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ポケモンの世界大会にシングルバトル部門がない理由

なぜシングルバトルの世界大会がないのか?


今回はポケモンの世界大会にシングルバトルがない理由について。


ポケモンの世界大会は原則的には毎年開催されており、カード・ユナイト・ポケモンGOの各部門と並んでゲーム部門も競技に含まれている。しかし、ゲーム部門はダブルバトルのみとなっており、シングルバトルの世界大会は開催されていないのが現状である。


もっと言えば、実はシングルバトルについては世界大会はおろか、公式が主催する大会そのものがほとんど存在していない。唯一と言える公式大会は日本地域限定の「ポケモン竜王戦」で、その他にはいくつかのインターネット大会がある程度だ。もちろん、それらのも立派な大会であることには間違いないけれど、正式な世界王者の決定戦が用意されているダブルバトルと比較すると、いささか物足りない感は否めない。


加えて、竜王戦にしろインターネット大会にしろ、使用するポケモンや選出などに特殊な制限が課されることがほとんどで、いわばお祭り的な要素をふんだんに含んでいるのが実情である。


つまりどういうことかと言えば、「シングルバトルには公式が認定した世界王者が存在しない」という、なんとも悲しい現状があるのである。


「ランクバトル最終1位が世界王者でいいだろう」と思う方もいるだろうし、おそらくシングルバトル界隈でのコンセンサスにもなっている。しかしながら、あえて誤解(そして「お前みたいな雑魚が言うな」などの非難)を恐れずに言わせて頂けるなら、やはり世界大会(WCS)とランクバトルは全く異なるものだと個人的には考えている。


本記事の趣旨ではないので詳述はしないけれど、厳しい予選会を勝ち抜いた精鋭のみが参加を許されることや、対戦相手の顔と名前を知った上でのオープンシート&BO3形式の対戦、そして大観衆の前でのプレイなど、公式の世界大会にはランクバトルにはない要素が数多く存在している。


このように述べると、読者に対して意図せぬ誤読や、ひどい場合には悪意のある曲解を引き起こしかねないのであらかじめ予防線を張っておくと、僕は決してランクバトルの価値を貶めるつもりもなければ、シングルバトルとダブルバトルの優劣をつけようなどという思惑もない。ただ、「なぜシングルバトルには世界大会がないだろう?」という自らの純粋な疑問に合理的・論理的な回答を見出そうとすると、ある種の人々にはいささか不都合に感じられる(かもしれない)事実を持ち出さねばならないだけである。


そういうわけなので、僕にはいらぬ論争を引き起こすつもりもないし、特定の個人や集団を攻撃する意図は一切ないことをご理解いただいた上で、ここから先の文章をお読み頂きたい。僕はむしろみんなが平和に楽しくポケモン対戦をプレイできることを切に願っているわけで、不必要な論争や誰かが不当に傷つくようなことは全く望んでいない。



そう、僕はただ単に「なんでシングルバトルの世界大会は開催されないのだろう?」という問いに、好奇心から自分なりの答えを導き出して、できればもの好きな読者が読んで「へえ、こういう考えもあるのかねえ」と納得したり、あるいは「ここは違うような気がするなあ」とご自身で考えるきっかけになればいいと思っているだけである(しつこいな)。


弁解は以上。ここから先は回答編になる。


シングルバトルは日本以外の人口が少ないから?


この手の話題によく出る回答のひとつは、「シングルバトルが流行っているのは日本だけで、世界的にはダブルバトルが主流だから」というステートメント。


これに関しては正確な統計を取ったこともないし、おそらく公式以外は計測できないだろうけれど、間接的な証拠はいくつか存在する。


シングルバトルにおけるランクバトル上位者は毎シーズン日本人に占められており、日本語の構築記事の多さがそのことの証左となるだろう。加えて、YouTubeなどの動画サイトにおいて日本人と思しき投稿者がアップするポケモン対戦動画は、その比率においてダブルバトルよりもシングルバトルの方が多い印象がある(嘘だと思うひとは自分の好きなポケモンの対戦動画を検索してみよう)。


ちなみにランクバトルの人口(プレイヤー数)に関しては、シングル・ダブルともに総数には大きな差はないようで、ほとんど同数といって差し支え無さそうだ(これも嘘だと思う人はポケモンホームをご覧ください)。


「シングルバトル人口は日本人の比率が高い」という仮説(俗説?)の成否は確認しようがないけれど、肌感覚ではあながち間違っているとは思えないので、世界大会が開催されない理由になりそうではある。


だがしかしhowever、これに関しては「卵と鶏問題」的な部分も大いにあるのではなかろうか? つまり、「世界的にはダブルバトルが主流だから、世界大会もダブル」であるだけでなく、「世界大会がダブルバトルだから、世界のプレイヤーはダブルバトルに取り組む」という可能性を否定できない。


仮にシングルバトルの世界大会が開催されることになれば、少なくとも今よりは世界的なシングルバトルの人口は増えるのではなかろうか。あくまで推測の域を出ないけれど、「シングルバトルには世界大会がない→だからダブルバトルをやる」というプレイヤーはいるだろうから、世界大会の有無がプレイヤー人口に与える影響は無視できないと考えられる。


