないので外にいる子は
家に入り5時くらいまで絶対出てはいけない
というサイレンだ
窓越しから2メートル先を何十頭もの馬が
腹の底に響く地響きを加え
走り抜けていく姿は
怖さよりも美しさに感じてた

大人になって母から聞いた話だと
幼稚園児の時
昔はさほどうるさくなかったので
平日は中山競馬場に入れて遊んでも
怒られたりすることは無かったと
それどころか厩務員の人が
鍛え上げられたサラブレッドに股がらせてくれたのだと言う
しかも僕が股がった馬は「ダービー馬」だと厩務員さんが母に教えてくれたとも言っていた
名前はさすがに覚えてなかったが

そんな中春先か夏休み後かは忘れたが
こういう場所が新しく建てられたと

「美浦トレーニングセンター」
中央競馬の東日本地区における調教拠点

今まであった中山競馬場前の厩舎が無くなってしまい
競馬関係者の家族は茨城県稲敷郡美浦村に引っ越しをすると知らされた

親友との学校生活も最後になってしまう
教室で殴り愛の喧嘩をして隣の組の先生に襟首を掴まれそのまま隣の組で1時間僕だけ授業を受けさせられたり、駄菓子屋であんこ玉の当たりをインチキしてもう一個只でもらったり、カブトムシを捕まえに行ったり、大好きだった野球をやったりといろいろな思い出が一瞬で蘇ったのを覚えている

今まで以上に親友はじめ競馬関係の同級生とたくさん遊んだしそれまで話もまともにしたこと無かった人とも積極的に話掛けた
だってもう2度と会えないかもしれないから…

正月も終わり3学期に
確か競馬関係者の生徒達は
引っ越しの準備やらで2月いっぱいで
終業だったと思う

そんな2月も半ばが過ぎたある日の下校
いつ雨が降ってきてもおかしくない
どんよりとした黒に近い灰色の空模様の下
家まで100メートル位の所に
僕の家とは 反対方向に住んでる
里子ちゃんがポツンと独り立っていた

里子ちゃんは目立たないけど
自分の持論をちゃんと持っていて
きちんと意見を言うイメージの子
それとけっこう美人だった

でも里子ちゃんも厩舎の子供
もう少しでお別れだ

走り寄って「どうしたの、待ち合わせ?」と聞くと
「サカイの事待ってたんだよ」
「?」
「もう会えないから、これあげる」と
僕にリボンが着いた小さな可愛い袋をくれました

「何で?」
「元気でね、じゃねぇ」
と言って走って行ってしまいました

家に帰り袋を開けると
「双子座のキーホルダー」
ハート形に天使が2人笑っている
弓矢を手にして
まさか里子ちゃんが僕のこと…

女の子からもらった初めてのプレゼント

父が引っ越しする際に捨ててしまったけど
鮮明に覚えている
だって帰宅すると必ず見える所に置いてあって
毎日見てたから

その後「ありがとう」も言えないまま
引っ越ししてしまった

美浦村には親友に会いに10回は遊びに行ったのに
里子ちゃんには勇気が出なくて会えなかった



淡く切なく情けない僕の初恋の物語


今までもこれからも笑顔の多い
幸せな人生を祈り続けています

「里子ちゃん、ありがとう」

この記事は「ハゲのタイタンさん」に
以前 頂いたコメントを読んでる時に
突然思い出しました
この作品を書くことができて感謝してます
ありがとうございます。


ありがとうございました。

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