ターミナル 歌詞

作詞・作曲 みやも十五

コインロッカーの淡い緑色
剥がれたあとの赤錆色を掠めるように
通りすぎていったいくつかの想い出に
刺されて立ち尽くしていた

たとえば数Iの教科書の三角形に
書き込んだ星の名前とか
高架橋から眺めた市営団地の蛍光灯

三段変速をこれでもかってぐらい
軋ませ駆け抜けた
空を目指したまま打ち捨てられたような取水塔
月に泣いている

高圧電流に貫かれて死んだ夏の虫と憧れ
かき鳴らし損ねたあの歌が
なあ、今も聞こえてるかい

たとえば自販機で二人分買った
コーンスープの安い温もりとか
そうだ、それを飲み干した頃には
終わってしまっていた恋

構内放送が次の電車の遅延を告げる頃
ペデストリアンデッキでは
襤褸を纏った老婆が歯を見せて笑い
宗教勧誘のビラを手当たり次第にばら撒いて
神も仏もない僕らの街に愛を説いていた

あの頃
君からのメールが来るたび鳴った着信音や
かき鳴らし損ねたあの歌
の、ような歌を歌おうと思ったよ
なあ、今も聴いてくれるかい

なあ、今も歌うのかい


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