「井上泰幸のセカイ展」
福岡県古賀市で開催の「井上泰幸のセカイ展」へ。
会場は、リーパスプラザこが内の古賀市立歴史資料館2階ギャラリースペース。
「古賀が生んだ特撮美術の匠」井上泰幸氏の業績を振り返るもので9月7日(土)~10月6日(日)の開催。
井上泰幸氏は『ゴジラ』第1作から東宝特撮映画に関わり、円谷英二特技監督の右腕とも称された人物。1922-2012(享年89)。
展示の目玉は井上氏の代表作『空の大怪獣ラドン』で、ラドンに破壊された岩田屋デパートの巨大ミニチュア。
九州を蹂躙するラドンが降り立った福岡天神の建物だ。
ラドンの巨大な翼で吹き飛ぶ周辺の民家と共に本物としか見えない精緻さで特撮映画の歴史に燦然と輝く名場面となっている。
今回展示のミニチュアは井上氏が遺した資料を元に三池敏夫特撮美術監督らが忠実に再現したもの。
2021年に佐世保で開催された「井上泰幸展」の際に制作され、2022年に東京都現代美術館で開催された「生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展」でも展示され注目を集めた。
全高1.6メートルの巨大さで、屋上遊園地の遊具や、現地ロケ当時に設置されていた工事用足場も忠実に再現。
デパート1階のショーウインドーの中や、隣接する福岡天神駅の案内看板なども細かく再現。会場ではカメラを用いて特撮シーンを再現できる趣向もされていた。
会場のガラスケースには『ラドン』制作当時のロケハン写真や井上氏によるスケッチ、井上氏が実際に使用した道具類、制作過程の写真などが展示され、『ラドン』に吹き飛ばされる西鉄電車の模型も置かれた。
また、福岡市民から寄せられた岩田屋の思い出や、古賀市と井上家の関わりなど、地域に密着した展示もされていた。
関連して、9月21日には『ウルトラQ』から『ゴメスを倒せ!』『クモ男爵』の上映とゲストの三池敏夫・特撮美術監督と井上氏の姪の東郷登代美氏のトーク(司会・坂口将史氏)、
22日には『巨神兵東京に現わる』(樋口真嗣監督)&メイキング、須賀川市の特撮塾生制作の怪獣映画2本が上映され、「文化として根付く特撮」のトークショーも行われた。
私はこの22日に参加。
展示とは別会場になる大ホールでの開催。立派なホールに驚くほどの入り。
『巨神兵東京に現わる』を観るのも久しぶり。
同時上映のメイキング『巨神兵が東京に現われるまで』が最高で、これなくしては意味をなさないと言って過言ではないほど。
東京都現代美術館で2012年に開催された「館長庵野秀明 特撮博物館」の為の作品で、当時存続の危機に陥っていた特撮のモノと技術を記録し保存する為のもの。
樋口真嗣監督の下、日本中のミニチュアと特殊撮影の技がありったけ込められている。
特にビル破壊の為に考案された2つの方式、テンパーグラス式と伊原式の両方が試みられているのが貴重。
この辺を書いていると長くなるので割愛。
円谷英二の故郷、福島県須賀川市で行われている、すかがわ特撮塾の作品もなかなか見る機会がない貴重なもの。
特撮塾は塾長に近年のウルトラシリーズで大活躍の田口清隆監督を迎え、須賀川市内の中高生を対象とする試み。
これもメイキングが付いていて、本当に一から塾生の意志と行動力を信頼して任せる方式。中高生ならではの発想のデザインとネーミングの怪獣が須賀川市を舞台に暴れ回る。
後のトークショーでは、不登校の人もいる塾生たちに自主性が芽生え友情で結ばれる様子も語られた。
トークショーは前日と同じ坂口将史氏の司会で、古賀市長・田辺一城氏、井上氏の姪でアルファシップ理事の東郷登代美氏、特撮美術監督・三池敏夫氏、操演・中山享氏、が登壇。
田辺市長が須賀川市を訪問した際のスナップ等の投影を見ながら熱く語り合った。
トークの内容については略すとして、1980年生まれという田辺市長の特撮で町おこしをとの意欲は本物であるようだ。
今回の展示も古賀市・古賀市教育委員会の主催。
東郷氏の亡き井上泰幸氏への思いも熱く、その業績を後世に語り継ぎ、残された資料を生かしたいとの思いに胸を打たれる。
とても気持ちのいいトークショーだった。
参加の皆様の熱意が実る日の来ることを。
終了後に別室で同時開催の古賀怪獣談話室の特撮物販を覗いて帰った。
良い一日だった。
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