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もたざる経営で成長してきたセブン-イレブン・ジャパン

モノ言う株主との経営陣の対立、西武百貨店本店の売却、イトーヨーカ堂の大規模なリストラと閉店、そして今回のカナダのコンビニ会社からの買収打診など最近のセブン&アイ・ホールディングスには何かと話題を提供している。
2005年にコンビニのセブン-イレブン・ジャパンとGMSのイトーヨーカ堂が中核となって誕生したセブン&アイ・ホールディングスだが、その戦略的な試みの多くは必ずしも成功とは言い難いと思う。(個人の感想です)
しかしながらセブンイレブンについては国内においては未だにナンバー1であることは確かだ。
では日本においてコンビニという業態を定着させて成功し成長したセブンイレブンの成功要因は何かと言うと、自分の考えでは「もたざる経営」に徹してきたということである。
すなわちフランチャイズシステムであり、自ら土地や建物を取得してスタッフを雇いビジネスを展開する「直営店」方式ではなくそのあたりはオーナーに任せて利益を案分する。
言い方悪いが事業のかなりのリスクをオーナーに寄せて、自分たちは何も持たない「もたざる経営」に徹したことだ。
もちろんただ持たないだけでなくて、持たないことで新規オーナーの獲得や商品やサービスの開発に注力する、それによって得られた成功だと思う。
さて次は、公表されているセブン-イレブン・ジャパンの財務諸表の数値を確認してみる。
令和5年度期
総資産2兆2144億円 純資産1兆6281億円 自己資本比率73% 固定負債835億円 固定負債比率5%
ちなみに固定資産は1兆5305億円だが、この中でその他投資などは8585億円なので実際の事業に関する固定資産は6720億円程度だと思う
これは直営店(400店程度)と本部が土地と建物を提供するCタイプ(1万6千店程度)のものだと思う。
ただ直営でもCタイプでも本部が土地建物を購入する物もあれば、賃借するものもあり、その辺りの数値は公表されていないのでよくわからない。(普通に都内のビルに入っているような店舗は賃借だと思うが)
ちなみに当初はセブンイレブンジャパンはAタイプを中心に店舗を開発していったが、今は殆どAタイプの店は増えていないようだ。
参考)
https://www.7andi.com/ir/library/co_financial/2024/convenience_store/#anc04
それ故に持たざる経営が崩れてきつつあるもののそれでも非の打ち所がない財務内容だと思う。

さてセブン&アイ・ホールディングスとしてはどうか?
直近(令和6年6月末)
総資産11兆2234億円 純資産3兆9912億円 自己資本比率35.5% 固定負債3兆9701億円
固定資産8兆2701億円であるが、投資その他が8563億円あるが、これはほぼセブンイレブンジャパンのものであろう
したがって国内セブンイレブン以外の固定資産は6兆7396億円でこれはすべて事業に関するものである。

セブン&アイ・ホールディングスの経営人の多くはセブン-イレブン・ジャパン出身である。
すなわち固定負債比率5%の世界で生きてきた人が現在100%の世界にいる。
事業に関する固定資産を10倍以上もつ会社で経営している。
「過去の成功体験を捨てよ」とは常日頃に鈴木敏文氏の言葉であるが、実際に口で言うほど簡単なものではないだろう


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