結論としては、「世界的にはダブルが主流だから世界大会もダブル」という説は、基本的には正しいのだけれどある部分では論理的な引っかかりを感じないではいられない。つまり、これだけでは「シングルバトルの世界大会がない」理由としてはいささか弱い。


よく考えてみれば、世界大会でシングル・ダブルの両部門を開催することには、競技の性質が異なる以上は何らの障害もない(予算や会場の都合などもあるのだろうけど)。隔年でシングル・ダブルを入れ替えるとか、やりようはいくらでもあるのにやろうとしない。



このことから「公式サイドにはダブルバトルにこだわる強固な動機が存在する」と読み取ったとしても、穿ち過ぎとは言えないのではなかろうかどうでしょうね?


ダブルバトルでは受けループは存在しない


つまりですね、公式サイドには「ダブルバトルにこそポケモン対戦の本質が詰まっている」と考えている節が無きにしも非ずでして、あるいは「シングルバトルを世界大会でやらないことには、人口比率や種々の制約以外に、つまり対戦のエッセンスという視点からの理由がある」と僕は考えるわけであります(ケロケロケロいざ進め〜)。


その一つに「シングルバトルは盤面の膠着が起きやすい」ということがあるのではないだろうか。シングルバトルではポケモンを頻繁に交代するサイクル戦が起きやすく、それが極端になると「受けループ」と称される構築に至る。試合に大きな変化が起こりにくく、率直に申し上げるのならば絵面が地味である。


となると、多くのポケモン好きが会場に集まる世界大会には向かないだろう。実際に世界大会を観戦した経験から言わせていただくと、盤面が大きく動くたびに聴衆がどよめいたり拍手喝采となるあの熱気や盛り上がりが楽しいのであって、受けループでTODを狙うような試合が展開されれば、少なくないオーディエンスが飽きてしまうことになるだろう。


ダブルバトルには基本的には受けループが存在しないし(しないこともないけど、一応)、回復技を使う暇はほとんどないためサイクル戦にも限度がありTODも発生しにくい。


つまり、シングルバトルに比べて試合が止まって動かなくなる確率が圧倒的に低いことも、世界大会でダブルが採用される理由の一つではあるだろう。


活躍できるポケモンがダブルバトルの方が多い


これも確かな統計的証拠を上げるわけにはいかないけれど、活躍できるポケモンの多様性に関してはダブルの方が豊かであると言い切っても、それほど多くの反論は受けないだろうと思う。


要因としては、盤面上にアタッカーとサポーターを同時に出して動かせることが大きいだろう。「追い風」「トリックルーム」「このゆびとまれ」といったシングルでは使いにくいサポート技が活きやすく、加えてシングルでは俗に「死に特性」と言われる特性「テレパシー」「フレンドガード」などを持ったポケモンが活躍できることからも、ポケモンの活躍の幅は広いといって間違いないだろう。


これも趣旨からは外れるので一言だけにするけれど、ポケモン公式にとって「ポケモン・登場人物の多様性」は譲ることのできない揺るぎないコンセプトである。極端なことを言えば、公式が理想として作り出したいのは「すべてのポケモンが活躍の可能性を見出せる対戦環境」であり、より多くの能力や個性を活躍させられる可能性を含んだダブルバトルこそが理想のバトルシステムに近いと考えているとすれば、世界大会は当然ながらダブル一択になるわけだ。


ゲーム性を突き詰めた結果


なんだか感情論的になったけど、最後はよりシステマティックな要因について。


当たり前のことだけど、ダブルバトルはシングルバトルよりも起こりうる事象の数が多い。そうですよね? 


シングルバトル=1on1であれば、試合開始直後の初期状態なら「技選択(4)+交代選択(2)=6」が自身の取りうる行動の総数で、相手のそれと掛け合わせれば(本当はもっと複雑な場合わけが必要だけど単純化する)、起こりうる事象は「6×6=36」通り存在する。


一方で、ダブルバトルはポケモンの数が増えるので、まずは自分の選択肢が2倍に、相手の選択肢も2倍になる。…だけではなく、技をどの方向に向けるのかの選択も発生する。盤面上のポケモンの数が増えるということは、選択肢は倍数(2倍)ではなく冪乗(2乗)されることになるため、シングルに比べて遥かに行動の数が増えることがわかるだろう。


要するに、ダブルバトルにするとゲームにおける複雑性が増してより一層対戦が面白くなる(と、たぶんおそらくperhaps、公式は考えた、のかもしれない)。



トリプルバトルになればもっと増える(3乗)けれど、公式の見解ではおそらく「3on3だと増えすぎ」ということなのだろう。



つまり、シングルよりも行動選択の複雑性を増しつつ、かといってトリプルほどには増えすぎない中間を取った結果として、ダブルバトル程度の事象数がゲームとしては適正と判断しているのではないだろうか。



終わり


疲れたので終わり。補足として「日本ではなぜシングルが主流なのか?」を書こうと予定していたのだけど、疲れたからやらない。最近はとにかく忙しくて、今日は久しぶりの休みなのでこれから銭湯に行く。なので終わり。以上。

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